【夢幻】潔血の忌子01
最下層のよく足音が響く廊下を一人歩いていく。
薄暗いこの廊下を歩くものは他に誰もいない。
彼はこの国の陸軍に入隊してまだ間もない。
出撃を通して、失敗を繰り返しながらも、まだまだ戦績を多く上げるとまではいかないが、それなりに士官としての役職は板についてきた。
そんなある日であった。
彼は上層部の人間か司令部の部員以外あまり立ち入ることのない基地の最下層を歩いている。
僕のような奴がこんなところを堂々と歩いていていいのか、そんな疑問を持ちながらもしばらく廊下を進んでいく。
幸い廊下には彼以外の人影はない。
あんな若い奴がどうしてこんなところにいるんだと後ろ指を指されずに済む、というわけだ。
指定された部屋の目の前に立ち、あらかじめ司令部に渡されていたカードキーをドア右側のカードリーダーにかざす。
【認証いたしました、お通りください。】
空気の抜けた音を立てながら重いドアが開いていく。ドアが完全に開き終わると、現れた狭い通路の間接照明が自動的に灯る。
まだこんな不安と緊張を抱きながら歩かなければいけないのかなんて彼は思ったが、雰囲気のあるこの狭い通路を少し重い足取りで歩いていく。
もともとアストラという国は先住民と侵入してきた移民の戦闘により人口が減少し、国土も最盛期よりは狭くなってしまっている。
加えてもとより国としての規模はあまり大きいわけではなかった。
しかし周りは大国が多く、少しでも国の情勢が崩れ、隙を見せるなんてことがあればすぐさま周りの大国に侵略、平定されてしまう。
そのためアストラ陸軍、海軍ともに青年兵を多く配属している。
彼も例外ではない。
狭い通路の突き当たりのもう一つの認証システムにカードキーをかざし、開くドアを見ながら大きく深呼吸をする。
ドアが開いてすぐに目の前に広がるのは大小さまざまな大きさのモニターだった。
初めて通された中央指令室に彼はただただ圧倒されるばかりであった。