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「─…………はぁ。」



こんなに仕事をしたく無いと思ったのは初めてだ

脳裏にはいつも華のように笑い、優しいお嬢様が浮かぶ




彼女は、この家の全ての奴隷に好かれていた


『あんた新入りだよね?ここのお嬢様は凄くいい人だけど……お願いだから彼女と仲良くしないで。お嬢様は気にしないって言ってるけど、お嬢様とあたしたちが仲良くしたらお嬢様が馬鞭で打たれちまうんだよ』



罰を受けても、痛い目にあっても

奴隷を庇い奴隷と仲良くする貴族




そんなやつ、知らない。知らなかった

俺は、傲慢で奴隷をごみくずの様に扱う貴族達が嫌いだから─────貴族専門の暗殺者になったのに。



灯りが着かない暗い部屋にはこの屋敷の主人と夫人の亡骸が横たわる


こいつらは別に躊躇い無く殺せた


典型的な貴族だったから



問題はお嬢様だ。なんとか見逃せないかと考えるが、彼女が生き残ってはこれからのことに支障が出る


つまり見逃せない

だけど…………殺したくない



「………どうすっかなぁ」



頭を抱えながら、近くの椅子に座ろうとすると足元の主人の亡骸が邪魔だった


だからソレを蹴り飛ばし座る



「…………何をどうするの?」



そのとき

暗い部屋に、涼やかな声が響いた




「っ!?」



ばっと飛び上がり辺りを見回すと……そこには一番逢いたく無い人がいた


苦々しい気持ちでリンカスティ様に飛びかかり


扉の脇にいた彼女を壁に押し付け、その首もとにナイフを押し当てる


けれど


……命の危機な状態であっても、彼女は優しく微笑んでいた



「………屋敷から出るときは、私から手紙をポストに投函してきてって頼まれたって言ったら守衛達は通してくれるわ」



それどころか、退路まで教えてくれる


なんで、なんで、なんで、



そんなにやさしくしてくれるんだよ…!!



「……どうしてそんなの、教えてくれるんだよ」


「だって、それで困っていたんじゃ無いの?」


首もとにあるナイフはそのままなのに

彼女はきょとりと瞬きをする



その時点で、彼女への殺意はほぼ無くなっていたが



「ほら、早く終わらせないと言い訳が怪しくなる時間帯になってしまいますよ?」



さぁ、どうぞ



そんなことを言いながら目を閉じたお嬢様



その時、俺の覚悟は決まった



ふわり、と軽い彼女の体を抱き上げるとそのまま部屋から出て駆け出す。幸い俺が浴びた返り血は彼女の体で隠れて見えない


「……あれ、殺さないんですか?」


しっかりと俺に掴まり

のどかな声を出すリンカスティを、強く抱きしめる


「殺したくないから付いて来て下さい。」



「………わかりました」

そして俺は気配をよんで人の居ない道を駆け抜け







大きな屋敷から、貴族の令嬢を連れ去った


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