第1話 舌一片
正直、読むの 第15話 胸を張る からでもいいです。
最初読んで「つまんなそ」って思っても15話から! 少しでも読んでいただけたら幸いです。
ジメジメとした気候が初夏を告げた。
ちょうど肌を露出した首元に不快な羽音と共に蚊が血を吸いにやってくる。
倦怠感を纏った手で首元の蚊を叩き殺す。
そこに命を奪った罪悪感はなく、掌の上で徒に死した蚊を汚く思うだけ。
そんな風に同種も殺す。
薄暗い長廊下。青年は嘲笑う男達を横目に廊下の先にある扉へ向かう。
「ずいぶんと汚ねぇ形だな」
「餓鬼が来るようなとこじゃねーぞ」
ゲラゲラと笑う者。嫌悪の眼差しを向ける者。ただひたすらに煙草をふかす者。
青年は扉を開けた。
机が一つ。そしてその奥で座る者。その者は青年に問う。
「何をしに来た……?」
「何をしに来たとか無い」
「まあ 君を引き入れたのは我々の方だ 目的無しも当然……か ……でも我々を選んで来た」
「……この腐り切った国に辟易した ただそれだけ……」
「元国家警察には似つかわしくないセリフ……」
「いいのか?」
気怠げに伏した目線を向けて質問した。
「君が狗である可能性のことかい?」
「ああ……」
「少しでも怪しいと思ったら君の脳天に風穴が開く」
「ん……」
青年はどうでもいいと言わん顔つきで蚊跡を掻く。
「名乗りたい名前は何かあるかな?」
「インガ」
「わかったインガ じゃあこの紙に君の血を見せてくれ」
そう言って真っ新な紙一枚と、複数の刃物を机の上に並べた。どれもこれも刃こぼれしている。
「何の意味がある?」
「度胸試しみたいなもんさ 入る時に皆やるのさ」
「……」
徐にインガは舌の先端を噛みちぎり、舌一片、紙の上に吐き捨てた。
「インガ 君を『雨』が歓迎する」
魑魅魍魎が跳梁跋扈するアンダーグラウンドでここ最近頭角を現し始めた暴力組織『雨』。
インガが国家警察を辞めたというのは偽りだった。インガが任された職務は『雨』を壊滅させ、国家の安全を保障すること。
今、インガの薬室に弾薬が込められた。
突然、銃声が響いた。
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