【夢幻】潔血の忌子02
「来たか。」
周りで忙しく働いていた司令部の部員たちがこの一言によって一斉に直立、敬礼をする。
冷血かつ冷淡。
一部の軍人たちが【吸血鬼】のようだと言う男性こそがアストラ軍元帥であるガブリエーレ・サクストンである。
彼は元帥と初めて会うわけではなかったが、いつ見ても緊張感で背筋が自然に伸びてしまう。
佇まいだけでこれほど気迫を感じるということはそれほど元帥が存在感と地位を確立しているということだ。
「セヴラン・アクロイド中尉であります。」
彼も周りの部員たち同様に敬礼をする。
元帥自身もそれを見て敬礼をし、周りを見渡す。
「アクロイド中尉、ご苦労であった。話が長くなる、楽にして構わないぞ。」
「はっ、失礼いたします。」
セヴランは敬礼していた右手を降ろす。元帥はそれまでの固い空気を少し和らげ、セヴランに向かって話し始める。
「まずは簡潔に話の概要を話してしまおう。私は君の才能を買おうと思う。このたび新設する精鋭部隊の一員としてこの軍に従事してもらいたいと思っている。」
前にも言った通り、彼はこの軍に配属されて日も経験も浅い士官である。
中央指令室に呼ばれるということは何か重大な話をされる、
そんなことはセヴラン自身も重々わかっていた。
同僚に元帥直属のお呼び出しなんてお前何かやったのか?
なんて冗談を言われ、少し不安な気持ちでやってきたというのに、
「お前の才能を買う」だなんていう言葉に拍子抜けしてしまった。
僕に精鋭部隊で戦う心構えも技能も何もないはずなのに、と彼はそう思いながらも元帥の話を黙って聞いている。
「そうだな、急にこんなことを言われても納得がいかないだろう。しかし、君の特異体質ばかりを見て精鋭部隊に配属しようというわけではない。」