【夢幻】潔血の忌子04
「緊張したか? 」
驚いてあたりを見回すと壁にもたれかかった金髪の男性がこちらを見て苦笑いしている。
そういえばさっき元帥が頼んでいると言っていたことを思い出した。
彼はメサイア・アクロイド、アストラ軍司令室室長であり、セヴランの父親である。
「別に食われるわけじゃないんだ、そんなに緊張していたら彼が可哀想じゃないか。」
「俺なんて父さんと兄さんたちがいるからこの軍の士官になれたもんなんだぜ?こんな急に司令室に呼ばれて精鋭部隊に配属だなんて話をされたら緊張もするよ。」
「もちろんセヴランを精鋭部隊にと言ったのも私だよ。」
「だと思ったぜ、そうじゃなきゃこんな上手い話僕に回ってくるわけないだろ?」
「そうとは限らないだろう? 結局精鋭部隊を五人にすると言ったのも、人材の選定もガブリエーレがやったんだ。私の意見なんてどうせ参考程度だ。きっとさっき彼が言っていたのが本当の理由なんだよ。」
「高く買われすぎておかげでプレッシャーに押しつぶされそうだぜ…。」
セヴランはもう一度大きく息を吐く。
「でも決まったことなんだ、期待に応えられるように努力するだけだな。」
「ああ、私もガブリエーレも精鋭部隊は全力でサポートしていくつもりだ。」
セヴランがメサイアに会うのは実に三ヶ月ぶりのことであった。
二人の兄にもここ最近会えていない。
同じ軍の拠点にいても、配属先の違う彼らとはなかなか会える機会がない。
最近どうだった? といった指揮する上でここが上手くいかないだとかセヴランはメサイアに相談したいことがたくさんあった。
しかし、精鋭部隊発足の用件であった上での再会であるので、他愛のない話をしている場合ではなかった。
2016.5.23 誤字を訂正しました。