秋葉原ヲタク白書88 川底軍艦
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第88話です。
今回は、和製SFの古典映画"川底軍艦"のフェスが開かれる中、参加者のホテルの部屋が爆破されます。
裏にパチンコ版"川底軍艦"のテスト台の存在があるコトを突き止めたコンビはフェス最終日に向けて…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 女王ピミコ
「工作員23号!御帰宅するわよっ!」
「ハイ!ピミコ様!」
「おかえりなさいませ!女王様、23号様!」
またまた奇怪なコンビの御帰宅だw
片や純白ケープを纏った古代エジプトの女王様、片や007みたいな情報部員w
恐ろしくチグハグなコスプレでしかも2人共軽くアラ40だけど誰も驚かない。
聖地の御屋敷は懐が深いのだw
「ピミコ!おかえりなさい、久しぶりね。早く入って!」
「ミユリ!ただいま。秋葉原公園で開催中の"川底軍艦祭り"が大盛況!その帰路にテリィたんに謁見を、と思い立った次第ょ」
「テリィ様は御出張中。お昼間はサラリーマンをされてるのょ。まさか"川底軍艦"をお忘れとは思えナイけど」
"川底軍艦"は、太平洋戦争末期、少数の軍事科学者が空襲を逃れ、神田川底で"川底軍艦"を建造スルと逝う和製SFの古典映画だ。
あ、ココは、僕の推し(ているメイドである)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷。
轟天建武隊基地の上空に輝くであろう星座に因み"南十字星バー"とも呼ばれる。
「じゃあ"余"を避けてるのかしらw去年のフェスでの出来事は恨んでないと申したばかりだけども」
「テリィ様は、わかってらっしゃるわ」
「しかし、この夏が来てから会えていない。事情があるなら良いが、彼は元気?"余"は、知りたいわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
深夜の駅近ホテル"24"314号室。
駆けつけた支配人が、ドアを叩くw
「イディ様!314号室のイディ様!ガス漏れのような匂いがするとの通報がありまして!大丈夫ですか?」
「…」
「おられませんか?今から携帯におかけしますよっ!通じなければ、マスターキーで中に入らせて頂きますのでっ!」
ほどなく室内で携帯の着メロが流れる。
その瞬間、くぐもった爆発音が起こり…
ドアが吹っ飛ぶ!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
部屋は無人で、可哀想な支配人が吹き飛ばされた他ケガ人はナシ。
万世橋の現場検証が入る中、重要参考人としてピミコ女王が浮上。
どうやら、314号室を借りてたイディの元カノらしいw女王様、意外に俗っぽいw
事情聴取は、彼女の希望でナゼだか御屋敷で行われるコトになり…迷惑してる←
「信じられぬ。イディが"余"を追ってアキバまで押しかけて来るなど。しかも、爆発事故で世を乱し、姿をくらますとは」
「SNSを拝見スルと、お2人は去年まで交際されていたようですが」
「まさか"余"が爆発に関与したと…」
女王様は気色ばみ新橋鮫は慌てるw
あ、新橋鮫は万世橋の敏腕刑事だ。
「まぁ今は、そのぉ、まだ事情を聞いて回ってる段階ですので…」
「ならば良い。確かに、イディ氏と"余"との付き合いは2年近くにおよぶ」
「出会いは?」
「大学院である。イディ氏は、宇宙考古学を専攻されたが卒業後に苦労され、ソレが遠因となり、遺憾ながら"余"との関係も破局となった。かくも堅く愛を誓い合った仲ではあったのだが」
「そーゆー"余"は、卒業後は何になられたのですか?」
「ムュウ帝国の女王」
「…あ、そうwつまり"余"は未だ未練タラタラってコトですね?昨夜はドチラに?」
「旧友ミユリと、この御屋敷にて団欒を楽しんだ…実はテリィたんを待っていたのだが、最後まで現れなかったのだ」
「え?テリィに何か用事?ま、まさか、アンタ"も"奴の元カノなのか?!」
「いや…遺憾ながらソコまで至っていナイ。"余"は望んだのだが…ただただ、彼に逢いたくて。今宵は会えるだろうか?」
「おい!ソレで事情聴取をココにしたのか?あのな。二兎追う者は一兎も得ズ!」
「グサッ」
鮫の旦那が、急に敬語の使用を停止w
「イディの部屋に、考古学の発掘で使うコテがあり"余"の名前が刻印されていたンだが?」
「10日ほど前、イディ氏が訪ねて来て"余"の道具を貸して欲しいと」
「何に使うか聞いたか?」
「発掘だ。詳しい話は聞かなかったが、氏は大変に張り切っていた。何かスゴいモノを掘り出すとの気概を感じた」
「歴史的な発見?それとも金?何かの競争に巻き込まれた可能性はナイか?」
「関知しない」
「イディに貸したモノは?」
「杭にバケツにツルハシ、シャベルと…あとトラックも」
「トラック?」
「氏は、トラックを所有せズ、道具や発掘物を運ぶのに使いたいと申しておった」
「そのトラックは今、何処に」
「知らぬ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
トラックはホテル"24"の前に違法駐車w
路上駐車は見逃すとして問題は過剰積載←
女王から下賜された割には2人乗りの軽トラだったが…コレがゴミ車w荷台にも助手席にも目一杯に生活系ゴミを過積載してるのだw
「コ、コレはホントに発掘の成果なの?自販機のルートセールスの産物では?少なくとも"余"が貸した杭にバケツにツルハシ、シャベルに考古学用コテは不要であろう」
「そうとも言い切れナイ。ココにあるのは60年代から70年代初頭のゴミだ。イディは、何らかの情報に基づき、何処ぞの埋立場から掘り返して来たに違いナイ」
「テリィたん!」
横須賀出張から戻り、少し出遅れた僕は、電気街口の広場、通称"タイムズスクエア"の"ゴミ車"前で、やっとみんなと合流スル。
貸しのある新橋鮫には挙手で挨拶。
ピミコの女王コスプレにドン引き。
ミユリさんは…不在だから御屋敷?
「例のホテルの爆発、隣人はガス漏れと逝ったンだっけ?」
「あぁ。ガスコンロの故障だと思ったらしいが、ホテルはオール電化だ。どうやら、放火目的で撒かれたガソリンと混同したようだ」
「おいおい。匂いは全然違うゼ」
「誰もがテリィみたいに戌年ってワケじゃない。で、消えたイディの身辺も洗ってみたが、特に前科も、借金も、恨まれてた様子もナシ。元カノの女王様のアリバイも裏が取れてる」
「無礼な!ピミコ女王様の御前であるぞ!」
炎天下、黒い背広+ネクタイ+サングラスと逝うMIBモードの工作員23号が吠える。
コイツは何者ナンだろう?ずっとピミコに付き従ってるが…何かのプレイ中なのか?
まさか女王様プレイ?笑
「しかし…コレでは"余"のトラックに臭いが染み付いてしまうではないか!」
「だょなー。このゴミ、バケツ10杯分はアルかな。可哀想に(トラックが)」
「あぁ。我が元カレ殿のデカい発掘とは、ゴミであったのかw」
「でも、ゴミ学って知ってるか?ゴミから異文化を学ぶ考古学研究だ。ゴミは、人々の暮らしを鮮やかに映し出す投影機だ。三内丸山遺跡の縄文人から、大江戸八百八町の庶民も然り。でも、ピミコの話から察するに、イディは異文化を学ぶと逝うより、何かを探してるみたいだな。何かお宝?」
「ゴミのように捨てられたお宝?」
「お宝もゴミも、人によって境界はサマザマだ。ガラス玉やカメラは、ヴィンテージと逝えば、誰かがソコソコ金を払うから」
僕は、ゴミの中から雑誌の切れ端を摘む。
懐かしい"OHモーレツ!"のグラビアw
「え?テリィたん、まさか"推し変"?」
「いや、今さら…興味がアルのはミニスカじゃナイ。このゴミは恐らく1969年。その後、捨てられ埋立地へ運ばれてる」
「私の元カレが、その埋立地を掘ってたワケね?清掃局に聞けば、この時期のゴミが埋められた場所とかワカルかも」
「発掘場所がわかれば、お宝もワカルかも」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
秋葉原公園は、掘割運河を埋め立て昔あった段差もバリアフリー化、樹木も伐採して、最近では、よくフェス会場とかにも使われる。
で、今週は年に1度の"川底軍艦祭り"が開催されている。
全国の"川底軍艦"ファンがコスプレして大集合のお祭り。
ピミコ女王と工作員23号も、実は"川底軍艦"の登場人物。
だから、奇抜に見える2人も秋葉原公園では普通に見える。
何しろ女王も工作員も他に何人もいるのだw
「しかし、まさかイディの発掘場所が秋葉原公園だったとはw」
「確かに、あの発掘道具では、アスファルトやコンクリートは掘れないからな。つまり、最初から探すべきは、土のある場所だったワケだ」
「でも、イベント会場の発掘許可が良く出たなぁ。まさか…やや?あれ?」
"川底軍艦祭り"で賑わう公園の端の方が黄色い工事用のポールで仕切られてる。
仮設テントの裏なので目立たない場所ながら既に大穴が開いて掘り返されている。
しかも…今も誰かが掘っている?
第2章 発掘されたイディ
掘ってたのは、イディw
早速彼を"発掘"スル←
「やや!ピミコ!まだ女王のコスプレなんかしてンのか?もう40だろ?周りのコトも考えろ」
「ヒ、ヒドイ。みんな素敵って逝ってくれるのに…マンダの生贄にせよっ!」
「真実を逝ったマデだ。とにかく、真実しか逝えないヲレの前には、もう現れないでくれ。俺は、何か悪事を働いてるワケじゃナイ」
やや?追っかけてるのはピミコの方なのか?
何か聞いてた話と違うがソンなコトよりも…
「君がイディか?大変だ!君のホテルの部屋が何者かに爆破されたぞ!身に覚えは?特に女関係は包み隠さズ話せ」←
「ええっ?!ホテルの部屋が?じゃ万一部屋にいれば今頃俺は…何故だっ?何も悪いコトなんかしてないぞ!」
「何度も逝うと怪しいな。フェス会場に穴を掘ってるだけで充分怪しいのでは?」
「いや。コレは"川底軍艦"のハイライト"ムュウ帝国心臓部への挺進攻撃シーン再現イベント"として、主催者経由で許可を取ってアル。…実は"マン団"の連中にも急かされててw」
「"マン団"?」
「"川底軍艦ネット"の掲示板で知り合った最低な連中だ」
「念のために聞くが、ホテルが爆破された昨日の深夜12時から2時の間どこにいた?」
「中野のゲーセンでゲーム大会があって朝6時までいた。模様を写メ付きでツイートした奴がいる。ググれ」
「確認する。ソレはソウと秋葉原公園の穴の中で何を探してた?」
「パチンコ台だょ。君達も探してルンだろ?"ぱちんこ川底軍艦ターボDXフィーバー"だょ!」
すると、女王様が恋する乙女の目で叫ぶ。
「"ぱちんこ川底軍艦"!我が青春の台よっ!"余"も昔、その台で打ってたわ!」
「俺もさ!その"川底軍艦"を初当たり50%でSTに突入させるV-ST機にしたのが"川底軍艦ターボDXフィーバー"だ。このシリーズなしに平成パチンコ名機のラインナップは語れない」
「その暇つぶし台がなきゃ今頃、地球温暖化も解決してンじゃナイの?」
「確かに"ぱちんこ川底軍艦ターボDXフィーバー"は史上最低の台だった。まさに"最低軍艦"だ」
「笑える。しかし、どういう意味?」
「1970年のクリスマスに大々的にリリースされるはずがサンプル台が酷評されてキャンセル殺到。メーカーは会社存続の危機と考え、大痛手を被る前に出荷を中止し、テスト台を廃棄した」
「つまり、廃棄されるほど駄作のパチンコをみんなで探してるのか?何で?」
「駄作のお蔵入りはよくあるが、テスト台を葬るほどの駄作ともなれば、もはや伝説となる」
「そんなモンか?ソレも"最低軍艦"効果なのか…」
「我々"SFパチンカー"の間では、何十年も語り継がれている。いわば聖杯ならぬ聖台なのだょフフフ」
「だから、数年おきに、必ず台を探そうって奴が現れるワケか」
「YES。常に誰かが台の廃棄場所を突き止めようとしてる。今年は通称"マン団"と呼ばれる連中がハマって掲示板で経過報告を絶やさない。ソレがあと1歩って書き込み以来沈黙したので…コッチも急いで掘り返してルンだ」
「それで?!」
「あの穴の中に入ったならわかるだろう。確かに80年頃のゴミは埋まってた。良く探すとゲーム機本体やリコール騒ぎを起こしたコントローラーとかもアル。でも、小物ばかりで台はなかった」
「誰かが先に掘り当てたのかな?だとしたら相当なマニアだ。金目当てって線はナイか?」
「ある。何しろ世界で1台しか無いテスト台だ。もし伝説通りに埋まってたら数百万円にもなるだろう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
お金の絡む話だw
何となく胸騒ぎがして、その勢いで区立郷土資料館に逝く。
資料館の学芸員トレジは、この手の"産業遺物"に詳しい。
…ナゼなら資料館の所蔵品をコッソリ、ネットで売り飛ばしては結婚資金にしてるからw
「あら。テリィたん、お久しぶり!ミユリ姉様はお元気?…あら、あらら?夏コミの帰り?」
オカッパ頭の学芸員は、僕の後に続く女王様、工作員、考古学者を見て驚く。
「あぁ、そーなの?"最低軍艦"ヲタクの面々なワケね?サスガ濃いわw穴のコトは聞いてる。後でちゃんと現状復帰してね」
「"川底軍艦ネット"の掲示板は見てるか?」
「モチロンょ。ヲタク担当学芸員のタシナミだもの」
「コチラが掲示板の常連、イディだ」
「ええっ?!」
トレジは、まるでお盆で帰ってきた御先祖様を見るような目つきでイディをガン見スル。
その何かを値踏みするかのような鋭い視線に圧力でも感じたか、思わず後ずさるイディw
「"マン団"の人達と何度もやりとりをしてたわね?正確には"マン団"から一方的な情報提供を受けてた」
「違う。俺と"マン団"の立場は、あくまでアーバンだった…」
「アーバン?」
「あ、イーブンだたw」
「とにかく!貴方は"マン団"からの情報提供を受けて秋葉原公園を掘ったのょね?」
「うーん情報提供?せめて情報交換とか逝えナイかな?俺にだって立場が…」
「ふふん」
あっさりトレジに鼻で笑われるイディ。
トレジって"マン団"の関係者なのか?
念のために聞いとこう。
「昨夜の午前2時ごろ何処に?」
「家にいたわ。ひとりで」
「イディは、掲示板仲間の"マン団"に世話になったみたいだ…ん?何がおかしい?」
「少しね」
「どのあたりが?」
「的外れなのょ。何もかも。ねぇ。テリィたん」
限りなくイヤーな予感w
「後で会えないかな?ふ・た・り・で」
「絶・対・い・や・だ・ょ」
「お・願・い」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
しかし、衆寡敵せズ…
女王と工作員と考古学者は"川底軍艦祭りウェルカムパーティ"に逝くコトになり退出。
で、彼等が消えるや、トレジがヤタラと馴れ馴れしくなりチャッカリ腕とか絡めてくる。
「お見せしちゃう」
えっ?!思わズ何をお見せられちゃう?のかと期待は荒れ野を駆け巡る!
しかし、お約束の"服がパラリ"はなく、第23号資料庫なる倉庫に入り…
アッサリ"川底軍艦ターボDXフィーバー"と御対面wコ、コレが?
「あのさ。ハッキリ逝っとくけど、お騒がせの原因と思しきモノを持ってるとなったら、色々と怪しまれるだけだょ?」
「大丈夫。資料館のオヤジどもは、みんな天下りの腰掛けばかりだから、コイツの価値なんてわかりっこナイ。しかも、コレを掘り当てたのは私なの。ソレも6年前。別の埋立地、東京港中央防波堤外その1地区でね」
「証拠は?」
「約100時間分のビデオ。発掘までを追ったドキュメンタリーに編集してアル。その内に、国営放送の"新日本紀行"に売りつけて、ついでに私も出演スルの!」
「ええっ?"新日本紀行"って未だやってるの?…ってか、ソレじゃイディや正体不明の"マン団"のみなさんは?何か、せっかく情報提供だか交換だかに、日々勤しんでたのに」
「うーんヲタクのやるコトは良くわからないわ。大方、間違った場所でも教え合ってたンじゃナイの?クスクス」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜、ミユリさんとアフターする。
神田明神下のファミレスで作戦会議。
「で、その後、彼女の動画を見せられてさ。
全部ウラが取れた。6年間隠し持ってた台に発掘の許可証。雇った作業員との記念写真や守秘契約書も」
「隠し持ってた割には徹底してるのですね」
「本気で"新日本紀行"に出たかったンだろうなー。田舎の御両親とかも見るだろーしね」
「その内に、70年代の幻のテスト台と称して1本1万ドル近くで売るのでしょう」
「でも、そんな高価な台をなぜ寝かしておくのかな?」
「希少価値を保つためでしょうか?ゲームソフトならともかくパチンコとなると買い手はグッと少なくなるでしょうから」
「マーケットもアジア限定になるしなー。だから、未発見のお宝って伝説を煽りに煽って必死に市場価値を高めてるワケか」
「どうやら、遺恨とかの線はなさそうですね。強盗も考えましたが、考えてみたら、未だ何も盗まれてませんしね」
「そもそも、今回は誰からも何もリクエストされて無いンだょなw」
「唯一、事件性がアルのはホテル爆破だけですが、まぁアレは新橋鮫さんの範疇ですモノね」
第3章 襲撃!ムュウ帝国人
翌日、昼間は誰もいない御屋敷のカウンターに資料をズラリと並べて読み込みスル。
オヤツの差し入れで、いつもよりかなーり早く出勤して来たミユリさんが顔を出す。
「ここにいるょ。書類の山の奥だ」
「コレ全部、清掃局からですか?お宝を捨ててた会社は見つかりましたか?」
「うん。テスト台とは言え、パチンコ台は立派な産業廃棄物だから、捨てるのにも色々手続きが必要ナンだ。関係書類を漁ってる」
「で?」
「リガンって社名を探してルンだけど、何度か出て来た。"川底軍艦ターボDXフィーバー"のメーカーで昨夜のファミレスの近くナンだけど…逝ってみる?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
やや?リガン社だと思ったら?カラザ社?
「伺いますが、ココはリガン社では?」
「2017年に弊社が買収したんですが、問い合わせの窓口は今もコチラで結構です。それで、ご用件は?」
「個室で話せませんか?」
狭い応接室で経緯を説明。
「そんなテスト台にヲタクな価値が?にわかには信じられません。お引き取りを…」
「しかも、中央防波堤外埋立地から掘り出した土をコロナ対策の一環で再検査したトコロ、高レベルのダイオキシンが検出されたのです(大ウソw)」
「弊社ではなくリガン社です。買収以前の事はカラザ社の責任ではありません」
「まさか。権利義務は継承でしょう?」
「法的な事実です。ソレに、実はリガン社にも責任は無い」
「と逝うと?」
「リガン社は、産業廃棄物の処理業者を適正料金で雇っています。その業者が無害な廃棄物だと偽って不法投棄したまで。従って、マスマス弊社とは無関係です」
「アラアラ。廃棄物って、百鬼夜行の暗黒世界だ」
「因みに、裁判所も我々の主張を認める傾向にあります。実は私の着任後、同様の3件でいずれも責任を負っていません。判例を見ますか?1件では区が除染費用を持ち、もう1件では土地所有者が負担をするとの判決です」
「埋め立て後の土地を買った人が?」
「不公平にお感じカモしれませんが、ソレが法律の定めです。中古車と同じで、買ってしまえば、後は欠陥も含めて全て自己責任なのです」
「ソレで、区は穴を早く埋めたがってたのか。やや?コチラは?」
担当が持参した"資料"に数名の顔写真。
「当時のリガン社の技術者です」
この顔は…若き日の工作員23号だw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜は、いよいよ"川底軍艦祭り"も最終日となり、賑やかに後夜祭が盛り上がる。
それぞれのブースも畳まれ参加者全員がコスプレのママ、アルコールも入って無礼講。
そして、恒例の"再現イベント"が始まる。
僕とイディはカメラマンと助手、ピミコはモデル、ミユリさんはスタイリスト。
工作員23号と"マン団"のみなさんは、本部テントの中で最後のコスプレ準備。
和やかな歓談が続く秋葉原公園の真ん中で、突如寸劇スタート!
日本映画史上にも残る有名な"川底軍艦"の冒頭シーンの再現!
「ねぇまだ?」
真夏の夜、蒸し暑い都市の熱風吹く中、派手な豹柄ガウンを羽織ったピミコが登場スル。
参加者が、おっ始まった!って感じでススッと場を開けるとカメラマン役の僕のセリフ。
「何だょ。まだまだってうっせぇぞ」
「だってサ、私、コレからTVのリハーサルがあるンですモノ」
「そーゆーのをな"神風タレント"って逝うんだ。おい、ボサッとしてねぇで手伝いやがれ」
カメラの三脚をイジりながら、僕は"助手"のイディに"命令"スル。実に気持ち良い←
「はいはい」
「んもー。早くしてよ」
「わかってるよ」
豹柄ガウンのピミコにもイジられて、満更でもなさげなイディ。イソイソと撮影の準備。
「じゃあ、洋酒のPR写真の撮影を始めよう!」
「はい。センセー、お願いします!」
「よし!さぁポーズだ!」
僕が顎でしゃくると、ピミコが中央へしゃなりしゃなりと躍り出る。
そして、豹柄ガウンをパラリと足元に落とすと…下は豹柄ビキニだ!
途端に輪になった観衆から"おおぉ"と大地を揺るがすような、低いドヨメキが起こる。
続いて、お約束シーンに安堵したのか口笛、指笛、続いて一斉に拍手喝采が沸き起こる!
「ピミコ!ココは真夏のワイキキだ!」
「夜風が涼しい感じ、頼むょ!」
「ヘ、ヘクション」
本編では、真冬の設定なのでココでピミコは派手にクシャミしアラ40のバストを揺らすw
お約束シーンの連続に居並ぶ"川底軍艦"マニアは熱狂、マニア以外は生唾を飲み込む←
ピミコ、女王コスプレより絶対ウケてるw
「センセ!寒いンだから早くして!あ…」
「どーしたピミコ。スリラーもんじゃねぇんだぞ!」
「キャー!」
次は古今東西のスリラー映画で定番"ビキニ美女、恐怖の余りに絶叫"のシーンだ!
そして、彼女は何かを指差し悲鳴を上げて…あ、あれ僕?僕に飛びつく?違うだろw
ガウン片手のミユリさんの厳しい視線と共に僕の胸へと駆け込むピミコが指差す先には…
えっと秋葉原公園は、掘割を埋め立てて出来たンだけど、昔の水際線辺りに工作員23号と"マン団"のみなさんがスタンバイしてる。
そして、彼等は全身をアルミホイルで巻き、メタリックなアマゾン半魚人風のコスプレ。
その彼等が、一斉に水中から現れるかのような動作でピミコに襲いかかる!ピミコ絶叫!
僕は、素早く彼等の前に三脚を立てて立ち塞がり、カメラのフラッシュを何度も焚く。
余りの眩しさに幻惑されたのか、アルミホイル半魚人が両目を覆いながら海に落ちる…
まぁ後ろは海じゃないから仰け反るだけw
でも、ソレだけで観客にはもう大ウケだ!
さらに神田明神通りから突如自転車が飛び込んで来る!
よく見ると、自転車の片面には東京無線タクシーの絵w
そのまま、海へとダイブするが如く、会場を横切りハデに本部テントへと突っ込む!
本編と同じ展開に熱狂したファンが僕達を取り囲み、会場の興奮は最高潮に達する!
間髪入れず、会場に流れるのはエジプトとも南国ともつかヌ無音階系の妙なる調べ。
おおっ劇中曲"ムュウ帝国の祈り"だ!
その場のコスプレ男女が一斉に集団ダンスを踊り出し深夜まで踊り狂うのであった。
第4章 万能戦艦ょ永遠に
さて、今回も話が流れるママにピースが出揃ったような、足りないようなw
とりあえず、ジグソーパズルの完成を目指し全体の絵を組み立ててみよう。
先ず"マン団"だが、恐らく何処ぞの道楽コレクターに雇われたヲタク集団と思われる。
彼等の使命は、工作員28号の動きをマークし彼がテスト台を発見したら横取りするコト←
恐らく、道楽コレクターは、28号がテスト台の技術者であるコトを何処かで聞いたのだ。
そして、28号自身も技術者だった過去を隠しピミコの近くに身を潜めて情報収集に励む。
しかし、既にテスト台はトレジの手にw
一方、トレジはトレジで6年間、ひたすら"川底軍艦"の掲示板を眺めながら、テスト台が最高値をつける日を夢見てきたのだろう。
しかし、その日はついに訪れズ恋人ハンタとの未来も迷路に迷い込んでしまったようだ。
恋の迷路と逝えばピミコだ。夢を追い夢を食べて生きるイディとの恋に明日はあるのか?
が、煩悩の末の豹柄ビキニが"美し過ぎるアラ40"に選ばれ新たなる扉が開く。
女王口調に豹柄ビキニと逝う"ギャップ萌え"に新たなる活路は見出せるのか。
しかし、彼女は"ギャップ萌え"がイディの新たなる煩悩となった事実を未だ知らない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"川底軍艦祭り"翌日の御屋敷。
僕はスマホゲームでピンボールw
「あら?テリィ様、何ゴト?」
「脳を罰してルンだ」
「まぁ。テリィ様の脳がどんな悪さを?妄想し過ぎとか?豹柄ビキニ?」
「…う、うーん何か最近、働きが鈍いンだ。ミユリさんの脳はどう?」
「ひらめいてますょ。"ぱちんこ川底軍艦ターボDXフィーバー"メーカーのリガン社を買収したカラザ社ですが、4年前に自社ビルが火事で全焼し、事故と認定されたので、保険で何千万も手にしてます」
「ええっ?意図的な放火だと?」
「神田消防の御主人様に伺うと、この手の保険金詐欺は珍しくナイようです。保険金が入った後でカラザ社は本社ビルを新築、リガン社を買収しています」
「へえぇ」
「で、未だ犯人の捕まらないホテルの爆破犯ですが、隣室の方は、最初ガソリンじゃなくガスの匂いがしたと仰ったそうですね?犯人はガス漏れに見せようとしたけど、途中でガソリンに切り替え、多分証拠となる何かを燃やしたのではナイでしょうか。カラザ社のビル火災は緻密に遂行され、証拠は何も出なかったのですが、このホテル爆破は、ヤタラとアチコチ尻尾が覗いて匂います」
うーん。ソンなコトでしたかw
こりゃ格の違いを見せなきゃ。
「僕の方も、工作員23号に聞いた話だけど…例の"マン団"の人数を後夜祭の後で確認したら、1人多かったンだって」
「え?何ですか、ソレ?」
「しかも、最後の1人が全員コスプレを脱いだ後も、頑としてアルミホイルを取らなかったンだってさ」
「ま、まさか…実は首がナイとか?夏の怪談系の都市伝説でしょうか?私、苦手ナンですけど」
「あはは。しかも、重症コロナみたいにスゴい高熱で、アルミホイルから蒸気が立ち昇る温泉人間状態だったそーだ。イヤ、コレ、ホントの話だから」
「いやーん。後で豹柄ビキニになるので、もう許してください。いやーん、テリィ様」
「だ・か・ら!あのホテル爆発は"強力火薬"によるモノだ、って話さ」
"強力火薬"は"川底軍艦"に登場スル兵器で、巨石文明を築いた古代人が、巨石の切り出しに使ったとされる、一種の架空爆薬だ。
「そうですか。では、テリィ様は"マン団"の中にリアルなムュウ帝国人が1人混ざっていたと仰るのですか?」
「そして、今も神田川の底に"川底軍艦"が眠っているのだ、と」
「あらあら…はい、わかりました!ところで!私は今宵のアフターに、期間限定の"自分に御褒美パフェ"を食べたいなって思います!」
「ええっ?あのピンクのココナツパウダーがかかってる奴?」
「はい」
「ピンクのココナツって自然界には存在しないンだけど」
「はい」
「ヲタクは、深夜に糖分を欲する生き物だからなー。砂糖をまぶせば石でも食べる。僕も、もっと自己チューにならなきゃな」
「ヲタクになりたければ、先ず自己チューになりましょう。自己チューになれないのならヲタクになるのは諦めましょう」
僕は、ため息をつく。
「"御褒美パフェ"で、お気が晴れるのなら」
「はい。でも、先ず試してみませんと」
「メイド長のお気に召すママに」
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"SFフェス"をネタに、和製SF映画のファン群像に加え、拝金主義の郷土資料館の学芸員、パチンコメーカーの技術者、謎のスポンサーに雇われたヲタク集団やホテル支配人などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、戦後最長政権の辞任表明直後の秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




