第1話 プロローグ ドラゴンマニアは語りたい
久々に書いてみました。
僕はドラゴンが好きだ。
レッドドラゴンが好きだブルードラゴンが好きだグリーンドラゴンが好きだイエロードラゴンが好きだブロンズドラゴンが好きだアイアンドラゴンが好きだシルバードラゴンが好きだ希少種たるゴールドドラゴンには畏敬の念すら抱いている。
亜竜種だって、もちろん好きだ。
ワイバーンも好きだがワイアームも好きだしサーペントも好きだがシーサーペントはもっと好きだ。
「大人になったら何になりたいかな?」
って聞かれたら、即座に「ドラゴン!」って答えるくらいに、子供の頃からドラゴンが好きなんだ。
そんなドラゴン大好きな僕がドラゴン討伐を至上目的とする職場にスカウトされるとは……
やっぱり分かっている人は分かってるんだな、って感心したもんだよ。
「好きなのに、どうしてドラゴンを殺すの?」
人によっては首を捻るような話だと思うよ。実際によく聞かれるし。
ま、そんな愚問にはね、魚釣りに例えて答えることにしているんだ。
釣り人は魚が憎くて釣っているわけじゃないし、ましてや殺す事が目的で魚を釣る人なんていない。
むしろ、釣り人は魚に感謝や尊敬の念すら抱いて釣りに臨む。
大漁際や慰霊祭は、その最たるものだよね。
それにほら、『池の主』とか『川の主』なんて、魚に尊称を与えたりもするだろう。
魚は時として、王や神のように称えられるんだ。ドラゴンもまた然り。
どうだい? 僕が言いたいこと、少しは分かった貰えただろうか?
釣りの目的は食べる為や売ってお金に換えたりと、人によってそれぞれだけど、釣り人は魚が好きだからこそ魚釣りが好きなんだ。
でも、魚だってそう簡単に釣られるのを待っているわけじゃない。
ひとつ、例え話をしようか。
ここに初めて釣りに挑戦する人がいるとします。
魚を釣りたい。魚を釣るためには釣り竿が必要だ。
さあ、竿を手に入れたぞ。当然、釣り針も付けた。
どれ、水面に糸を垂らしてみよう。ところが待てど暮らせど魚が釣れない。
何故だ! どうして釣れないんだ!?
そう、針に釣餌を付けていなかったんだ。ここで釣り人は悩んだ。
魚って普段、何を食べているのだろう?
釣りに必要なのは、道具の前に魚の知識。
魚が釣りたいのならば、魚の特性を学び、魚を理解するべきだ。
そして、ドラゴンを狩るのならドラゴンの特性を学び、ドラゴンを識るべし、だね。
では、ドラゴンのどこにそれほど魅かれているのか? そう訊かれたら、こう答えている。
ドラゴンは強い!
ドラゴンはカッコ良い!!
ドラゴンは神秘に満ちている!!!
鋼鉄の盾すら切り裂く鋭い爪っ!
全身鎧をも難なく噛み砕く牙っ!!
おまけに火炎や氷雪のブレスまで吐くよ!!!
それでいて攻撃だけじゃなく防御面だって万全だ。
全身を隈なく覆う竜鱗は、剣だろうが魔法だろうが生半可な攻撃はいとも簡単に弾き返す。強いぞドラゴン。
個体としてだけではなく、ドラゴンは種族としても実に強靭だ。
水生生物さながらに水中生活に適応したドラゴンや、木の一本どころか雑草すら生えない毒沼、グラグラ煮えたぎる溶岩の海など、およそ生物が棲息するに適さない不毛の地ですらも生活範囲にしているドラゴンもいる。
他にも竜種によっては翼を備えたドラゴンもいて空まで飛べちゃうんだ。
もう、この世にドラゴンが住めない所なんて無いんじゃあないかな。凄いなドラゴン。
ああ、これかい? これは竜鱗さ。クリスタルドラゴンの鱗だよ。
珍しいだろ? 僕も見るのは久しぶりなんだ。
どうだい、この透明感。それに流れるような美しいフォルム。これだけの厚みがあるというのに切り出した氷みたいに透き通っているだろう? 美しいよドラゴン。
爪だっていい。凄く良い。先日、届けられたレッドドラゴンの爪は官能的ですらあった。
古くなって抜け替わった物と見受けられるが、なんと傷の少ないグッドコンディション!
脇に抱えても余りあるほどの太い付け根から、鋭い先端に至るまでのなだらかなカーヴ。
滑らかな表面を指先で味わっているだけで、思わず感嘆の吐息が漏れたよ。ぬふぅ。
爪ときたら、お次は牙だよ牙、牙はヤバいよ!
王立博物館に展示してあるリンドヴルムの骨格標本を見た事はあるかい?
ほら、あのロビーの右手に鎮座ましますドラゴンの頭蓋骨だよ。
両手持ちの大剣みたいな太くて鋭い牙が、上下の顎の端から端までズラリ立ち並んでいるんだ。圧巻で壮観、正に鳥肌モンだよ。
……おおっと。牙の事なんて考えていたら、子供の頃にドラゴンに喰われかけたのを思い出してしまったよ。
でもね、今なら思うんだ。
ドラゴンにだったら、あのまま喰い殺されても良かったかもな……ってね。




