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「………ただいま」


「おう、お疲………」


こじんまりとした一軒家。俺たちの隠れ家



お嬢様を抱えたまま帰宅した俺を見て相棒はこちらを指差したままパクパクと口を開いた



当然ながら、目は見開かれてる



「初めまして、こんばんわ」


しばらく固まったのち

場違いなふんわり笑顔を浮かべてお嬢様が挨拶をすると、相棒…ガラヤは弾かれたようにキレた。そりゃそうか


「てめぇ、何持ってきてんだ!!」


「……お嬢様」


「殺せ!!今すぐに!!」


「それが嫌だから連れてきた。世話は全部俺がするから、頼むガラヤ!!お嬢様をうちに置かせてくれ!!」


「ダメに決まってんだろ!!犬猫じゃねーんだから警察に逃げ込まれて俺たちがパクられるのが関の山だ!!」


ガラヤの言い分はもっともだ。そんなの、俺だってわかってる


………でも


チラリ、とリンカスティ様を見る

すると彼女は状況が理解できてるのかわからないがにこにこと笑い返してきた。この笑顔を、この優しい人を



俺は、どうしても無くしたくない



「情でも沸いたのか?貴族嫌いで今までに何人も殺してきたお前が。はっ、まさかそいつの両親とかも生かして来たんじゃ……」


「いやそれは殺してきた」


「じゃあその女も殺せよ。そいつも貴族だぞ」


「お嬢様は、そこらの貴族とは違う!!優しい……優しい人なんだ……」


立たせたままなのもなんだから、俺の汚い作業机の上にあったあっちこっちの屋敷の見取り図とか貴族のスケジュールとかをざざざっと落とし


彼女をゆっくり丁寧に椅子に座らせる



「汚い場所ですみません」


「お構い無く…?」



当たり前だが困惑しているのだろう

声には戸惑った色が混ざっている。けれどあのふんわりとした微笑みは少しも霞んでない



「だあああああ、お前なにしちゃってんの?まさか惚れたのか?性玩具にでもする気かよ」


「どっちも違う。でも……お嬢様のことは、守りたいんだ」



頼む。じっとガラヤを真剣に見つめると


ガラヤはわざとらしく大きなため息を着いた



「おい女、この家から逃げようとしてみろ?スターが殺さなくてもその時は俺が殺す。スターがうるせぇから見逃してやるが俺は、お前を殺したいって思ってるのを忘れるな」


そして、凶悪な顔でお嬢様をにらんだ。細目でつり目なガラヤの睨みは小さな子供なら泣き出すくらいには怖い……が



「はい、わかりました」



そんなガラヤにさえも

リンカスティ様はふわふわとした笑みで返した



しばらくそんなリンカスティ様をじっと睨んだガラヤだったが、先に根負けをしたのはガラヤだった



「さっさと二階に連れていけ」


「ありがとう!!お嬢様、行きましょう」










「本当の名前は、スターって言うんですか?」


「あ、はい。えっと、服とか色々集めないとな」


「あぁお構い無く。一応自分の立場はわかっていますから」




汚く無いが物も無い、ただ寝るためだけに使っている俺の部屋にニコニコと笑うお嬢様がいる

そのあまりのアンバランスさに、絶対家具とか色々買ってこようと密かに誓う



「とりあえず窮屈な部屋ですが、しばらくここで我慢してください。他の奴等には絶対に手出しさせませんから」



ベッドに腰かけたお嬢様の前に跪き

その手を握りしっかりと見据える


「何故……私を殺さないんですか?わざわざ匿う必要なんてないでしょう?」



不意に、こてりと首を傾げた彼女がそんなことを言った



俺は気付かなかった


彼女が死ぬことを嫌がって無いことに


全く気づかずに、その優しげな微笑みに魅了されていた


「お嬢様は、殺したくないんです。守りますから、安心してください!!」


甘い甘い笑顔

その笑顔を守れるのは自分だけな気がして、騎士になったかのような高揚感に包まれる




そんな高揚感のまま、騎士の真似事をして忠誠を誓えば



彼女は


「わかりました」


そう一言返事を返して、また笑った


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