7話
「ほら、もっといい感じに泣き叫べよ!! もっとこの僕を楽しませろ!!」
私が悲鳴の聞こえた場所に辿り着くと偉そうに喋っている興奮状態の変態がいた。
しかも、その男はあろうことか美少女の腹を足蹴にしている。
「う、うう…」
許されざる蛮行だ。私の前で美少女を傷つけるとは…
もしかしたらその子は私のハーレムメンバーの1人になるかもしれないのに。
「柚月ちゃん。ああいう変態には近づいちゃダメだよ」
「もう、いくらなんでも子どもじゃないですから〜。あんな不審者には近づきませんよ〜」
私たちが声を出すと、男はこちらに気がついたようで、ヤンキーみたいに威嚇してきた。
「あ!!」
「目を合わせちゃダメだよ柚月ちゃん」
「そうですね〜。朱莉さんも気をつけて下さい。目を合わせたら妊娠させられそうですよ〜」
「うっせーなー! 誰だよお前ら?」
「名乗るときは自分からって教えて貰わなかったんですか?」
「あ! 僕に指図すんなよカス!」
にしてもこの男…偉そうにしてるだけあって、さっきの雑魚たちとは比べものにならないぐらいの強さだ。
「ところで……なんで女の子を足蹴にしてるんですか?」
「あ? 僕が何してようとお前たちには関係ないだろ?」
「試験中にそんな人を痛めつける行為をするのは良くないと思うけど?」
「何で僕がそんなこと気にしないといけないんだよ。結果さえ出せば問題ないし…ましてや僕は一条家の人間だから関係ないね」
一条家はこの国の中でも有数な貴族の一つだ。
「それに僕はこの子があまりにも弱いから訓練をつけてあげただけだ。そうだよな?」
「ひぃ……」
「おい、返事しろよ!」
そう言いながらニヤリといやらしい笑みを浮かべながら美少女の腹をもう一度蹴り上げた。
「ウッ…!」
「それともお前たちがこの女を助けてみるか?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら男が問いかけてくる。まるで自分が負けるわけがないとでも思っていそうな自信に満ち溢れた表情。
「いいね」
あんたみたいなのは私の大好物だ。
「あ? なに言ってやがる」
「あんたみたいな自信に満ち溢れたバカをボコボコにするの好きなんだよね」
それに、ちょっと顔が整ってるのもムカつくし。その綺麗な顔面を見るも無惨な光景にしてあげよう。
ピンチの美少女をカッコよく助けるヒーロにもなれて一石二鳥だ。
「気が合うな」
「なにが?」
「僕も調子に乗ってるバカな女を躾けるのが好きなんだよ!」
そう言うと猛スピードで私の前に来て顔面に向かって蹴りを入れてきた。
初手から女の子の顔に攻撃してくるとか野蛮すぎるでしょ…
「うわ、一緒にしないでよ変態」
「すぐに僕に向かってそんな減らず口を言えないようにしてやるよ!」
さっきの攻撃よりも明らかに速いスピードで間合いを詰めてくる男の貫手を体をずらすことで回避する。
「ちょっと、私に触ろうとしないでよ。あなたに触られたら妊娠しちゃいそうだし」
「フン…!」
私の挑発を無視する男の攻撃を紙一重で避け続ける。にしてもコイツ…本当に殺す気満々で攻撃してくるな。
さっきから顔とか喉とか心臓のあたりに抜き手がバンバン飛んでくるし。この変態はこれが試験って忘れてるんじゃないかな。
「避けてるだけじゃ勝てないぜ!」
私たちが戦っている間に柚月ちゃんが負傷して動けない様子の美少女を介抱してくれている。
今は土で体が汚れているけれど、それでも分かるぐらいの美少女だ。
もちろん彼女も合格させよう。バッジはこの男と適当な奴から奪ってくればいい。
やっぱり男だった前世に引きづられているのか男には全く心惹かれない。それよりも可愛い女の子に目がいってしまう。
だから私は美少女に囲まれた楽しい学園生活を送りたいのだ。
そういう意味では我ながら幸先の良いスタートを切れている。
美少女たちに膝枕してもらったりご飯を食べさせてもらいたい。
「その程度の実力でよく偉そうに出来るよね。私に一撃も与える事が出来てないじゃん」
「チッ! 逃げてばっかの雑魚がうるせーよ」
「雑魚のくせに吠えまくってるあんたには負けるよ」
「そうかよ…じゃあ次で終わらせてやるよ!」
男は私に攻撃すると見せかけて柚月ちゃんの方に向かって走り出した。
「あ!」
やばっ!
油断した!
「もらった!!」
なんとか彼女たちを守るように前に入った私の鳩尾あたりには男が放った貫手が当たっていた。
「朱莉さん!!」