第八話 3
翌朝、僕は早起きして、今日も神保町に「宇宙からきたコロボックル・初版本」を探しに出かけようとしていた。二階の洗面所で歯磨きをしていると、住井真紀と出くわした。
「お早うございます! 先生、今からどこかに出掛けるんですか?」
「うん、神保町の古本屋へ本を探しに」
「そうなんですか。何の本を探してるんですか?」
「古い絵本なんだよ」
「ああ、それだったら、あそこがいいかも」
住井真紀がそう言ったので、僕が彼女に根掘り葉掘り質問していたら、彼女は丁寧にその店の場所を教えてくれた。なんでも、児童書の品揃えが物凄くいい店だそうだそうである。住井真紀は、「大学の教育学部にも友達がいるから、その友達にも訊いてみますね」と快く請け負ってくれた。
ということで、僕は住井真紀に教えて貰った古本屋へと急いだ。途中、また中村誠が僕を尾行しているのではないかと何度も後ろを振り返ったが、今日は付いてきていないようだった。昨晩、遅くに中村誠は秋川緑と一緒に酔っ払って帰宅したようだったし、今日は二日酔いでまだ部屋で寝ているのかもしれないと思った。
住井真紀に教えて貰った古本屋へ到着して、さっそく店の中を物色していたのだが、まぁ古い絵本があるわあるわ、僕は自分が子供の頃に読んでいた懐かしい絵本を沢山見つけて狂喜乱舞していた。しかし、こんなことではいかんいかんと思い直し、店主に「宇宙からきたコロボックル・初版本」を置いてないかと訊ねた。すると、店主は、暫く考えた後、「倉庫にあったかもしれん」と呟き、奥の倉庫に入って行った。中々出て来ないなと思ったのだが、店主は「お客さん、あったよ!」と顔を綻ばせて本を手に持って出てきたのだった。
「本当ですか!」
「うん、これだろ?」
「そうです! そうです!」
僕は、喜び勇んで店主が差し出した本を受け取ったのだが、でも本をよく確かめてみたら、その本は初版ではなく第二刷だったと分かり酷く落胆した。
「あれ? 違ったかい?」
「はい……」
僕は店主に、何故初版本を探しているのか説明すると、店主も、もし入荷するようなことがあったらすぐに連絡をくれると約束してくれた。僕は、落胆しながらも、その古本屋を出て、また「宇宙からきたコロボックル・初版本」を探し続けた。




