間話
王立バウアル学園の入学試験を終えた教師たちは思い思いに今年の受験戦について話し合っていた。
「しかし、今年は優秀な生徒が多いですな」
「特に九条家のご令嬢は凄かったな。色々な意味で…」
「ああ、学園長がどこからか拾ってきたと言われているが…それも納得の強さだった」
「さすがに学園長の選んだ娘だけあるな」
九条朱莉は今まで表舞台に出てくる事が無かった存在。
しかし、現当主の九条望が幼い時に連れてきて養女にした少女。今まで公の場に出て来なかった彼女が試験を受けるとあり密かに注目されていたのだ。
「一条家の彼も強いとは聞いていたし、実際に強かったけどまるで相手にならなかったものね」
「ああ、あのクソ生意気なガキが絶望している姿は最高だったな」
「ちょっと先生。滅多なこというもんじゃありませんよ」
「そういうお前も楽しそうに見てたじゃないか」
「えー、そんな事ないですよ。いくら彼の評判が悪いからって」
「でもまあ、あれだけの事があれば一条のガキも思ったより手間がかからないかもな」
かねてから実力はあるが性格に難がある一条智紀は問題児候補の筆頭だった。とはいえ朱莉にあれだけの実力差を見せつけらた後なら大人しくなっているかも知れないと教師たちは期待していた。
「にしても、まさか最後の攻撃すら魔力量の差だけで防ぐとはな」
「まだまだ底が見えなかった。末恐ろしい子ですねー」
朱莉の戦闘シーンをみて驚愕していた一同ではあるが懸念点も当然のようにあった。
「でも、あの子も問題児候補な気がしてならないんですよねー」
「ああ、そんな匂いがプンプンしてるな。あれは絶対に問題児だぜ」
「それに今年は柊家のご息女も入学してきますし」
「というか、今年は四大貴族が勢揃いじゃないか」
「凄い年になりそうですね」
「まあ、学園では貴族も平民もありませんからな。我々は我々の役目を全うするまでですな」
人類の敵である魔物を倒すことを目的としたこの学園では、昔から教師も生徒も地位に関係なく平等であることが義務付けられている。
とはいえ、選民意識の強い貴族は自分より身分の低い教師に対して反発する事も多々ある。
「選民意識の強い貴族の奴等はプライドの塊だから反発することも多いけどな」
「まあ、学園長の威光もありますし何とかなることが多いですけどね」
「それに、母親がトップを務める学園で他の貴族のガキがルールを破ったら娘が黙って無いんじゃないか」
「それはそれで問題では?」
「確かに試験を見た感じ、そういう相手を痛めつけるの好きそうですもんね」
「ああ、一条家のガキもやろうと思えば一瞬で倒せたはずなのに、だいぶ遊んでたしな」
「お灸をすえるどころか再起不能にしてしまいそうですな」
「まったく、今年は波乱の一年になりそうですね」