【1章】異変11
「ベル、準備が整ったら声をかけてね。
精密検査になるから三十分から一時間位掛かると考えておいてほしい。」
部屋の隅にひかれているカーテンの奥から出てきたベルナデットは部屋の中央まで出てくる。
「はい、準備できました。
いつもみたいにこの台に横になればいいですか? 」
「ああ、仰向けでお願いするよ。
時間が掛かる検査でもあるし、いいデータを取れるように寝ていてくれて大丈夫だからね。」
彼女は返事をすると頭に付けているリボンとカチューシャを取り、薄手の病衣一枚を身に着けて部屋の中央の検査台に横になる。
「じゃあ始めるよ。」
「はい、よろしくお願いします。」
メサイアがこちらの部屋で操作卓のボタンを次々に押していく。
最後に赤いボタンを押すと、自動的に検査が始まった。
操作卓の上にあるモニターがベルのバイタルを表示する。
何か異常があったら警告音で知らせてくれるというシステムになっているので、他に難しい操作はいらない。
機械が正常に機能していることを確認したメサイアは、部屋のソファーで小さくなっているセヴランの隣に座る。
「どうだ、少しは慣れてきたか? 」
「全然、ほんとダメ…。」
「そうかそうか、じゃあ採血をいつするかセヴランに選ばせてあげようか。」
うずくまっていたセヴランは今にも泣きだしそうで、潤んだ瞳でメサイアを見つめる。