本編3
「私達は憐憫教会っていう名前なの」
「憐憫…どういう意味でその名前を?」
「君の村が焼かれた理由覚えてる?」
焼かれた理由…確かレンジュが言っていたのは俺達の村はこの夢の国の税務官に焼かれたと言っていた。
「俺達の村が税の支払いを嫌って逃げ出したから………」
「そう、この国の税で変わってるものがあるそれはお金でも農作物でもない思い出なの」
「思い出?」
「レン君が幸せだなって感じた記憶ある?」
幸せな記憶…家族を失った今考えると家族とのたわいない日常や幼少期の頃ハルカと遊んだ記憶、そんな日々が思い浮かぶ。
「家族とか幼なじみの記憶ですけど……」
「それをね機械で吸うの」
「吸った後どうするんですか…」
「この国の城壁内に住んでる人は愛情を自分自身で生み出すことが出来ないのだから領地内に住んでいる人を集めて2ヶ月に1回徴収するの」
「愛情が無いと人はどうなるんですか?」
愛情が欠けた人間に今まで出会った事がなかった、寂しくなるとかそういうのだろうか。
「愛情が欠けてすっからかんになった人間はね、簡単に人の物を奪い家族ですら人として見なくなる自分以外都合のいい動物としか見なくなるの」
「奪われた思い出はどうなるんですか」
「薄れて最後には無くなるかな」
「薄れる?」
「例えば君が家族と美味しい物を食べたとするその記憶を吸われると、段々思い出せなくなっていく最初は、何を食べたっけ?から始まり父親は居たっけ?母親は?最後に家族で美味しい物を食べたという記憶そのものが消える」
「城壁外住んでいる人たちも徴収は受けてるんですか!」
「そうだね、徴収と言っても一気に愛情を吸うわけじゃなくて少しずつ吸っていくけどね」
「あの、愛情を吸われ続けた人間は最後どうなるんですか?」
「レン君、それはもう見たでしょ?」
「??」
全く記憶にない、この国に来てまだ1日も経ってないのにそんなの見ただろうか?
「城壁内に来た時君が指さした物あったでしょ?」
「人型のロボット…」
「そう!愛情が抜けた人間の最後は脳味噌をくり抜いてロボットに入れて加工するの」
絶句して言葉も出なかった……人として死ぬ事すら叶わず最後は人以外になってしまうのか。
「家族は何も思わないんですか?」
「みんな愛情吸われて記憶薄れてるからねぇ〜家の中で暴れ回れるよりマシと思うよ」
そりゃそんな国から逃げ出したくなるはずだ、こんな国に居たら大事なものを全て奪われてしまう。
「どうすれば家族とハルカは帰ってきますか?」
本当に聞きたいのはこれだ、正直この話を聞いて全員生きているとは思えない。
「お父さんとお母さんは火事で死んでる可能性は高いけど妹ちゃんとハルカちゃんは生きてるんじゃないかな?」
「なんで分かるんですか!?」
「君年齢は?」
「15歳です」
「妹ちゃんの年齢は?」
「3歳年下なので12歳です」
「子供は感受性が高くて愛情を吸った時に得る幸福感が大人と違ってめちゃくちゃ多いの、でもその分吸える記憶量が小さいから今は何処かに隠されて大事に保護されてるんじゃないかな?」
「まるで豚や鳥を飼ってるみたいだ……」
「それに近いね」
「そんな人達に国にどうやって対抗するんですか……」
魔法が使える訳でもない、喧嘩が強い訳でもない普通の15歳に一体何が出来るんだ。
「だからこれを使うの」
レンジュが取り出したのは拳銃だった、それと弾丸が6発。