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希望荘の住人  作者: 早瀬 薫
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最終話 1



 一体、何が起こったというのか?

 目の前で希望荘が燃えている。

 僕は火事を止められなかった。

 僕は、また絶望に打ちひしがれて生きていくのだろうか?

 たった一人で……。


 そのときである! 僕のすぐ傍にいた佐々木吉信は、「うぉおおおおおおおおーーーーーっ!!!!!」と雄叫びを上げて憤然と立ち上がり、瓦礫に埋まっている希望荘の住人を掘り起こし、抱え上げて安全な場所へと避難させ始めた。僕は、はっと我に返った。

 僕もやるべきことをやらなければならない!

 しかも今すぐ、早急に!

 佐々木吉信同様、僕は火元近くにいた藤堂啓太から順番に助け始めた。藤堂啓太の周りの瓦礫を取り除き抱え上げると、藤堂啓太は「あ、あ、あ、ありがとうございます。や、や、や、やっぱり、し、し、し、篠原さんが助けてくれた」と言って微笑んだ。ふと気付けば、隣家の蔵元爺さんも手伝ってくれていて、住人を自分の家の中に導いてくれていた。ご近所さんも出てきて、みんなを介抱してくれたり、消火してくれたりしている。とにかく、大急ぎで全員を救いださなければならないという思いで、僕は必死に動いていた。

 その大混乱の中で、僕は、戸田翔子を見失っていた。そのことに気づいたとき、胸が張り裂けんばかりになった。彼女を救わなければならない。彼女を救わなければ、僕はまた一生後悔して生きていくことになると、このときはっきり自覚した。僕は、戸田翔子を捜した。けれども見つからない。彼女は一体どこに?

 そう思った瞬間、戸田翔子を抱きかかえた佐々木吉信が目の前に現れた。僕はそれを見て心底安堵した。彼女を抱き抱えた佐々木吉信の顔は、先程までの鬼のような形相ではなく、別人かと見まがうほどに穏やかな表情をしていた。

 そして彼は僕に言った、「王子、姫をお救いしました」と。

 僕は、佐々木吉信から戸田翔子を引き受けると蔵元の爺さんの家へ向かった。


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