【1章】異変02
「お前たちこそ私たちを舐めてかかるなよ? 」
「この場に及んでまで無駄口を叩く余裕はあるのね、そこだけは褒めてあげましょうか。」
ベルナデットは大将の喉元に刃をあて、逆手に持った短剣を力いっぱい突き刺す。
「よし! ベル、あとは任せろ! 」
兵士たちをかき分け、少し遅れて最後尾まで来たセヴランがベルナデットの後ろから声をかける。
「ええ、あとはよろしくね。」
一瞬で短剣を引き抜いたベルナデットが左にステップを踏むと、白い弓を構えたセヴランが大将に向かって矢を放つ。
殺傷能力の高い彼の血液に触れたものは助からない。
大将撃破が求められる時は、ベルナデットが瀕死状態にまで持っていき、セヴランがトドメを刺す。
いつもはこれでうまくいくのだ。
しかし、セヴランの放った弓はそのまま地面に落ち、液体となって地面に吸い込まれていく。嘘だろ? こんなことかつてなかったはずだ。
彼の手から白い液体がこぼれていく。
セヴランはどうすることもできなかった。
「セヴラン、危ない! 」
ベルナデットが叫んだ時にはもう遅かった。
それを見ていた大将がここぞとばかりに一気に戦況をひっくり返す。
瀕死状態の大将は最後のあがきと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべ、セヴランに向かって走っていく。
「私たちを甘く見るなといっただろう? 」
セヴランはそのまま軍服を掴まれ、護衛用のナイフを首にあてがわれる。
セヴランの弓はあっという間に液体に戻り、形すらもなくなっていた。
護衛用のレイピアは背負っているため今の状態では引き抜くことさえも不可能だ。
このまま死ぬかもしれない。
一瞬、そんな思考が頭の中をよぎった。