表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: るーく
8/8

『しょうがないことだったんだよ』



僕は三人に、前に小屋で会ってからこれまでのことを話した。




『そっか・・・ライザ様の初恋の暴走か』


『ライザ様かわい~』


『・・・ウォル、よく許せたね』




『もういいんだ。これから笑って過ごすことができれば』


『優しいんだな・・・あ、いや、これは』


『レイジィがウォルに告白してる~』


『・・・ライザ様とライバル宣言』




『ちがうって!!

ただそう思っただけだよ!!』


『はいはい。ムキになってかわいいねレイジィちゃんは~』


『・・・それではライザ様。お騒がせして申し訳ありませんでした』


『ちょっとミィル!何勝手に閉めてんのよ』




それからしばらくして、嵐のような三人は帰って行った。







ぎゅっ


ライザが後ろから抱き付いて来た。



『どうしたのライザ』


『ウォルがあの三人に取られないだろうかと心配になってしまった』


『大丈夫だよ。あの三人は僕に恋愛感情なんて持ってないよ』


『ならば良いが・・・

すまない、しばらくこうしていても良いだろうか』


『いいよ。ライザの胸の感触、好きだから』


『嬉しいぞ』



ライザは抱き付いている力を強くして、僕との距離を限りなく縮めて自分を安定させようとしているのだろう。


ミィルが言った言葉にも傷ついただろうし。

僕はライザの頭を撫でながらそう思った。






『僕は、誰かに好きになってもらいたかったんだろうな』


『ウォル?』


『自分に自信がないからさ。けど普段はそれを無意識に押し隠して、訓練に打ち込んでいたんだ』


『・・・』


『甘えていいかな?ライザ』


『本望なことだ。ウォルは大きな胸を好むようだからな。私の胸が大きくて良かった』


『ライザの胸だからだよ』


『嬉しいことを言ってくれるな。私は幸せな女だ』



僕の後ろから抱き付いていたライザは、一度僕を解放した。

どうするのかな、と待っていると僕の手を引いてソファに連れて行かれ、座らされた。


ライザも僕のすぐ隣に座った。



『膝枕でいいだろうか』


『ライザの足、すべすべだね』


『ん・・・撫でられるとゾクゾクしてしまう』


『ライザのお腹、柔らかくてあったかい』


『ウォルの息が当たって熱いぞ』



じゃれあいながら、僕はライザに膝枕をしてもらって甘えた。




『むぅ、胸が邪魔でウォルの顔があまり見えない』


『それ贅沢な悩みかな』


『ウォルは私の体温を感じているとき、とても安らいだ顔をする。

その顔を見ると私はとても安心するんだ』


『そのときの僕って、締まりのない顔してるのかな』






『そんなことはない』



ライザは優しく微笑みながら、僕の顔を撫でた。










夜。


夕食を済ませ、さぁ寝るかという時間になったとき、ライザが見せたいものがあるからリビングで待っていろと言った。



見せたいものってなんだろう。




『待たせたな』


『ん、ってその格好・・・』


『どうだメイド服だぞ』


『いや、ものすごく似合ってるけど、さ』



肌の黒い長身銀髪エルフのメイドさん。

エルフがメイドなんてやるわけがないこの世界でその姿は貴重だった。




『言葉遣いがなっていないよ、ライザ』


『なるほど・・・ウォル教えてくれないか』


『・・・いいけど。主を呼ぶときはご主人様って言わなきゃだめなんだ。

んで、敬語ね』


『ふむふむ。ウォルがご主人様で敬語を使うと』


『エルフのメイドにすごく背徳感があるなぁ』



シンプルでありきたりなメイド服を着ているライザは、顎に手を当ててブツブツ何か言っていた。






『ご主人様』


『ん、なんだいライザ』


『今宵の夜伽のお相手は私、ライザで構いませんでしょうか』


『・・・やっぱりそういうネタで攻めるのね』


『何かおっしゃいましたか(にっこり)』


『何も言ってないよ。ライザとりあえずこっちに来なよ』



かしこまりました、とライザは僕に近づいた。


敬語を使うライザになぜか冷汗が止まらない。


なりきりごっこか。




『ライザ、ご主人様の命令は絶対だって知ってるよね』


『存じております。何なりとお申し付けくださいませ』


『・・・うん。いいよライザ』



この感情は何なんだろうか。

すごく愛でたい。




『(ウォル、早く命令を言ってくれ)』


『(ごめん。見惚れてた)』


『(っ、そんなに効果があるとは、メイド服はすごいな)』



流れ的に始まったなりきりごっこ。


僕がライザを見てほうけて、それに怪訝したライザが小声で話し掛けてくるという状況になってしまった。



『よし決めた』


『え、あ』



僕はとりあえずライザを抱き締めて、いじわるな命令を出すことにした。


お互い立ったまま抱き合うと、僕はライザの首に顔を埋める感じなる。


ライザ背高すぎ。






『・・・ご主人様』


『今から僕の質問に答えてもらう』


『・・・はい』


『僕の嫌いなところどこだい?』


『ありません』


『・・・即答かよ』



ライザも僕の体に腕を回して、ギュッと抱きしめてきた。



『無いものは無いのです』


『嘘だね。一つ言うたびにキスしてあげるよ』


『な、ご主人様、それは卑怯です』


『三つ言えたら、ディープキスしようか』


『み、三つでご主人様とディープキス・・・』



したことないけどね。

理性が飛ばなければ良いんだけど。




『一つは・・・私の体をあまりご主人様から触ってこないこと、です』


『一日中、胸を揉まれてもいいの?』


『したいならしてください。一日中揉まれ続けたら何回果てることができるでしょう』


『・・・』


『遠慮しないで良いのですからね。

二つ目は、抱いてくれないことです』


『それ、一つ目と重複してない?』



すかさず抗議をするご主人様こと、僕。






『体に触れるのと、子作りは別物ですよ』


『う、うーん・・・』


『焦らされれば、焦らされるほど燃えてきます』


『・・・で、三つ目は?』


『私の・・・罪を無いものとしたご主人様の優しさ・・・です』


『・・・』


『私が喜ばなかったのはご主人様への愛に気付いたからです。

ご主人様と一緒にいられる理由を無くしたから・・・』


『・・・言葉が見つからないよ』


『私の中でまだ罪の意識は消化しきれてはいませんし、たとえ憎まれていても一緒にいられるなら幸せだと私は思っておりました』



この話はライザと一緒に生活をしていたら、あと何十回と聞かされそうだ。



『今のこの生活が素直に喜べないなんて、私はなんて贅沢ものなんでしょう』


『・・・』


『着替えて、来ますね』



僕が何も言わないでいると、ライザはそう言ってリビングを出ていってしまった。






寝室。

あのあと大した会話もなく二人でベッドに入る。



『・・・ウォル、先程は困らせてしまってすまなかった』


『いや・・・いいんだよ』


『ありがとう』


『・・・』




このあと、しばらく会話が途切れた。

だが気配でライザがまだ寝ていないのは分かる。



『・・・ライザ、僕の心読める?』


『いや・・・罪人としてこの国に戻って来てからは、魔法を一度も使っていない』


『・・・そっか』


『ウォル、私はウォルの心が読めなくても良いと感じている。

私のウォルへの愛は、心を読まずとも伝えなければならないと思っているし、伝えられる自信も持っている』


『・・・』


『私に対して、声に出して伝えにくいことでもあるのか・・・?』


『いや、そうじゃないけどさ・・・』


『そうか・・・』




僕は何を言いたかったのだろう。

わからなくなってしまった。






翌朝


『ウォル・・・朝だぞ』


『・・・ん』


『今日も良い天気だぞ』



目を開けると、隣で寝ていたライザと目が合った。

軽く微笑んでいるその顔は、朝の光りを受けてより一層美しかった。



『・・・ん』


『ウ、ウォル。寝起きから抱擁してくれるとは・・・』


『僕から肌に触れないのが不満なんでしょ』


『確かに昨日そう言ったが・・・あぁ、ウォルの腕の中は暖かい・・・』


『寝ているときでもないと、ライザを胸で受け止められないし』


『・・・背の高い女は嫌いか?』



上目使いでちょっと困った表情は卑怯だ。



『それがライザなら嫌いじゃないよ』


『・・・好きとは言ってくれないのか?』


『僕に愛される自信があるなら、好きって言わせられるんじゃないの?』


『・・・ウォルのいじわる』



拗ねた声を出しながらも僕に抱き付く力は強くなった。



僕はライザに対して、完全に心は許していない。



それが今後どのように左右していくか。



神のみぞ知る、のかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ