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中水道

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 みんなは、中水道という存在を知っているだろうか。

 上水道は私たちが飲むのに適した水が通る道。下水道は私たちが使った水が通っていく道。そうなると中水道はこれらに挟まれた、真ん中の道ということになる。

 場合によっては、雑用水道という呼ばれ方もされる。一度利用した水を還元再利用するための設備というものだな。そしてトイレの水などの、文字通りの雑用に扱われると。

 これだけ使い道があるゆえに、人間の暮らしは水と切っても切り離せない。命をつなぐ意味でも摂取は避けられないものだが、その利用はまだまだ私たちの知らない点も多いようだ。

 少し前に、実家へ戻った時に少しレアな「中水道」の話を聞いたんでね。みんなもよかったら耳へ入れてみないか。


 みんなは街中を歩いているとき、ふと通り雨に襲われた経験がないだろうか?

 ざっとやってきて、「わ、雨だ」と退避行動をとらんとしたときにはもうやんでいる。しかし服にも体にも地面にも、確かに濡れた気配があって、降雨の存在があったことはまず間違いない。

 本当に、いっときの雨の場合もあるものの、ときにはそれが中水道から漏れたものの場合もあるらしい。

 我々の目に見えない中空を通るゆえに、中水道。その道は必要に応じて絶えず曲がりくねり、我々が触れるのはごくまれなことだという。

 しかし、もし通り雨ではない、中水道の水を浴びてしまったのなら気をつけるべきことがあるのだとか。


 中水道の水を浴びたとしても、すぐ目に見える変化が現れるとは限らない。

 しかし、もし中水道の水に触れたのならば、まず身体から臭いがとれなくなる。それは洗剤を入れずに、たっぷり水洗いをした洗濯物のごとき臭いだ。最初のうちは着ている服の生乾きのためかと疑ってかかるかもしれないが、そのうち自分の体そのものから発せられると気づくはず。

 これは丹念に風呂に入り、身体を洗ったとしても落ちるものじゃない。なぜならこれは、表層部分の汚れなどが原因なのではなく、深層の部分から発せられるものだからだ。


 中水道の水が、中へ入り込んでいる。そのためだ。

 私自身も聞いた話にとどまるが、この中空を流れる中水道もまた再利用をされる役目を持っている。長きに渡って続けられたサイクルのためか、水道を外れた水そのものも仕事をおのずから仕事を果たすようだ。

 中水道の水は、沁み込んだ場所を自分たちにふさわしいところへ作り替える。身体から臭いたつ悪臭は、そのはじまりの段階に過ぎない。

 水がどのような役目を果たしてきたかで、仕事は変わる。そしてそれが人間に適合するものかどうかの保証はない。

 適合したものは念動力、千里眼などの世にいう超能力や神通力といったものに目覚める。が、適合しなかったものは人の規格を外れていくという。

 人であったものが獣やそれ以外のものに化ける。あるいは空気へ溶け込むように消える。身体の仕組みが変えられた結果だそうだ。特に後者などは、血肉も骨も身体のあらゆるものが本来の分解速度を超えて、速やかに自然へ捧げられることになる。

 ひどいギャンブルもあるものだが、世の中ばくち打ちばかりじゃない。「おりる」方法もまた確立されているんだ。


 ――なに? 生きていて、そのような中水道の被害にあった覚えはないのだが?


 ああ、そういう人は多いだろう。少なくとも現代では。

 なぜなら、昔は控えめでありながら、今の時代ではありあまり、みんなが身体のうちへ日ごろから取り込んでいるのもでかい。


 塩だよ。

 こいつは身体へ取り込まれると、中水道を流れる水たちの動きを鈍らせる作用があるそうなのさ。

 症状が進んでしまった場合でも、貯蔵している塩をたっぷりと摂取することを繰り返し、元の姿へ戻ることができた……という例もあるそうだ。

 昔より塩は重宝されてきたし、家々において独自の貯蔵があることしばしばだったが、今の世ならば塩を大量に含んだ食べ物は珍しくない。みなは普段から中水道対策……対策? を進めているというわけさ。

 とはいえ、中には健康志向で塩分控えめな生活を心がけている人も、中にはいるかもしれない。そういう人はもし、通り雨を受けることがあったなら注意してみてほしい。


 だが、ほかのみんなも軽く見続けるのは危険だ。

 先にも話したように、中水道の水たちはおのずから仕事に目覚めたものたち。効果があがらないことを、いつまでも続けるようなタワケばかりとも限らない。

 いつまた、塩をものともしない水が現れてくるかは誰にも読めないわけなのさ。そしてそのときに、これまで伝わっていたような悪い臭いを都合よくかもしてくれるかどうか、ということも。

 我々もまた、様々な変化へ気を配り、ときには理屈にとらわれない感覚を鋭敏にして、ことへ立ち向かわねばならないこともあるだろう。

 この身体に自然の水を取り入れ、流し続けているからには、中水道現象もまた私たちが生きていくうちで付き合い続けていかねばならない、現象のひとつであろうからね。

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