第四話 8
「だからさ、秋川、意地張るのもいい加減にしろよ。俺だってもう庇いきれないからな」
「別に庇ってくれなくていいわよ。私は間違ったことなんてしてないんだから」
秋川緑は、会社でまた部長と衝突し、同期入社の杉田康介を困らせていた。
「ああ、そうだな。お前の言ってることはいつも正論だよな。だけどな、正論だからといって、万人が納得するとは限らない。時には長い物に巻かれることも必要なんだよ。家族を路頭に迷わす訳にはいかないヤツもこの世にはいっぱいいるんだよ」
「そうよね。私には家族持ちの人の気持ちは分からないわよね」
「そういうつもりで言ったんじゃない」
「分かってるわよ。でも、清水君のやったことは正しいんだから、『間違ってました』なんて課長にも部長に謝るつもりなんて絶対ないから! 大体ね、チームを組んでるんだから、助け合って当然なのよ。それを手を貸すなだなんて一体誰が決めたの?」
「部長」
「ほらごらんなさいよ。協力して最適な広告が作れて、しかも売り上げが上がって、お客様が喜んだんだから良かったんじゃないの」
「それはそうだと俺も思うよ」
「でしょ? いくら部長が決めたからって、きっちり従う必要なんかないと思うし、私は出世したいなんてこれっぽっちも思ってないし、それに首に出来るものならしてみなさいよって感じ」
「でも副部長が始末書書いてたよ」
「副部長が部長の犬になってるから、こんなくだらないことで揉めるんじゃない。私は誰の犬にもなりません!」
「そうか……なら好きにしろ」
「ええ、好きにするわよ」
秋川緑がそう言うと、同期入社の杉田康介は大きなため息を吐き、その場をすごすごと後にした。しかし、また舞い戻って来て、「おい、今日は金曜だから、俺に付き合え」と言った。




