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     ギルドの仕事(3)

最近にしては早い更新です。

 レベラ王国からライナム森林までは、馬車で往復三時間ほど。おそらくライナム森林で何らかの作業が待っているため、レベラ王国に帰ってくるのはさらに一時間プラスして考えていいだろう。現在時刻は16時。そこから四時間をプラスすると、帰ってくるのは20時ごろか。


「……ギリギリセーフ。いや、ギリギリアウトか? 際どいな」


 言うまでもなく俺の空腹の話である。今は空腹を通り過ごして何も感じないが、この後はひどくなるだろう。

 今頃フェルレノとリーゼの二人は飯を食っているのだろうか。いや、もう食べ終わっただろうか。

 ……。マイナスのことを考えてはいけない。いつだって最後に笑うのは俺だ。そうだ。あの料亭『魔王』で飯を食う。それだけのために俺は努力する。

 ふっふっふ。そうだ、あそこで飯を食えば俺の勝ちだ。そういうことにしておく。ふっふっふ。

「ラッセル……大丈夫か?」

 ウェルザが奇怪なものでも見るような目で俺を見ていた。いかん、知らぬうちに表情に出ていたらしい。俺は緩んだ顔を引き締め、至極真面目な表情を取りつくろってから前を見た。

 今俺は荷馬車の荷台にいる。正確にいうと荷台の屋根の上。野盗の接近にすぐ気付くことのできるよう、三百六十度を見渡せるこの位置に陣取ったのだ。荷台には人が誘拐できそうな大きさの籠が乗っている。このサイズの籠を何に使うのか理解できない。

 ちなみにウェルザは、御者として手綱を握っているニュクスの隣にいる。

 普通、野盗が荷台を襲うとしたらまずは馬を止めてからだ。つまり最初に狙われるのは馬か御者のどちらかのため、その護衛を配置。それに加えて、直接荷物を襲われる対策と索敵に都合のいい荷車の屋根の上。この二つを押さえておけばまず間違いはない。もっとも、こちらの人数が絶対的に少ないためにこれも確実とは言い難い。正直、護衛内容の割に人数が少なすぎる気がする。

 出発する前に護衛の俺たち二人の配置を決め、いざ出発したのがついさっき。ライナム森林まではまだ時間がかかる。

 野盗の頻出地域はライナム森林とレベラ王国のちょうど中間あたりだそうだ。気張るにはまだ早い。

「何か見えるか?」

「いや、何も。ずっと向こうまで人影はないな」

 傾き始めているとはいえまだ太陽は高い位置にある。木々はちらほら見えるが、その陰に潜める人数など高が知れている。問題はない。飛び出してきても十分反応できる距離である。

 荷台の屋根で揺られながら、背後も含めて遠くを見続ける。ウェルザはニュクスの隣を離れ、ひょいと荷台の屋根に乗った。ニュクスの隣にいてもらったのはあくまでも奇襲された場合を考えていたためだから、今ならその行動に文句などない。むしろ聞きたいことがあって都合がいい。

「暇だぜ。ラッセル、じゃんけんだ。俺が勝つまでやる。けどお前が勝ったら良いこと教えてやるよ」

「それよりも聞きたいことがある」

 握りこぶしを突き出して準備していたウェルザを抑える。前金を受け取った時のウェルザの反応が地味に気になっていたのだ。

「前金を受け取った時、何か妙な反応してただろ」

「ん? ……ああ。久しぶりだったからな。驚いて声が出ちまった」

「何が驚いたのだ?」

 ウェルザはなんだそんなことか、とでも言いたそうに首をすくめた。

「前金なんて普通出ないんだよ。前金だけもらって逃げられたら困るからな」

「信用されてるのか?」

「いや、そういう意味じゃない」

 ウェルザは御者台に乗り手綱を引くニュクスの後ろ姿を眺め、笑う。

「前金を出すのは、その依頼が危険だと最初からわかってる場合だ。自信がなけりゃ前金を返して立ち去るのがこの業界のマナーだぜ」

「……ほう」

 わずかに感心する。そんなローカルルールがあるとは。だが理解できた。この依頼は最初から何かが起こることが予測されているわけだ。

 どういった危険が想像できるだろうか。この辺で強力な魔族が確認されたり、野盗が待ち伏せしている事前情報があったりしたら、そうなるだろうか。

 ……というかそもそも、危険が予想されているならどんな危険なのか知りたいところなのだが。

「普通はやっぱり、前金と一緒に情報を出すもんだが。驚いたぜ。俺らの依頼主さんは占いで決めたみたいだ」

「なんだと?」

「神託だよ、神託。聖堂院で受けたらしいんだが、あれで今回は大変なことになるって出たみたいだぜ」

 確か……聖堂院の神官がやってるとかいうあれか。予言じみた内容もなかにはあるとかなんとかだったと記憶している。ゲートと化け物の一件で印象が薄くなってしまったが、昨日エトラ・ステファンとかいう司教が現れたときにリーゼに教えてもらった気がする。

 エトラがその神託とかで、俺に勇者オリオンとしての記憶がないという事実だけは言い当てたため、それなりに俺も神託は信じているし、同じくらい警戒しているのだが……。

「なるほどな。神託で危険が分かっても、何が起きるかまでは分からないってことか」

 エトラの信託では、俺が魔王になっているという肝心の部分が抜けていた。ニュクスの受け取った神託にも、どんな危険が起きるかという肝心な部分はなかったらしい。

 本当に、適当な神のお告げがあるもんだ。

「あ!」

 突然ウェルザが大声をあげる。敵襲を警戒し素早く周囲に目を向けるも、何もない。

「……なんだ?」

「しまった、じゃんけんで負けたら言おうと思ってたのに……」

 ウェルザはかなり残念そうに肩を落としている。さっき言いかけてた良いこととはこのことだったのか。

 もし万が一、じゃんけんに負け続けたままだったら、この情報は知り得なかったのか。

 ……危ないところだった。

「まぁ良いや。ラッセルじゃんけんするぞ。先に聞いたんだから、お前が負けろよな」

「…………まぁ、いいだろう」

 というか、じゃんけんに何を見出したんだお前は。

 その後、荷台の上からは何の脅威も見当たらず、俺たちはじゃんけんに興じて時間をつぶしていた。

 最終的に負けた回数が多かったほうが王国に帰ってから一つ言うことを聞くというルールが加わり、俺たちは地味に白熱したじゃんけん勝負を繰り広げていた。



 戦績:ラッセル対ウェルザ………25:19でラッセルリード。



「くそ、また負けた! もう一回だ!」

「落ち着けウェルザ。森が見えてきた。一時休止だ」

 馬車の背後には土ぼこりが尾を引き、そのずっと向こうにはかなり小さくなった城壁がかろうじて見える。そして前方にはかなり巨大な木々が立ち並んでいた。

 結局、一番野盗が多くいると噂されていたライナム森林とレベラ王国の中間地点では何も起きていない。身構えていた俺たち一行にとっては、ニュクスも含めて少し拍子抜けしたような気分だった。

 馬車は木と木の根を避けるように進み、ある程度森に入ったところで止まる。近くの幹に馬車をロープで巻きつけると、ニュクスはウェルザに馬車の見張りを頼んだ。

「オリ……ラッセルさんには、一緒に来てもらいたい」

 馬車の護衛と本人の護衛か。

 なるほど、二人以上いないと依頼が受けられない理由がわかった。俺は承諾し、ニュクスとともに森の奥に入っていく。

 鬱蒼とした森は中に入れば入るほど薄暗い。密度の高い広葉樹が頭上の空を覆い隠しており、傾きが大きくなった日の光はほとんど地面に届いていない。

「で、何を探しているんだ?」

「ライナム森林でしか採れない、珍しいキノコだ。表向きはな」

「表向き?」

 ニュクスは熟達した商人の顔で笑う。そこには商人としての風格がにじみ出ていた。

「本当は傷を治す薬草を探している。ここだけの話だが、何故か最近はレベラ王国の周りの魔物が活性化しているんだ。近い内に魔物討伐隊が組まれるはずだから、そいつらが準備のために治癒薬を買うはず。だったらそれを作るための薬草が大量に必要になる。今のうちに取りにいかないと、後でほかの商人どもに先を越されかねないからな」

「……なるほど、よく考えている」

 俺は内心の動揺を押し隠しながら、かろうじてそう返した。魔物の活性化、ね。

 もしかして魔王であるこの俺がこの国にいるから、周辺の魔族に妙な刺激になっていたりするのだろうか。ありうる。

「このことは他言無用だぜ、オリオ……ラッセルさん」

「うむ。俺に商売の邪魔をする気はない。誰にも言わないと約束しよう」

 その答えを聞いたニュクスは満足そうにうなずき、雑草をよく観察しながら歩きだす。ライナム森林には薬草の群生地があるそうなのだが、野獣や魔物に荒らされることが多く前回あった群生地が今回はない、ということがよくあるそうだ。だから何度来ても、最初から注意深くさがすほうがいいらしい。 

「俺も手伝おうか?」

「いや、周りに注意しておいてくれ。ここは野獣と魔物、両方とも出てくるから結構危ない場所なんだ」

「なるほどな」

 野獣か。そういえば列車を引っ張っていたゴートのような超巨大な野生生物が存在しているのだ、魔族でなくても注意すべき野獣はいる可能性は高い。

 魔族のほうは……まあ、大丈夫だろう。正面切ってこの魔王である俺に向かってくるなど考えにくい。

 ニュクスは時折ぷちぷちと雑草を引き抜き、背中の大きな籠に入れる。いま引きぬいたものが薬草なのだろうが、他の雑草と違いが分からん。これは確かに、ニュクスの言う通り周りを警戒していたほうが有意義だな。

 少し俺も薬草とやらを持ち帰ろうかと考えていたために、少し残念な気分になりながらも周囲を見回す。といっても、木々に遮られ肉眼では遠くまで見えない。

 俺は透視能力を使って周囲を警戒することに決めた。

 ニュクスは薬草探しに没頭しているようで、あっちにふらふら、こっちにふらふらとかなり無秩序に歩き回っている。帰りの道を覚えているだろうか心配になりつつも、俺は後ろについて行った。

 魔族にも野獣にも遭遇することはなく、かなり気が抜けるような静寂の中で俺たちは歩を進める。

 俺は元の世界で富士の樹海に探検した三日間の高校時代の懐かしい記憶を思い出していた。深い森の中を歩くという状況は、あのときとそっくりだ。

 だが何か足りない気がする。なんだったか。

 俺がそれを思い出すより早く、ニュクスが何かに気づいたように顔をあげる。

「おお……! あった、あったぞ!」

 ニュクスはそう叫び、喜び勇んで走り始めた。その先には少し開けた空間があり、まるで天然の広場のようだっだ。

 他よりもずいぶん密度が高く雑草が茂っている。ニュクスの反応を鑑みるに、おそらくあれが薬草の群生地なのだろう。俺の想像よりもずっと大量にある。ニュクスの背中の籠に入る量など、ここに生えている部分の数パーセントにも満たないだろう。が……やはり俺には、他の雑草と見分けがつかん。

 ニュクスはぶちぶちと薬草を引き抜き、せっせと働く。

 背中の籠いっぱいに薬草を詰め込むと、意気揚々と立ち上がった。

「よし、では馬車まで戻るぞ。そのあと馬車に詰め込めるだけ詰め込んで、レベラ王国に帰ろう」

 ……どうやら何度か往復するつもりのようだ。商魂逞しいというかなんというか。

 まぁ、ニュクスの想定が当たれば、かなり大きな商機になるのは確実だ。彼にとってはここが勝負所なのかもしれない。

 引き返し始めたニュクスの背中を見ながら、俺も後に続く。一応、ここの群生地の場所は覚えておくか。

 いくら草とはいえ、いっぱいまで詰め込みかなり重くなったであろう籠を、ニュクスは必死になって運ぶ。しばらくは良いペースで歩いていたが、徐々に息切れしつつ、ペースが落ち始めた。

「ふぅ、ふぅ……、やはりもう年か。少し前ならこんな籠の三つや四つ、気にもしなかったというのになぁ」

 ニュクスは僅かに過去を振り返るように目を細め、それから再度気合いを入れる。持ち直した籠をふらつく足で支え、ゆっくりと歩を進め始めた。

「…………」

「ふう……ふう……」

 のろのろ。のろのろ。遅い。

「……俺が代わろうか?」

 俺がそう声をかけるが、ニュクスは首を縦に振らなかった。

「これは私の商売だ。護衛は頼むが、これを持たせるのは、私の商人魂に傷をつける」

 息も切れ切れに、なにやら良く分からない理屈で提案を拒む商人。その理屈はいまいち理解できないが、彼もまたプライドのある男だということなのだろう。

 信念により自らの行いを決める人間は、強い。

 それは素晴らしいことだ。――だが。


「ふ………ふぅ……」


 遅い。遅い。遅い遅い遅い遅い。

 このままでは一時間どころの話では済まなくなる。帰りが遅くなることはイコールで俺の飯が遅く空腹に耐えなければならずそれすなわち悪夢だ。

 じれったい時間は空腹を増長させる!!

「すまないが、時間が惜しい。代わりに荷物を運ぶのがだめなら、俺は荷物を運ぶあんたを運ぼうと思う。これは俺の信念だ」

「は? 何を言って――」

 それ以上は聞かず、俺はニュクスをひょいと担ぎあげ、背負う。荷物を背負ったニュクスを背負う俺。そんな構図だ。

「お、おい、オリオンさん!」

「とうとう最後まで言ったな。俺はラッセルだ。――道案内よろしく」

 担いだまま、走りだす。ニュクスの背負った籠の重量は十キロくらいだろうか。ニュクス自身が六十キロほどとして合計七十キロ。うーむ。重さのうちに入らんな。

 木々が高速で前から後ろへ流れる。ニュクスにGがかからないように注意はしていたが、体感で自動車と同程度の速度は出ている。その速度に最初は驚いていたニュクスも、すぐに楽しそうな声を上げた。

「は……、はは、ははははは! さすが勇者! さすがオリオ「ラッセルだ」」

 律儀に訂正だけはしつつ、俺は木を避けつつまっすぐ走る。ニュクスは年甲斐もない悲鳴は上げるものの道に関しては何も言わないので、方向的には合っているのだろう。

 走り始めてからすぐに、俺の透視能力にもウェルザの待つ荷馬車が見えてきた。うむ。ずいぶん長く薬草探しをしていたが、距離にすればこんなものか。全力で走れば片道一分もないな。

 ウェルザは戻ってきた俺たちに気づくと、不服の声を上げた。俺に背負われたニュクスについてはスルーのようだ。

「退屈だ! 退屈で死にそうだ! こんなことなら酒持ってくればよかった!」

「戦士ギルドに戻ったら一杯引っかけろ。それより、もうしばらく頼む」

「マジかよ……」

 俺は荷台にニュクスを乗せて、ニュクスが籠を下ろすのを待つ。ニュクスが籠を一つだけ背負ったのを確認して、しかしまだいくつも籠が残っているのを見てしまった。全部往復していたら、やはり時間がかかるな……。

「……ニュクス。さっきは年だとか言っていたが、俺にはまだ余裕に見えるな。あと二つなら何とでもなるだろう」

「え?」

「これも持って行け」

 ニュクスの両手に空いている籠を握らせる。中身は空なので、片手に一つでも持つことはできた。

「しかし、いくらなんでもこれでは帰り道が……」

「問題はない」

 そして、籠を三つ抱えたニュクスを背負い、先ほどと同じように森の中に駆けだす。

 先ほど道を記憶したため、先ほどよりも速度を上げて木々の間を駆け抜ける。

 薬草の群生地にわずか三十秒で辿り着くと、俺は常軌を逸したおんぶ経験に呆然としているニュクスを地面に下ろした。

「俺には雑草か薬草か区別がつかん。採集はニュクスしかできんぞ」

「あ、ああ。……そうだな」 

 俺にせっつかれ、ニュクスは採集を再開する。時折薬草を引き抜く手が止まり、ちらちらと俺のほうを見る。

「勇者ってのは、ほんとにすごいんだなぁ」 

「俺からすれば、薬草と雑草の見分けがつくあんたのほうがすごい」

 俺の本心からの言葉だったのだが、ニュクスは冗談と受け取ったのか、ケラケラと笑った。

 ニュクスが籠三つ総てに薬草を詰め込むまで待ち、再度ニュクスが籠を背負う。もちろん、背負うことができるのは一つだけだ。中身が入っているので片手で持つこともできない。

「ラッセルさん、後の二つはどうすんだ?」

「大丈夫だ。若いころのニュクスは三つや四つなら簡単に運んだのだろう? 安心しろ。今も運べるさ。できると思ってまずは籠をつかめ。それだけでいい」

「……?」

 ニュクスは困惑しつつも、言われた通りに籠を掴む。本来なら肩にかけるための紐の部分をしっかりと掴ませた。

「もう少し上の辺りを掴んでおいたほうが楽だな」

「う、うえ?」

 俺はニュクスの手を掴み、紐の一番上、ほとんど止め具に近い部分を掴ませる。ニュクスを正面から見ると、「品」という字を下から眺めた状態に見える。ニュクスはその文字のちょうど真ん中だ。

「では、さっきよりも慎重に運ぶぞ。背中の重みにだけ耐えてくれ」

 俺はニュクスの掴んでいる籠を握力だけで掴み、同時に魔力を行使する。今のニュクスからは籠で俺の姿が見えないため、多少俺の手が変わったところで気づかないだろう。

 爪が刃のように伸び、それを籠の網目に滑り込ませる。そうして二つの籠を掴み、ニュクスが振り落とされないように気をつけつつ持ち上げた。ここでポイントなのは、爪で籠を切り裂いてしまわないようにすることだ。ここには、かなり気を使った。

 そして、それを頭上まで持ち上げる。この状態の俺を正面から見ると、今度こそ「品」という字そのものだ。

「大丈夫そうか?」

「ラ、ラッセル?! いったいどうやって持ち上げているんだ?」

「信念で持ち上げている」

「そんな馬鹿な――」

 最後まで話を聞かず、俺は走り始めた。さっきよりも高さがあるので、頭上の枝に注意しながら進む。さっきよりも少し時間がかかって、一分ほどかかった。

 ウェルザに爪がのびていることがバレないよう、籠を下ろしてすぐに爪を収納する。あ、一か所切れてしまった。まぁいい。どうせ何のことか分かるまい。

「ずいぶん早かったな。もしかしてあとの二つもやるのか?」

「そうみたいだ」

 ウェルザの質問には俺が答え、さっさと籠を荷馬車に積み上げる。残り二つか。よし。

「ニュクス。最後二つだ。さっきの要領でやるぞ」

「ああ、そいつぁ便利だ」

 ニュクスは諦めたような達観したような、妙な表情でうなずいた。

 その後、籠を持って一往復し、俺が予測していた一時間でライナム森林を後にする。ウェルザのほうにも俺のほうにも野獣も魔族も現れなかったのはラッキーだった。

 実際、またこっちの魔族にも近くで観察されているだけかもしれないが。

 とにかく、ライナム森林での作業はこれで完了だ。


一部加筆修正しました。

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