月蕾 VOL III
「Gくんさっきご来場した女性2名組みエントランスの際年齢確認しましたか?」オーガナイザーであるDは直属の部下であるGに差し迫った表情で質問していた。
「どんなお客様でしたか?」出入りの多い時間帯でかつフロアーを管理するGは記憶を手繰るためにそう質問した。
「1人は、SSさんと同じ名前の子で」とDがいうとGは即答する。
「あああ、しました。」
「ならいんだけどさ、あの2人、心の病気かな?」とD。
「でしょねー。処方箋がっつりって感じですよ。」
「DJ SSに絡まれなければいいんだけどね。」
「ははは・・・」
DJ-SSは常人じゃないから何するかわからないしなぁ・・出来れば何事もなくパーティーを終えたいとGは心で考えていた。
「面白い見物になるといいだけどね。」DはGの心境を知らずして本音を言ってしまった。
別の日 都内の救急病院。
小枝子は時折、まさるを見て心配したが、内心、喜びに震えていた。
(ビールの中に仕込んどいたアレが効果を発揮してるのね)
小枝子はまさるが帰ってくるだろう時間、ビールを開けて半分ほどすて、2種類の薬品を混入し、放置しておいた。
まさるはあまりお酒を飲めない方だ。精々缶ビール1本か2本。アルミ缶からコップに開けて飲むのだが小枝子はそこに着目していた。アルミは確かに目に見える速さでは腐食はしない金属だ。アルミニュームとアルコールが空気に触れることで腐食が始まるがそれは目に見える速さではない。
(ネットで調べてよかったっていうより、何で誰もこうして人を殺さないんだろう?)
小枝子はまさるが会社の同期と浮気をしていることを最初から知っていたのである。殺す方法を情熱的に検索しさまざまな文献を読み漁った。呪いの方法から殺人まで。そしてたどり着いたのがアルミとアルコールとある薬品を混ぜることでヒ素より強力な毒になる、毒殺の方法だった。その薬品を入手することもたやすく、東急ハンズで簡単に買うことができた。
問題はここからだ。警察の検死解剖でその毒物は、検出される。そこで小枝子が考えた第2の方法は、ビールに覚せい剤を混入することだった。これも問題なく購入できた。3グラムほど小枝子はビールに混入しておいたのだ。
もし確実にまさるが死んだ場合、警察は死因を調べるために色々するだろうが、覚せい剤反応が出たらそこで死因解明は終わる。
(でも、何でクスリをやる前からあんなにパニックだったのか?ビールを飲んだ後色々な幻覚に踊らされてたし、私もその幻覚に乗ってあげたけど、ガキってなんなのよ??)
考えることは他にもあった。
愛美・・・別に殺すほど恨みがあるわけじゃないけれど、きっと泣くんだろうな。
AM2:00 渋谷
寒い外の空気を吸いながら3名の女性と談笑しながらこういった。
「意味なんかは、ないって。」DJ-SSは質問をかわしていた。
「80億人口があってさ、生きる意味や価値を知らないで人生終わったりする人もいれば、なにかをつかもうと努力して死ぬ人もいるし、殺される人もいるし、絶望する人もいるし、逃げる人もいる。全部に意味を付けて、さも私は解ってますって何を解りたいんだか本当はしらないのさ。80億全員に意味付けて処理できるほど人の記憶は良くないね。」
「SSさん、そろそろお願いします」とDはこのやり取りを中断させた。
「は~い。んじゃーがんばってきます~。最後まで踊ってね」とSS
エントランスにたっていたGも「がんばってください。」と声援を送る。
「は~い。じゃあ頑張ってきまーす。」
「あっ!Dさん、Gくん。さっき幽霊みたいのいなかった?」
出た!GもDも心でそう述べた。
「出た!じゃなくてさ・・あれはちょっとしたものだね~」
そう言い捨てながら、SSはステージに駆け足で飛び乗った。
AM 2:30
カルミブラーナのおお運命よが鳴り響く中、月は中天からこれから始まる恐怖を誰かに伝えようとしていた。
「こんばんは。お話はいかがですか?私は昨日、フェイトがその冷たい指で人を愛撫し、ディストニーが白けた微笑みを投げかけるのをみていました。メガイラがその知恵を人に授け、恐ろしい殺人が愛の裏で行われるのを見ました。すべては自由因子の主が戯れで折り合うじゅうたんの模様のようです。」
「その昔、若い母親とその恋人が、流行風邪で苦しむ子供が夜中に起きたことで性の営みを妨害されたことに腹を立て、過度な虐待を行いましいた。スーツケースに閉じ込め、スーツケースをけり殴り、階段から投げを繰り返しました。」
(うるさいな。他を当たれ。)SSはかねてから月が嫌いでした。
「貴方には語りませんよ。天帝の盟友にして常道から外れた方よ。」
(だまれ。割るぞ!)
月は他を探し始めました。
この夜、狂乱する乱舞と凶行する忌まわしき出会いを語るために。