本編6
レンジュが部屋を出てしまいやることが無くなった。部屋に荷物と言っても持ってきたものなんて教会からこの国へ着くために必要な着替えぐらいしか持ってきてないし……
「とりあえずこの教会付近を歩いて見てみるか」
部屋から出て教会の入口に向かう途中で司教に声をかけられた
「どちらに行くのかな?」
「ええと………この国を何も知らないので少し歩いて見て回ろうかと」
「それはそれは」
しわがれた声で喋る司教はなんとも不気味だ。表情もあまり動かないからこの人もロボットなんじゃないかと思ってしまう。
「名前はレンと言ったね?」
「はい、貴方の名前を聞いても?」
「ワシの名前はアンデレというレン、君はこの憐憫教会の成り立ちをしってるかね」
「いえ、レンジュは何も言いませんでしたし……」
レンジュはこの教会の成り立ちもルールも教えてくれなかったし俺自身気にしたこともなかった。
「君がここの信徒じゃないから教えてなかったのかもしれんな」
顎に手をやりながら喋るアンデレは椅子に腰掛けまた喋りだした、老人がこのモードに入ると長くなるんだよなぁ。
「この教会は数百年前に1人の聖人を元に作られた。」
「聖人………ですか」
「そう、その聖人がこの国も含め色んなところを旅し結果12人の弟子が出来た」
「そして今の教会が出来た」
「色々紆余曲折あってこの教会ができた、細かい話はレンジュに聞け」
なんだ、この教会の成り立ち全部話すのかと思ったら意外と早く解放されそうだ。
「なんでレンジュなんですか?」
「あの娘が1番見てきたから」
「はぁ」
聖書みたいなのを読んでたみたいな事だろうか、というかこの話を聞いて思ったんだがこの宗教には戒律というかルールみたいなのは無いんだろうか。
「アンデレさん」
「なにかな」
「この教会にはないんですか?戒律、ルール的な」
「細かいこと言えば色々ある、食事のマナーからこの日はこれをしてはいけない等々、だけど面倒くさくてな」
これが司教の言うことなんだろうか、もっと厳しく指導する立場なんじゃないの。
「はぁ………」
「人を愛しておけばこの教会は大丈夫、根本が愛する人を守ろうじゃからな」
「そんな適当な……」
「その適当がこの国では守られておらんがな」
確かに、そう言われて黙ってしまった。
「街を探索するんじゃったな、スマンな引き止めて」
「いえ、それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい」
ドアを開けて街に出る。この国をもっと知らないと助けられるものも助けられないから。