6話
「相談は終わったか?」
男たちは子どもの頃からずっと一緒に連んでいる幼馴染だった。
この入学試験も全員で合格するぞと前日から意気込んでいた。だからこそ彼等は協力が可能な試験内容だと聞いて真っ先に手を組むことにした。
そして、彼等が偶然にも見つけたのが朱莉と柚月だった。
女2人なら簡単にバッジを奪えるという考えから彼女たちをターゲットにしたのだ。それが彼等にとって不幸を呼ぶ選択肢になるとは考えもせずに。
「うん、奪えるものなら奪ってみなよ?」
男たちに囲まれても怖がることもせず自信満々な朱莉。
その様子を見て胸騒ぎがしたが相手は女2人と自分に言い聞かせて交渉を続ける男。
「これだけの人数を相手に勝てると思ってるのか? 俺たちは女だからって手加減しないぞ」
「手加減? 雑魚が何人集まったって結果は変わらないからしなくていいよ。なんなら私が手加減してあげようか?」
もしかしたら、これから一緒の学園に通うことになるかもしれない異性。
しかも、スタイル抜群の美少女が二人。なるべく穏便に終わらせて、あわよくばお近づきになれないかなんて想像をしていた男だったが朱莉の言葉にブチ切れた。
「そうか……俺たちを舐めるなよ! やっちまえお前ら!」
男が叫ぶのと同時に周りにいた仲間たちが一斉に朱莉めがけて魔法を放つ。
「ファイヤーボール」
「ウインドカッター」
「ホーリーランス」
男たちの放った渾身の魔法は全て朱莉に直撃して辺りには土煙が巻き上がる。
「やったか!?」
「倒したと思った? 残念でした〜」
男たちの予想に反して朱莉は傷ひとつない綺麗な状態で腕を組み仁王立ちで立っていた。
「馬鹿な! あの女はなんで倒れてないんだ!?」
「俺たちの攻撃をまともに食らったはずなのに!」
朱莉が五体満足で立っている姿を見て動揺する男たち。朱莉はそんな彼等にとって残酷な真実を楽しそうな表現を浮かべながら告げる。
「なんでって……それは私の纒う魔力があんたたちの放った魔法を打ち消したから」
「馬鹿な!」
「そこまでの差が俺たちの間にあるっていうのか!?」
「そう。つまりあなたたちじゃどう足掻いたって私にダメージを与える事は出来ない」
そう言った朱莉は抑えていた魔力を少し解放する。それだけで男たちは朱莉の魔力に耐えることが出来ず次々と地面に倒れていく。
「さて、そろそろ私も攻撃しようかな〜」
あまりにも圧倒的な差を見せつけられて絶望していた男たちの耳に死刑宣告が告げられる。
「え…」
「別に当たり前のことじゃない? そっちの攻撃が終わったんだから次はこっちの番でしょ」
「ひぃー!!」
男たちの悲鳴が森の中に響き渡った。
・・・
結局あの男たちはプレートを全て私に捧げることを条件に許してあげることにした。
あれだけ力の差を見つけたんだから私たちに絡んでくることはもうないだろう。
「私の代わりに戦ってくれてありがとうございます〜」
「いいの。私がやりたかったことだから」
「でもこれでバッジは揃いましたね〜」
「後は奪われないようにするだけだね」
「じゃあ、なるべく強い相手に会わないようにしたいですね〜」
「そうだね」
「本当は試験とか面倒だからスキップしたいんですけどね〜」
「試験なんて昼前には終わればいいのにね」
「ホントですね〜。なんだか眠くなってきました〜」
なんか本当に寝そうな雰囲気が出てるけど大丈夫なんだろうか。
段々と瞳も閉じてきてるし…
「ほら、バッジをゲットしたとはいえ、一応は試験中だから寝るのは我慢しようよ柚月ちゃん」
「流石に寝ませんよ〜」
2人分のバッジも集めたし、あとは柚月ちゃんの眠気を飛ばすため為にもゆっくりと雑談でもして時間を潰せばいいやと思っていたのだけど…
「きゃああああ!!」
女の子の悲鳴が近くから聞こえてきたのだった。