第21話 笑顔
「いいじゃん! 私行きたい! っあ俺行きたい!!」
雪菜が言った。
「もう辞めちゃえばいいのに……」
そう雪乃が小言を言った。
「雪乃! なんか言った? 雪乃も“俺”だからね」
「はあ……」
「インガ! 僕も!」
「ちょっと待てお前ら……」
インガが少女の元へ近づいて、膝を曲げた。
「ちょっと……」
雪菜が警戒する。
インガが少女の顔を覗き込み、真っ直ぐ目を見た。
「……!」
「お金の心配はしなくていい 君が行きたいと思うなら行こう……」
「そうだよ 遠慮しなくていいからね」
「大丈夫だよ」
雪乃がそっと少女の背中をさする。
「え えと…… 君がしたいように……」
久しぶりに人の優しさに触れた少女にとって抑えがたい衝動。少女の瞳から大粒の涙が溢れ出る。
「ぅ…… ぁぅ…………」
「わわ」
タイガが焦り出す。
「い…… 行って……いいですか……」
「もちろん」
「決まり! 服取ってくる!」
タイガが走り出した。
「!」
「あ この子の服! 私の着せればいっか」
「私のでもいいよ」
「私のじゃ不満ってか!」
「そうじゃないって」
「すみま……」
「気にしないで!」
雪菜が食い気味に言った。
「お前らはお金あるのか?」
「え? 出してくれるんじゃないの?」
「出さねえよ」
「ケチ」
「わかった 出すよ」
インガは空気を悪くさせまいと出すことにした。
「よし! 雪乃ナイス小言!」
「でしょ」
「とりあえず 3人だけ先に」
インガは銭湯へ向かった。
「女性3人男2人で」
そう言って、インガがICチップリーダーに手をかざして決済を済ませた。
「行こ!」
雪菜が少女の手を引いた。
⁂ ⁂
「ってか まだ名前聞いてなかった」
「天空……」
少女の名前は天空宗司、母がつけた名前だった。
「なんでもいいよ 私達の世界じゃ あ 俺達の世界でまともに名乗ってる人なんていないから ただ君の呼び方を教えて 俺は雪菜 雪乃? わかってるよね」
「……俺は雪乃」
「……えと」
「じゃあ雪華! “か”は難しい漢字の方!!」
「お姉ちゃん それ好きな漫画の主人公じゃん」
「いいじゃん! 雪華ちゃん可愛いよ! 嫌……?」
雪菜が不安そうに少女を見た。
「ううん 嬉しい!」
彼女の顔に笑顔が灯った。
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