冒頭
炎が全て燃やし尽くしながら自分たちが住んでいた家を焼き尽くしている、それだけじゃないこの村の建物というたてもの全てが燃えている、焦げた木材の臭い誰かわからない悲鳴……全てが壊れた今をオレは見つめることしか出来なかった。
「母さん……父さん……サラ」
4人で暮らしていた日常が壊れていく……寡黙な父、口うるさいけど優しい母、喧嘩も多かったが何だかんだ気が合う妹オレは膝をついて自分が住んでいた村が焼けていく姿を見ていることしか出来なかった。
〜3時間前〜
「母さんおはよう」
「おはようの時間は過ぎてもうお昼よ」
「じゃあこんにちは」
朝起きるのが苦手なオレはお昼すぎに起きてしまう
今日の予定は確か森に薪拾いしに行くんだった
「父さんとサラは?」
「父さんは畑仕事、サラは自室で縫い物してるわアンタだけよこの家で何の労働もしてないのは」
「これからするだろ…」
「隣の家のハルカちゃんを見習ったらどうなの、朝早く起きて私達に挨拶して家の手伝いしてたわよ」
「他人は他人オレはオレなんだよ」
ハルカは隣の家に住んでいる幼馴染の様な者だ、小さい時は遊んでいたけど今はあんまり喋る事も無くなってしまった。
「ごちそうさま〜じゃあ薪拾いに行ってくる」
「あんまり森の奥に行くんじゃないよ!」
母さんの言葉を半ば聞き流しながら籠を背負って家から出る、時折近所の人に挨拶しながら村の入口まで歩くと
普段見かけることの無い大人達が数人居る。服装は自分達の着ているものとさして変わらないが胸によく分からないマークみたいなのが入っていた。
「こんにちは〜」
軽く挨拶をしたがこちらを一瞥し無視して視線を戻して会話に戻った。そんなことより薪を拾いに行かないと母さんに怒られてしまう。
雑木林みたいなところで小枝や燃えやすい木の実を探して籠に入れていく、今居る雑木林より奥に行くと湖があるらしいが一人で行くには危ないし用はない。
「そろそろ集まったかな」
かなりの数を拾ったしそろそろ村へ帰ろう、そう思い村の方へ視線を向けると黒い煙が登っていた。
「……ッッ」
籠を捨て村へ走る、何があって火事が起きたか分からないが火を消さないと全部燃えてしまう!
村の中は惨状が拡がっていた。
大人達は殺され誰も火を消すものも居らず、全てが灰になってゆく慌てて自宅の方へ向かうが火の手が凄く中々辿り着けない、ようやく家まで来た頃には炎に包まれておりオレは何も出来なかった。煙を嗅ぎすぎたのだろうかそこでオレの意識は消えた……
目が覚めると知らない場所に居たふかふかのベットの上、辺りを見回すと修道服を来た女性が椅子に座ってうたた寝している。助けてくれたんだろうがここは?
「あの……」
うたた寝しているシスターらしき女性に話しかけると
「……おぅ……うぅ…………」
呻きながら船を漕いでいる…
「すいません」
「……はい!」
目が覚めたのだろうかビックリしながらこっちを見ている。
「ようやく目が覚めたようですね」
「あの……ここはどこですか?あと貴方の名前も」
「ここは教会です、村から近い雑木林の奥に進むと湖があるんですけどご存知です?」
「いえ……母からあまりあの湖には近づくなって」
「大人の人はここに教会がある事は知ってたみたいですね、だから子供を近づけないようにしてたのかな」
そんな事を言いながら考え込むシスター見た目は20代後半、身長は150cmぐらいで髪は金色少し抜けているように見えるそんな女性に見えた。
「自己紹介がまだだったね私の名前はケイジュよろしくね、君の名前は」
「オレの名前は……レンです」
「レン君ね身体の方は?」
「大丈夫です。それより村の方は!」
1番聞きたかった事を聞かないと、あの後村はどうなったのかとか家族は無事なのかハルカも大丈夫なのか色々聞かないと
「落ち着いてレン君、君の住んでいた村はね全部焼け落ちた遺体も全部焼けて誰が誰だか分からない」
「そんな……」
その日村に来ていた怪しい大人達アイツらが全部やったんだ村に住む人間がわざわざ火をつけて皆殺しにする理由が分からないアイツらさえいなければ!
「あの日……胸によく分からないマークをつけていた大人達が居たんですアイツらがオレ達の村を壊したんだ!」
「落ち着いて!確かに犯人はその大人達かもしれないその胸にあるマーク形覚えていない?」
「鳥が羽ばたいているマークだった気がする」
「………………」
俯きながら考えているケイジュを見てこれから自分はどうなるんだろうと考えていた、仇討ちしようにもどこに行ったか分からない奴らを追うには無謀過ぎるしオレには戦う訓練なんてしていない。
「とりあえずレン君はもう少し休もう」
「な、オレはアイツらを探さないと行けないんです!」
「どうやって?その体で?」
腕や足には包帯が巻かれ体を動かす度に節々に痛みが走る、多分火事の中倒れていたせいで全身に軽い火傷があるんだろう。
「君の仕事は体を治すことだよ、マークについては覚えがあるから君が全快してから話すことにする」
「分かりました…………」
本当は今すぐにでもここから出て仇討ちしたいが情報も何もない寧ろ怪我をしている今無理をしている場合じゃない、そう思い今は寝ることにした。
「レン君、ご飯はこの部屋に置いておくからゆっくり治してね」
「ゆっくりじゃダメなんです!早く治さないと」
「早く治す為にもご飯食べて安静にしてね」
そう言ってケイジュは部屋から出ていった、とりあえず今俺に出来ることは体を治すことそればかり考えご飯を食べて寝た。