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マリオネット

作者: みーたん
掲載日:2020/04/15

 真夜中を告げる鐘とともに、パイプオルガンが少しぎこちない練習曲を奏でています。祈るような音色は月夜を砕き、闇は無数にきらめく透明な欠片となって、再び地上へと降り注ぐのでした。

 街から遠く離れた森の奥で、静かに古城が佇んでいます。長い年月が経つうちに、そのお城で大切に育てられていたお姫さまは、木製のマリオネットへと変わっていきました。そして、古物を扱う商人たちの手を経て、そばかすの少女の家の屋根裏部屋へとたどり着き、そっとしまわれていました。

 少女は家の中を探検している最中に、偶然、その人形を見つけました。少し色褪せたモーブ色のドレスをまとう、長い金色の巻き毛をしたマリオネットです。少女はマリオネットの手足を動かしてみることにしました。もちろん、はじめから上手には動かせませんでしたが、それでも、人形の身体が動くと、嬉しくてたまりませんでした。それは、マリオネットのほうにとっても同じことでしたので、喜びが糸を伝い、少女の心に届くのが分かりました。

 少女は人形をもっと自在に動かしたいと、友達どころか孤独さえも忘れて、マリオネットに夢中になっていきました。このマリオネットはまさに、騎士たちの物語に登場するお姫さまであり、充分に思い通りの動きができるようになったのちも、舞台上で悲恋という耐えがたい幸福を味わうのです。どんな騎士の剣にかかっても、お姫さまを操っている糸が切れることはありませんでした。

 そんな少女も、大人になっていきます。しかしながら、時を経るにつれて、村の掟によって、がんじがらめになっていく自分を目の当たりにするのでした。少女にとっては、あらゆるお姫さまになることのできる、この人形こそが自由の象徴だったのです。マリオネットのほうも、与えられた自由に満足していました。なぜなら、お姫さまとして生きる以外の幸せを考えることができなかったからです。

 やがて、少女のそばかすはそのままに、老婆になっていくのですが、それでも決して人形を手放すことはありませんでした。老婆にとって、マリオネットはもう一つの人生になっていたからです。子供の頃の夢の続きを、ずっと歩き続けていたお姫さまだったからです。いつも人形を連れていたために、老婆は村人たちからすっかりのけ者にされていましたが、ずっと人形といる限り、どんな仕打ちを受けようとも、生き続けて耐えることができました。

 臨終を迎えても老婆が人形とともにいたのを見て、村から遣わされた人々は一同苦笑いを浮かべましたが、それでも憐れに思われたので、人形も一緒に棺に入れることにしました。二人の旅はようやく終わりを迎えたのです。マリオネットが動くことは、もう二度とありませんでした。

1200字程度の幻想的で耽美な短編小説を書いております。よろしければ、他の作品ものぞいてみてください。

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