応募用短編版《-EROSION- コールドスリープした未来は異世界だった件について・レポート》バンダナコミック 縦スクロールマンガ原作大賞 メカ・ロボット篇
小説作品情報・あらすじを事前に御読み下さい。
燦々と緑陽が枯れた大地の荒野を照らす。
青空には雲1つない晴天で、この区画はそうそう表情を変えない。
その風景に不釣り合いな人工物が突っ切り風と土煙を起こす。
それを遠目に観察しているのは小動物等。
襲うでもなくソレが過ぎ去るのを一早く望んでいるかのようだ。
巣穴から覗く額に鋭利な角のある兎の親子や日陰で休んでいる結晶が背にあるラクダ、壁面に身を置く舌を出し入れしている雪を周囲に降らすトカゲは隙間に逃げてしまった。
それらを意に介さず車輪は前へと走り遠ざかる。
整備されていない土塊や小石が車体を大きく揺らして邪魔をする。
葉を生やし忘れた細木を避けて目印の1本の石墓を見送ると凹凸が激しい岩が階段のようになり始める。
タイヤが押し登る数分後には、その先の景色は忽然と様変わりする。
高台から見下ろすは目の前に広がる大海原だからだ。
本来ならば有るはずの無い、日本地図とは異なる海とその周りにある崖に囲まれた地形と未知の毒々しい植物には見慣れ、そして今の感情には関係なかった。
潮風が窓から出した体に当たり匂いを運んで来る。
眼前の異様な景色を本の一瞬だけ棚上げして、もう二度と嗅げないと思っていた思い出と記憶を蘇らせる。
感傷を捨て去ると現実を前に気を引き締めて瞳を開けて姿勢を車の中へと戻してハンドルを握り直した。
岩肌を滑るように降りて海へと前進させる。
その目的地の水面からは水生生物が跳ねて影を作って水飛沫と波紋を広げて海色へと消えていった。
目撃していないにも関わらず運転手かれの顔を綻ばせる嬉色の感情を隠せないでいた。
◇
コールド・スリープから目覚めてアレから、どれ程が経っただろうか。
シュバルツと名乗るようになってからの自身を思い出してみる。
前後の繋がらないままに世界は未知の進化や変貌を遂げ、支配されていた。
自分以外の人間には出会えていない。
分かっているのは少なくとも100年では効かない年月が過ぎていることだけだ。
そんな思考は移れ行く景色と同じように去ってゆき、感情を置き去りに時間は元には戻らない。
分かりきっていると簡単に納得出来るとは別に余所にハンドルを切って思考を現在に戻す。
この湖を見つけたのが先月の事。
準備や色々と問題が発生して、それらを片付けてやっと目処が立ったのが5日前だった。
海水や潮風仕様に整備を完了させている大型トレーラーを走らせて電子地図で事前にチェックを入れて見つけていた湖を目指す。
道中はモンスターを出来る限り殺生を控えて迂回を繰り返しながら血や匂いを車体や自身にも付着させない事を心掛けて走行させていく。
異物が縄張りに入っただけでも刺激を与えるにも関わらず敵対生物の血や獲物の匂いをさせていては余計に興奮する材料を与え兼ねない、シュバルツは彼等に敬意を表する意味も込めて迅速に各々の縄張りを通り過ぎてゆく。
そのため回り道をしたように地図の空白を埋めて計画より遅れている事をカレンダーの枠にチェックが付けられていた。
そうこうして我が家を出てから5日、ようやく件の湖に到着して感慨に耽っていた。
大型トレーラーに搭載している周囲の生体反応や自分に近づいて来ようとする動き等には細心の注意と警戒を払いながら彼は簡易の基地制作へと行動を始める。
その動きは現地の生き物に敵意が無い事を表すように緩和で、ゆっくりに行われていた。
そんなシュバルツが今、身に纏っているのは精巧に模倣された拾った未来人の赤茶色の上着と自身にフィット調整してある黒色の迷彩柄のパワード・スーツである。
上着は未だ見ぬ生きた生存者に警戒されないために遺体の衣服を参考にデータスキャンした基礎情報からN.O.A.Nの総合システム人工知能であるB.L.A.C.K.の手で造られた未来デザインから成る珠玉の出来と言わざる得ないだろう。
そして当時の技術の粋を集めた科学力と現代の技術を合わせてシュバルツが考案・製造指揮を取って造られたパワード・スーツはパワーアシスト等の機能や防護服も兼ねられているため顔全体も覆うようにメットやガスマスクが一体になっている。
動力源は電気で動き、その都度に充電を行わなければ成らない。
スーツの右腕には円形の盾、腰には拳銃のSIG.SAUER.P229と剣とモンスターの歯や骨に甲羅と革で製造した物を装備している。
見た目よりも丈夫だが重く、どれも生身では持ち上げる事も一苦労するだろう。
野営基地が完成すると訪れた緩やかな時間を楽しむために彼はB.L.A.C.K.に注意事項の確認を取り出す。
「作戦コードAを維持しながらB-2へ移行。
警戒態勢をイエローに変更、俺は念のため重機を待機させておく。」
フルフェイスで、くぐもった声を発しながらシュバルツはトレーラーのリヤドアから入って行く。
『かしこまりました。
いつも通りでございますね。』
シュバルツのフルフェイスで響くB.L.A.C.K.の音声を聞きながらシュバルツはパワードスーツのボタンを押してスーツ内部の暖房をオンにする。
「ああ、そうだ。
周辺地域への配慮と汚染の予防のためにも拠点に通信、つまり電波は送るな。
簡易の基地局を設置したのも念のため、万が一の時の保険だ。」
『分かっております。
貴方様は‥‥‥。』
『「臆病なだけ」』
シュバルツとB.L.A.C.K.の声が重なる。
その後は鼻を鳴らすだけでシュバルツは作業に戻り又、喋らなくなる。
トレーラーからブースターケーブルを伸ばすと車体の屋根に設置されているソーラーパネルの太陽光エネルギーを浜辺に移動させた軍用搭乗型ロボットに接続する。
もう片方に忍ばせていたポータブル電源は自身のパワードスーツにセットしてパラソルの近くに腰掛ける。
「80~90ポイントは充電しておきたい。
…………が、どうだろうな。」
一抹の不安と予感を抱きながら片手にポータブル電源の取手を持ちながらトレーラーの前方部分のキャンピングカーになっている居住エリアの冷蔵庫から飲料と具材を取りにいく。
浜辺の砂浜には先程、配置した椅子とテーブルが有りキッチンで焼いたバーベキューの人工肉や栽培した野菜を皿に盛り付けてアイコンタクトでB.L.A.C.K.に訪ねる。
『…………全くシュバルツ様は心配性で、ございますね。』
「それで結果は?」
ドサッとポータブル電源を砂浜に置くと恒例の会話のように続ける。
『大気中の放射能濃度及び成分の精査は完了しておりますよ。
どれも基準値をクリアしていました。』
そう言われ一瞬、機嫌を悪くしたような表情をしてから彼はフルフェイスのイヤー部分に優しく左手で触れて離す。
するとフルフェイスが解除され開閉して素顔を露出させる。
「直に浴びる潮風も悪くない。
もう2度と感じられなかったはずの香りだな。
奴との出会いに感謝しないとか。」
風に揺られる上着に隠れている自動拳銃P229のマガジンに装填されている弾頭・弾薬・薬莢はモンスターの骨を削り形作られた弾丸である。
火薬のみが既存の物でしか再現を余儀なくされたが現時点の最高のパフォーマンスと許容して自然に与える被害を大幅に減少させる形に落ち着いている。
現在の予備弾倉は6つだけ。
コレらは拳銃も含めてシュバルツの拠点であるシェルター内のラボで開発され製造ラインで作られた数の少ない品だ。
製造のための材料であるモンスターの骨格や爪・牙が供給に追い付いておらず、その他の銃器には、そのために使われている弾丸が通常の金属製となっておりシュバルツとしては使用を忌避させる要因となっていた。
フードを被ると調理済みの少し冷えてしまった串に刺さった肉に、かぶり付く。
肉食獣を焚き付けないために煙を最小限にする工夫として事前に処理を済ませトレーラーのキッチンでは温めた後に軽く炙るだけと警戒を怠らない徹底ぶりだ。
飲み物を手に取ってコーラを拠点に忘れてきた事に頭を抱えそうになりながら緑茶を呷る。
波打つ海と日照りをパラソルで涼みながら眺め景色を楽しんでいると巨大な蜘蛛が音も無く入江の崖から覗かせ出現する。
アメンボのように水上を歩くように此方に向かってくる。
全長と言うより足の長さだろう、10メートルはある。
全身は、それに見合うだけの巨体であり海老のような外殻に守られていて、そこに煙が複数発生していて動きに釣られて動く。
鋏角、口からは涎や体液を垂らしている。
溢れた滴が海に落ちて湯気を立たせる。
どうやら背中からも酸性らしき液体を垂れ流し殻を溶かしているらしい。
すなわち脱皮を激しく繰り返さなければ成らない生態なのが浮かび上がる。
索敵レーダーに捉えた瞬間からトレーラーの屋根や両側のサイドパネルの一部が展開・反転しマシンガンやランチャー、炸薬弾のバズーカが現れ標準を合わせるように首を振るうと終えて射撃準備を完了させる。
高速で移動しシュバルツに近付いてくる大蜘蛛をスコープで確認して気づく、蜘蛛は腹部に卵嚢を抱えていた。
手で征するように止めるように指示する。
「まだだッ撃つな!
冷銀色の酔いどれ戦車を起動させろ!!
銃器の使用は禁止、ハンド・アームで奴を抑えこむ。」
シュバルツが勝手に命名して改造した元は軍人運用目的らしいと読んでいるキャタピラーに上半身を、無理矢理くっ付けたて合体させたようなロボットの発進命令を出す。
シェルター内の格納庫には他にも二足歩行の搭乗型や乗り物等も在るが今回はトレーラーに収まり切らなかったため、お留守番だ。
自動で人形搭乗ロボット戦車のケーブルが外され、シュバルツはパワードスーツのコードを手動で外すと走り出す。
フルフェイスを開展させて表示されるディスプレイに映る情報を精査しながらロボットに乗り込もうと機体に飛び乗る。
「スーツ充電は78%、酔いどれは51%か。
まぁ上出来だな。」
パワードスーツの、お蔭か猿のように機体を跳び駆けるとコックピットが開閉して乗り込むと操縦桿やボタンを弄りモードを切り替えていく。
「思ったよりもヤツの移動速度がある。
仕方ない。」
冷銀色の酔いどれ戦車の肩に取り付けられているモンスター由来の弾丸製ミサイル・ポッドから発射される。
戦車は海水に躊躇なく直進し攻撃の手を止めない。
寸分狂い無く大蜘蛛の背面に着弾するも相手の動きを多少遅延させる程度しか効果はなかった。
暫く戦車からミサイルが飛び立ち大蜘蛛が咆哮を轟かせ。
苛立つシュバルツとB.L.A.C.K.の宥める会話がコックピットを騒がせるが遂に大型同士が相対する時がやってきてしまった。
あと1回分のみ、を残したミサイル・ポッドは温存するため冷銀色の酔いどれ戦車の二対のハンド・アームで大蜘蛛を掴みホールドすると押し返すようにエンジンを蒸かせ水しぶき、を激しくさせる。
「これでどうだ!?
水馬蜘蛛ッ沈め!!」
このまま水面に居られないように海へと溺れさせようとしていると残っていた長い歩脚を槍のように刺して装甲に凹み、や穴を作っていく。
「不味いな。
B.L.A.C.K.操縦、任せたっ。」
シートベルトを解除してコックピットの蓋を開けようとした瞬間にモニターとメインコンソールを一つの鋭く太い針が刺突が深く繰り出され座席にも大穴を広げる。
その伸びる部位は他の脚より太く針が光っていて直ぐに尻尾だと分かった。
その針から液体が滴りモニターや内部と座席を溶かし煙を曇らせる。
冷や汗を掻きながら蠍かよ、と内心で愚痴りながら仕舞われた尻尾が再度狙いを付けている隙に穴のある蓋を開閉と同時に蹴破りながら勢いよく飛び出す。
操縦席には誰も折らずコンソールも駄目になっているがBLACKがコンピューター制御に切り替え操っていた。
最後のミサイル・ポッドを発射して複眼を狙う。
目眩まし程度の成果を期待してシュバルツは飛び出た勢いを利用して眉間、蟀谷に向かって発砲する。
モンスターの骨から製造されている弾丸はリコイル、反動が通常より強くパワードスーツとシュバルツの日頃の射撃訓練の成果で難なく撃っていく。
小さく尖った弾丸は効き目が合ったようで貫通して赤紫の血を流させる。
悲鳴を上げる大蜘蛛だったが、ここでシュバルツはその大蜘蛛の言語をフルフェイスの機能が聞き取る。
「「い"ダい"ぃぃ~~~!
エ゜ザがハん゜げキじテぎだぁーーー!!!!」」
余りにもな出来事にシュバルツは機体の上で止まってしまう。
この発声元は大蜘蛛だ。
酷く嗄れた、それでいて重厚のある、くすんだ老人のような声音。
シュバルツの動きを鈍らせたのは大蜘蛛が喋ったからではない。
大蜘蛛が発した言語は全てを理解、翻訳されていないが、それなりの精度で機器が解析している事を意味している。
それは即ちシュバルツが以前に採取したモンスターの発したデータと類似した生物ないしは声帯構造だという事が判明したからだ。
大蜘蛛との距離が近くなった等の要因も関係しているだろう。
この発見にシュバルツは身体を硬直したように動きを止めてしまっていた。
「「も"ウゆ゜る"さナい゜ーーーー!!
ゴろ"シてや゜ル゜ーーーー!!!!!」」
その事に遅れて気付き動き出そうとしたが大蜘蛛の歩脚に薙ぎ払われてしまう。
水面を転がり石の水切りのように跳ねてやがて沈んでいく。
位置取りのお蔭か偶然か激痛の身体中に鞭を打って浅瀬の足場に着くとシュバルツはフラ付きながら浜辺に転けるように寝転がる。
パワードスーツは拉げて機能の大半を停止していた。
フルフェイスを浜に投げ捨てると首輪の型骨伝導越しにBLACKに音を上げる。
「ぐぁっぷ。
ぐっ、ぐはあぁ!
BLACK、警戒をレッドだッ!!!
思う存分やれ!」
塩水と吐血しながら右腕にシールド、右手にはモンスター製のソードを持ち。
弾倉を交換済みのP299を左手に構える。
水質・環境・大気・生態系汚染と地形破壊の二次被害暴発を懸念してどうしても最初から一手を決めようとしない我が儘な命懸けは彼の本質から寄るモノだった。
『やっとですね。
頑固もココまでくれば表彰物でしょう。
それでは各個射撃体制に入ります。』
◇
羽交い締めにして大蜘蛛諸とも通常爆撃と上半身とは別の戦車の大砲からも射撃を始める。
自爆シークエンスもカウントされるが最後の数秒で逃げられてしまう。
その際に大蜘蛛が腹面の出糸突起から粘つく糸を放ちロボットの腕を阻害し離れて行くがブラ下げていた卵嚢、即ち卵の糸が切れてしまう。
卵嚢が海面に落ちてワラワラと孵化してしまう事態も発生する。
溺れ死ぬ個体や群がり、泳ぐ個体が波に浚われながら糸を吐きロボットを目指して登ってくる。
その時に大蜘蛛が鳴き声を叫ばせるが、もうシュバルツには聞き取る手段は無かった。
「酔いどれは切り捨て覚悟だ!
酔いどれゴト、撃ち抜け!!!!」
それまでは大蜘蛛を射撃していたトレーラーの各々のマズルが冷銀色の酔いどれ戦車と子個体を狙って火を吹く。
砂浜では足を取られ今の体調では上手く歩く事も儘ならないため少し歩いた先にある海岸の岩場にきていた。
蹌踉けて滑って身体を傷付けながら射撃出来るポイントを探すが不意に影が出来て槍が落ちてくる。
咄嗟に躱すも次々に抜いては刺してが繰り返される。
息絶え絶えの中、P299を放ちも起死回生の一撃を与えられず上顎と下顎の隙間から酸性の毒液を放出しだす大蜘蛛の攻撃を避けながらシュバルツは反撃の一手を考えていた。
岩場の段差に足を引っ掻けてしまい、その一瞬で毒液を撃たれ右腕の円形の盾でガードする。
その間に足を段差の隙間から抜くと盾の耐久も数回だろうと2度目の毒液が放たれる前にシュバルツは前へと走り出し脚力で飛ぶと盾を大蜘蛛の口に嵌め込む。
焦った表情を見せる大蜘蛛の額を踏み着けながら撃つのを忘れない。
怒りを示しながら円形の盾を噛み砕くと苛立たしく尻尾の毒針の攻撃を始める。
背面を移動しながら避けて次弾マガジンを装填すると溶解液の放出口を避けて、その穴に目掛けて撃ち込む。
大蜘蛛が更に悲鳴染みた声を鳴らし振り下ろそうとする。
クネっている歩脚に掴み付いて堪えるが数秒でシュバルツは水没してしまう。
連鎖するように冷銀色の酔いどれ戦車が大爆発を起こして大破して破片と伴に沈んでいく。
水面に顔を出して深く息を吸うとクロールをして陸地へ向かう。
それに追随するように大蜘蛛がシュバルツを狙い海を滑る。
そこにトレーラーのマシンガンやランチャー、炸薬弾バズーカが鉄の雨を降らせる。
岩場に染みを作りながら大蜘蛛に向き直るとモンスター製の刀剣を抜くと数歩、海面を走り沈む前に飛び上がり胸板・腹面に電気を通わせた崩壊を始めた刀剣で斬りつける。
しかし歩脚に邪魔されて上手く当たらない。
そのまま空中で成す術なく落下するだけかと思われた時だった。
半壊しコックピット等が露出し今にも崩れそうな冷銀色の酔いどれ戦車が海水面から現れ大型を掴み投げ飛ばす。
いきなりの事に驚いていると骨伝導からB.L.A.C.K.の声が届く。
『酔いどれの通信電波切れます。
お急ぎ下さい。』
阿吽の呼吸で、その意味を把握すると壊れ掛けた人形ハンドに着地すると、そのまま岩場に投げられる。
爆発もせずにブクブクと沈んでいくのを尻目に空気抵抗を抑えるために姿勢を正す。
岩の壁面に衝撃り何とか岩場に戻ると、ひっくり返った大蜘蛛に近寄ると腹面に乗ると歩脚がワラワラと起き上がろうとしているのかシュバルツに攻撃を加えようとしているのか邪魔だったので刀剣で斬りつけるが1本のみに留まり刀身が崩れてしまい。
パワード・スーツで無理矢理、引っこ抜き、蹴りで砕き、P299で狙撃して全ての歩脚を破壊すると標準を頭に向ける。
カチカチと顎を鳴らし背面から激しい勢いで溶解液を吹き出し岩に反射して大蜘蛛とシュバルツに襲う。
苦し紛れに糸を放つが仰け反っているために白銀の糸は虚空に弧を描くだけだった。
「今日は大損だ!」
スーツは溶けだし大蜘蛛の腹面に穴を作っていく。
怯みもせずに頭や腹に装弾しながら撃ち続け苦しみ暴れてジタバタしようとして残った毒針付きの尻尾を思い出したかのようにシュバルツに差し向けてくる。
あと数ミリでシュバルツを貫く瞬間に弾道ミサイルが着弾して半ば、で千切れ岩場を転がる。
シュバルツも風圧に圧されて吹き飛んでゆく。
2発、3発と爆発を起こして大蜘蛛を完全に動きが停止し死骸になるまで発射された。
岩場のギリギリに倒れ波がシュバルツに掛かり滲みて苦悶を示しながら走行音をさせる方へと首を向ける。
凹凸のある岩場に作業用のロボットがタイヤが突っ掛かりながらシュバルツの元に到着すると替えのモンスター製の刀剣と救急キットを渡す。
「遅いな。」
苦笑と微笑が同時に出て、その事に更に可笑しくなって痛む身体を忘れて大笑いに変化していくが気にならなかった。
「お前は海水仕様じゃないんだけどな。」
『緊急でしたので。
これも致し方ありません』
BLACKの悪びれもない台詞に終わった後に遣って来てもなと思いながら気を取り直してシュバルツは刀剣を杖代わりにして立ち上がると指示を出し始める。
まずは死骸や残骸の処理と壊滅した地形や機械類の回収。
唯一、無傷で残っていた毒針の尻尾を材料に持ち帰るとして海を眺めて掃除が大変だと溜め息を吐き出して笑うと腫れた肌や腹部が痛むのを思い出す。
浜辺に戻って来れたのは夕暮れ時だった。
比較的無事な部位を新しいパワードスーツで持ち上げて冗談で食べれるかをBLACKに訪ねると帰ってきた言葉は──検査した結果、毒性は見当たりませんでした。
味は保証しかねます──だった。
冷めきってしまったバーベキューの肉を切った口内に血の味をさせながら頬張り感慨に耽る。
彼が来たがっていた湖、結果的には海だったが来れたのだ、今日の話を肴に墓参りに行こうと、お供え物に蜘蛛の部位にしようかと一瞥して直ぐにバーベキューの肉へと考え直すのだった。
「よし、消毒洗浄作業の完了次第、帰還工程の準備に入る。
‥‥‥‥‥潜水艇ってのも有りだな。」
嘆くように呟く声は波風に欠き消されてゆく。
海の底にはレーダーから逃れた1匹の子蜘蛛が貝殻に隠れていた。
《 ~幻夢の墓海と蠍蜘蛛~ 完》
通常連載版の本編はコチラになります↓
(https://ncode.syosetu.com/n6815hr/)
多少の違いがございます。