第2話 プロローグ ドラゴンマニアは眠りたい
すいません!
今後の話をスマートに繋げるために、割り込み投稿しました。
大筋には関わりませんが、プロローグとしてお楽しみ下さい。
くそぅ……あんだけ解毒薬を飲んだのに、ギンギンが収まらなくて全く寝付けない。
あ、誤解の無いように言っておきますが、ギンギンに目が冴えて寝られないんですからね。
目の他にどこがギンギンになるのか? って、そんなの勝手に深読みすればいいじゃないですか。
はぁ……僕はいったい誰に向かって文句を言っているのだろう?
いよいよ睡眠不足で幻聴でも聞こえるようになったのか?
それともワイワームの心臓を漬け込んだ酒には、そんな危ない副作用まであるというのだろうか?
まったく……アルコールの力を借りる為とはいえ、あんな怪しい酒に手を出すんじゃなかった。
おかげでギンギンギラギラになってしまった勢いで、シャードについての報告書を丸々書き上げてしまったではないか。
でも、まあ、これはこれで室長から「仕事が速いですね」って褒めてもらえそうだけど、そろそろ寝ないと本気で明日がキツイ。
「ぎゃっはっはー! 馬鹿だなヴィヴィは!」
「違うわよ~ヴェイロンが間違ってんのよ~」
しかし、あの二人はいつまで酒盛りを続ける気なのだろう? まだ笑い声が聞こえてくるぞ。
時計を見ると深夜の2時を指していた。
驚いた。鍋パーティーから5時間も経っているじゃないか。
眠気でグラグラし始めたイーリスが寝室に引っ込んだ後、ヴェイロンとヴィヴィの二人して「大人ターイム!」とか訳の分からん事を言い出して酒盛りを始めてから5時間経ったということだ。
お酒って、そんなに続けて飲めるものなのか? 酒盛りを断っておいて本当に良かった。
とはいえ、このまま寝ないでいたら、酒盛りしていたのと変わらないくらいに明日のコンディションに響く。
余計な事は考えないで寝よう寝よう。
……僕の枕って、こんな感じだったっけ? それに、ベッドはこんなにギィギィ軋んでいたっけ?
ああ、もう! こうなったらベタだけど羊でも数えるか。
いや、羊なんて軟弱な生物の数を数えてどうするロディ?
ここは生命の頂点たるドラゴンの数を数えようではないか。
レッドドラゴンが1匹。ブルードラゴンが2匹。グリーンドラゴンが3匹。イエロードラゴンが4匹……
*
どこまで数えた頃だろうか。
キィイ、と小さな音を立てて、部屋の扉が開く音が聞こえた。
僕は寝たふりをしながら、枕の下に忍ばせた短剣を探った。「身を守る為にお使い下さい」と、育ての親から渡された業物だ。
警備員が夜通し巡回している魔導院の男子寮とは違い、ここはセキュリティが皆無の民家。いつ襲われてもおかしくな――――
「おぶっ!」
いきなり何者かが僕のベッドに、いや、正確にいえば僕の身体の上に何者かが飛び込んできた!
酒くさっ! 香水くさっ! いったい誰だっ!?
「うう~ん、あなた、だれ~?」
「それはこっちのセリフだ! お前こそ誰だ!」
「あ~その声はロディ君だ~」
常夜灯から漏れる仄かな明かりの中で目を凝らすと、僕の上で馬乗りになっている人物のシルエットが浮かび上がった。
「なんでヴィヴィさんが僕の部屋に!?」
「あら~夜這いなんてお姉さん嬉しいわ~」
「ちっ、違います! 断じて違います! って、何で服を脱ぐ!?」
「脱がない方が好きなの~? やだ~マニアック~」
「誰がマニアックだ!? って、ちょっ、どこ触ってるんですか!?」
「ほらほら~ここが良いんだろ~」
「や、やめて! 初めては好きな人って決めているんです!」
「減るもんじゃあねえだろうがよ~大人しくして天井のシミでも数えてな~」
「けっ、けだものっ!!」
貞操を守る為に必死で抵抗していると、僕の寝巻を脱がしに掛かっていたヴィヴィの動きが前触れもなく止まった。
「あ、あの、ヴィヴィさん?」
あまりにも突然だったので、心配になって声を掛ける。
「どうしたんですか?」
「ロディ君……わ、わたし……」
「あの、ヴィヴィさん、もしかして?」
「ぎもぢわるい」
「やっぱり」
とりあえずトイレ行きましょ、トイレ!
ベッドに倒れこんだヴィヴィを抱え上げようとしたが、その一糸まとわぬ、あられもない姿に触れることが出来ない!
ど、どうするロディ!? 打開策を考えろ!!
「いまヴェイロンさんを呼んできますから!」
これが今の僕に出来る最善策。どうか、どうか耐えて下さい。
「……ロディ君、いままでありがとう」
「ヴィヴィさん!? 諦めちゃダメだ!」
「本当に……ごめん、ね」
「ぼっ、僕のベッド――――!!」




