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5話



 試験管に促された私たちは徒歩で5分ほど歩かされた。

 そうして案内された場所は草木が生い茂る森の中だった。



「これから君たちには1人1枚バッジが渡される。そして、受験生諸君にはそのバッジを奪い合ってもらう。最終的に3枚以上のバッジを持っていた人間は試験を合格とする」



 どうやら今年の試験はバッジの奪い合いのようだ。

 変に頭を使う試験じゃなくて良かった。単純に武力がものをいう試験の方が個人的には楽だし嬉しい。



 あとは制限時間が短い方が試験なんていう面倒くさいものから早く解放されて最高だ。

 


「制限時間は3時間で試験開始は20分後とする。それまでに各自好きなように森の中を移動してくれて構わない。また、この森の外に出た人間は失格だ」



 まあ、それぐらいの拘束時間だったら許してやろう。

 


「ねぇ、柚月ちゃん」



 隣でぼけーと空を見ていた柚月ちゃんに話しかける。それにしてもこの子…これから試験が始まるっていうのに緊張感ないな。まあ、それは私が言えたことじゃないけど。



「なんですか〜?」



 うん…首をかしげる姿も最高に可愛い。やっぱり今日の1番の目標は柚月ちゃんと親密になることだな。



「私と組まない?」



「いいんですか〜?」



 私は柚月ちゃんと一緒に試験を乗り越えることで仲良くなって楽しい学園生活を送るんだ!

 それにこんな可愛い子を1人にするなんて心配で出来ない。周りはオオカミばかりなんだから。




「私からお願いしたいくらいだよ。それに私たち以外にも協力関係を結んでいる受験生もいそうだしね」



 実際この試験では他の受験生と協力する事は禁止されていない。

 メリットだけじゃなくて相手を信用できるのかとか、取らないといけないバッジの数が増えるとかいうデメリットもあるのだけれど。

 まあ、それも私の強さをもってすれば問題ないだろう。










「そういえばさ、さっき偉そうに喋ってた試験管の人って覚えてる?」



「ああ、ムッツリ眼鏡ですか〜?」



「そう! 私も同じこと思ってた! まさに以心伝心!」



 試験が始まって10分は経過しただろう。私と柚月ちゃんは自然豊かな森の中でお喋りに興じていた。

 だって敵とエンカウントするまで暇だし。話題は受験生に試験内容を説明していた試験管についてだ。



「異性なんて興味ありませんみたいな雰囲気出してますけど…あの顔は絶対ムッツリですよね〜」



 うんうん。

 私も同じこと思った。



「それね! 真面目な顔してるけど心の内では可愛い受験生とか探してそう」



「朱莉さんのことロックオンしてるかもしれませんよ〜?」



「いや、絶対に私より柚月ちゃんのこと見てるでしょ」



 だってこんなに可愛いくて、服の上からでも分かるぐらいの巨乳なのだから。



「えー、そんなことないですよー。きっと朱莉さんのをおっぱいをロックオンですよ〜」



「それはそれで嫌だな…」



 ちょっと想像しちゃったじゃないか。



「というか誰も来ないね」



 なかなか敵とエンカウントしない。



「そうですね〜」



 とはいえ、私たちもただただお喋りに興じているわけでは無い。

 私たちの見た目に騙されて女だからと油断して近づいてきた奴からバッジを奪うという作戦があるのだ。



「お、餌が来たね」



 こちらに向かって来る複数人の足音が聞こえてきた。

 どうやら、やっと獲物がこちらにやってきたようだ。そろそろ体を動かしたいと思っていたからちょうどいい。



「にしても大所帯だね」



「確かにいっぱいいますね〜」




 これが試験じゃなければ適当に殺して終わりでもいいんだけど……

 流石にそれはまずいから手加減しないといけないのがめんどくさいな。




「動くな!」



 気がつけば私と柚月ちゃんの周りを5人ほどの男たちが囲んでいた。



「大人しくバッジを渡せば手荒な真似はしない!」



 その中から代表の男が出てきて私たちに用件を告げる。



「柚月ちゃん」



「なんですか〜?」



「アイツらは私がやってもいい?」



「それじゃあ、お言葉に甘えてもいいですか〜?」



「うん、任せて!」



 可愛い女の子に良いところを見せれるって考えるとテンションが上がるね。

 本当にこんな面倒な試験を一人で受けてたら暇で暇でしょうがなかった。



 さ、柚月ちゃんとのデートを楽しむためにもサクッと終わらせますか!


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