第四話 2
僕がこんな悲惨な目に合って布団に臥せっている頃、戸田翔子はいつか夢を叶えるんだと願いながらも一向に夢が叶わず、社会の底辺に張り付いたまま絶望に押し潰されそうになっていた。彼女は自分が描いたイラストを持って、毎日毎日出版社に出向き、アポイントメントを取ろうと必死になっていたが、いつも受付で追い返される日々を繰り返していた。
「だから、何度来られても困るんです。編集長は忙しいんですから。そのイラストをお預かりして、お渡しすることは出来ますから、先にそうなさったほうがよろしいんじゃないですか?」
「今まで先に渡して、会えたためしがないんです! イラストを渡す前に会わなきゃ意味がないの!」
「だから、ちゃんと先に編集部に連絡してくださいと言ってるんです」
「とっくの昔に何度も電話しました。でも作品を郵送しろって言われるばっかりで、会って貰えないんです!」
「あのぉ、こう言ってはなんですが、一目見ただけで釘づけになるようなものを描く努力をなさったほうがいいんじゃないですか? まず、そこからでしょう?」
そう受付嬢が言い放った途端、頭に血が上った戸田翔子は、「受付ごときが何て言い草っ!」とぶち切れてしまった。しまった!と思ってももう遅い。受付嬢は「どうぞお帰りくださいっ! 帰らないのなら警備員を呼びますっ!」と叫んだ。戸田翔子は受付嬢の顔を悲しそうに見ながら、「ごめんなさい、失礼なことを言いました。また来ます……」とすごすごとその場を後にして、玄関に向かった。




