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第169話 炎は友達

「炎って………ちょっと。あの顔デカイし、相当ヤバイやつ来るんじゃないの!?」


「避けねぇとまずいっすよ!」


 いくらエリクシル粒子適合者とはいえ、熱耐久は優れているが、直接炎で炙られて怪我をしないわけがない。あの自爆魔の自爆に巻き込まれた俺が、その証明となったように。


 全長十メートルというのは遠くからの目測で、いざ接近してみれば、首と尾を足せば二十メートル近くにはなるだろう。サラマンダーの頭部なんて三メートルはあるかもしれない。


 その迅でさえすっぽりと収まってしまいそうな口腔が開くと、集約した火炎が渦を巻き、利達と迅が警戒した火炎放射がそのまま放たれた。



「任せなっ」



 ところが、だ。


 奏さんにも言ったように、火炎をどうにかできる人材がここにいた。


 俺たちに次ぐスキル持ち。そのファーストスキルは『熱操作』とあったが、いったいどんなものかと思いきや───



「元飲食店勤務を舐めんじゃねぇ! ()()()()っ!」



 アルマが火炎放射に触れると、なんと素手で止めやがった。



「業務用コンロ以上の温度か。でも今さらこんなの、怖くもなんともねぇんだよ!」



 頼もしい限りだった。本当に、実にあの自爆魔に見習ってほしい。


「行け! 京一! 龍弐!」


「おう!」


「あいよぉ!」


 火炎放射を阻止しただけでも大きい。四種類のうち、ひとつの攻撃を阻止した。


 あとは向こうも接近戦に特化している造形だ。斥候として出た俺たちが、少しでも削れば後続の連中が穴を広げてくれる。


「わざわざ関節を増やしてくれやがって。今すぐ動けなくしてやるから覚悟するんだなぁ!」


 老生体の巨大な角を内部から折って関節を作ったキメラだが、その判断は間違っていると教えてやる必要がある。


 前足に組み付くと、スキルを使ってふたつある内のひとつを、内側に曲がっているところを外側に折り畳んだ。


「………お?」


 ところが、いつもなら確かに手応えがあるのだが、今回に限ってはそれがない。


 確かに前足のひとつを折り畳んで使用不能にしてやったつもりなのだが、関節を破壊する感触がまるでなかった。しかも折り畳んだばかりの前足が、すぐに元の位置に戻ってしまった。


 一方で龍弐さんも日本刀の切先を関節に捻じ込んで、内側からの破壊を試みるのだが、これでもかと挿入して切断しようにも、前足はまだ正常な稼働を続けている。


「ダメだ。どうなってやがるこいつの角は!?」


「とにかく一旦離れて………上だキョーちゃん!」


 ふたりで前足の破壊に専念し過ぎた影響で、頭上の警戒を疎かにしていた。キメラの背中にはウッドアームコングの腕が羽のように生えていて、足元に潜り込んだ敵の迎撃を可能としていたのだ。


「オラァッ!」


 アルマが叫ぶ。火炎放射を阻止するだけでなく、頭上ですべてを集めていた。その球体と化した炎を投げて、サラマンダーの顔に直撃させる。


 だがサラマンダーといえば、炎の耐久値も異常に高い。自分の炎に焼かれないよう、鱗が炎を分散させるのだ。


 それは一瞬の目くらましにしかならなかったが、それでいい。鏡花が投げたダーツと置換することで、ウッドアームコングの腕の射程から逃れることができた。再度仕掛けることはせず、奏さんたちのところに戻る。


「冷静になれよ、ふたりとも。あれは進化したスライムの亜種だって言ったろ? あの肉体は捕食したモンスターだ。スライムが鎧みたいに着ているんだよ。水は切れないし折れないだろ? スライムの核を狙うしかねぇんだ」


 できれば早めに言って欲しかった───とは言えない。スライムと聞けば、それくらいイメージできそうだった。予想できなかった俺たちのミスだ。


「キョーちゃんが折っても、俺が斬ってもダメージにはならないわけか」


「でもさ、ダメージにはならないだけで、損傷したらどうするの? 例えば輪切りにしたり、なます切りにしたりとかさ。もしかして修復しちゃうの?」


 こういう時、利達は鋭い注目をする。アルマは感心していた。


「修復はできるけど、時間はかかる。スライム自体が損傷した外装を補填したりとかしてな。パテとかになるんだ。硬化すれば元通り。けど、戦闘中にはできない。利達が言うように内部からじゃなくて、外側から削ってやるのがセオリーだな」


 よしよしと頭を撫でられ、得意げになる利達。


「では、一気に爆散させます!」


 奏さんがここに来る前に様々な素材で作った矢を強弓に装填し、放つ。


 矢は途中で散弾のように分散し、キメラの至る部分に刺さると徹甲榴弾のように炸裂する。


 右の中央の足の、第二関節が破壊され、内部が露出する。水色のなにかが見えた。それが神経の代わりをしているスライムだ。まるで内側から操作する操り人形のように思えた。


「ははーん。仕組みがわかればこっちのもんだ! 鏡花パイセン!」


「やりなさい。合わせるから」


 利達と鏡花が手を組んだ。珍しい組み合わせだ。


 八つの丸鋸を放つと、スキルで回転を加えて空を飛翔する円盤と化す。すると途中ですべてが消えた。が、再び現れたのは俺と龍弐さんがいた場所だった。


 鏡花はダーツを置換のポイントとして利用し、応用する。


 一回目は俺と龍弐さんを、この場所とキメラの中間で入れ替え、キメラの足元に転がったのを利用してすべて丸鋸と置換した。


 宙から迫る八つの丸鋸を警戒していたキメラだが、そのすべてが足元から跳ね上がったのは予想できなかっただろう。サラマンダーの口から奇声が炸裂した。


 丸鋸は両前足の付け根にすべて着弾するのだが、スティンガーブルの角の一番太い部分ゆえ、どうにも刃が通らない。


「鏡花ちゃん! これを!」


「はい!」


 奏さんが再び徹甲榴弾の矢を放つ。途中で分散したところですべて丸鋸と置換した。分散点に八つの丸鋸が落下した直後、キメラの両前足の付け根が爆散する。


 改めて見ると、鏡花のファーストスキルほど恐ろしいものはない。


 今の攻撃のように、あの置換というスキルは、距離を無視して爆弾を送りつけるようなものだからだ。


 鏡花はファーストスキルの発動条件を「目視した場所ならどこでもできる」と言っていた。御影がマリアを殺しかけた際、置換して瞬間移動した彼女は、サブカメラから座標を瞬時に演算したことになる。離れた場所でもスクリーン越しであっても見ることができれば発動可能というわけだ。


 キメラの前足の付け根が激しく損耗する。


 アルマの話を聞いて、かなり警戒していたのだが、奏さんの言うとおり七人のスキル持ちが組めば、四種類の合成獣の攻撃を封じられるのかもしれない。


ブクマありがとうございます!

あけましておめでとうございます。


えー、見事に風邪をひきました。

39.1度ですって、もう笑っちまうくらいです。昨日は職場から帰宅して、そのままダウンしていたので更新ができませんでした。

本日は意地で書いたようなものですので、ちょっと短めです。本日より数日のお休みをいただければと思います。治ったら更新を再開します。

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