第一話 1
2016年10月初投稿の作品を誤って削除してしまったため、再掲です。
この作品は、自分の中では良いほうの出来かなと思っています。
楽しんで読んでくだされば、幸いです。
目の前に巨大な炎があった。
僕はすべてが燃え尽きるまでそこに立ちつくしていた。
何時間も何時間も……。
ただただ、悲しかった。自分の無力さに絶望していた。大切なものを失ったことと、その炎を食い止められなかった悔しさと怒りと悲しみで気が狂いそうだった。そして、その後、その思いを抱えたまま随分長い間、僕は孤独だったような気がするのだ。どこまでもどこまでも続く、一筋の陽の光さえも差し込まない暗いトンネルの中を、僕はたった一人で重い足を引き摺りながら歩いている。入口も出口もどんなに目を凝らしても一向に視界に入っては来ない。そこには酷い疲労感と虚無しかなかった。おそらく、僕はこの世に生まれ落ちたときから、そう感じていたのだと思う。
あれは一体何だったのだろう? 夢だったのか幻だったのか、それとも現実に起こったことなのか、僕には全然見当が付かなかった。その光景は、昼間、ぼんやりと考え事をしていたときに突然頭に浮かんだり、夢の中で見たりして、何度も何度もその燃え盛る炎に悩まされ続けた。
もしも、人が本当に、輪廻転生を繰り返しているのだとしたら、人はなぜ生まれ変わるのか?という疑問は簡単に解ける。人は誰しも前世でやり残した思いを抱えていて、その苦い思いを払拭するために、生まれ変わってくるのだと思うのだ。もう二度と後悔しないために……。僕はトンネルを抜けるべく、再び生まれ変わって来たのだろう。