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16 召喚獣との運命的な出会い


 放課後、初心者ボクの為の契約召喚獣を見繕ってくれるという話だったんだけど……


「召喚獣ってどうやって契約するの? 草むら歩いていると飛び出したりしてくるのを捕まえるならこんな街中じゃなくて山とかに行った方がいいんじゃない?」


「何を想像しているのか解らないが、いや解るが、その辺に野生の召喚獣はいない」


 ボクの質問に伊丹が答える。ボクと伊丹が並んで歩いているのだが、その後ろには卯月さん、渋山さん星さん姉妹と、何やら大所帯になってしまっている。こんなにたくさんの人達を集めて街を練り歩くなんて、初めての事だ。一同は街中にあるショッピングモールへと足を踏み入れていった。


「着いたぜ」


 そこはなんの変哲もないショッピングモールの中の一画にある店だった。普通の雑貨屋にしか見えない。


「ここに召喚獣が……?」


「実物置いてあるわけじゃないけどな」


 そう言って伊丹がボクにカタログを渡してくる。中には召喚獣の写真と値段が添えられて書いてある。soldoutというラベルが所々に張ってあり、売り切れた召喚獣もいるようだ。


「結構いい値段するんだね……」


「人気があって強いのは値が張るな。でも召喚獣なんて使い方次第だ。お手頃価格のヤツでも充分だぜ」


「というか召喚獣って売買するものなの?」


「んー。まぁ先祖代々受け継がれてきた召喚獣とかでもない限り、基本は売買だな。いくらか払うとランダムに契約できる召喚獣なんてものもあるぞ。一回500円からこの店では一回1万円まであるな。もっと高いとこだと一回10万なんてところもあるな。高い方がいい召喚獣も出やすいらしい」


「なにそのガチャシステム。財産溶かす人いるんじゃないの」


「まぁたまにいるらしいな」


「被ったヤツとかどう考えても使わない召喚獣とかどうするの?」


「複数使ってもいいし、下取りに出してもいい」


「なんか思っていたより召喚獣の扱いが雑だなぁ。モノみたい」


「実際契約自体はモノだからな。呼び出さない限りは契約したっていう事実があるだけだ。呼び出して、絆を深めて連携を取れるようになって、お互いが強くなっていくものだ」


「そうなんだ。オススメの召喚獣とかある?」


「オレのオススメを聞くより、昇の直感とかで決めた方が愛着わくだろ?」


「伊丹くんの割りには中々いい事言うね。エビとかカニ勧めるかと思ったのに」


 卯月さんが口を挟んでくる。


「いや前にも言ったと思うけど、本人に選ばせるって言ったよね!? エビとかカニの良い所を語ってくれって頼まれたら喜んで語るけど!」


 エビとかカニ……カタログで見ると値段は安い。価格だけ見ればすごいお手頃だ。『※食べないでください』そんな注意書きがされてある。


「ちなみに卯月さんはどんな召喚獣を使うの?」


「私は召喚獣使わないタイプだから」


「えっ」


 まさか召喚獣を使わないでもいいという選択肢がここで生まれるとは。


「あ、でも初心者の内は召喚獣いた方がいいと思うよ。召喚獣と一緒に戦う方法を知って、その上で使わないと判断したならそうすればいいし」


「じゃ、渋山さん、は? どんな召喚獣使うの?」


 店の中やや離れた所で星さん姉妹と雑貨を見ていた渋山さんに声をかけてみる。


「アタシ? アタシも召喚獣はいないわね」


 まさかの使わない派二人目……! 召喚獣本当に有用なの? お金の無駄だったりしない?


「たまたま! たまたまここにいる二人が珍しく召喚獣を使わないタイプなだけで、使う派の方が圧倒的に多いから!」


 ボクの不安を感じ取ったのかフォローを入れてくる伊丹。


「そ、そうなの……? じゃ星さん達は?」


「わたし達のはカタログに載ってませんね。家にあった剣が意思を持って勝手に飛び回るようになったのを召喚獣として使ってますから」


 なにそれ怖い。そして無機物。召喚獣とは。


「ピンとくるのがいない、解らなければ運を天に任せてガチャしてもいいんじゃないか?」


 ガチャって言っちゃったよ。


「そうだね。でもちょっと気になることがあるんだけど、世話とかどうするの?」


「呼ばない限りは世話は必要ない。呼ぶ時に魔力を分け与えるからそれが世話といったら世話だな。実際の生き物とは違うから同じように考えない方がいい。ま、そのうち解ってくるさ」


 どうやら生き物の命を扱うペットとは違うようだ。そこまで気を張らなくてもいいのかな。


「じゃ運を天に任せてみるよ」


 ボクはガチャを引くことにする。契約書が無作為に入った箱から一枚引く。ガチャというよりくじだ。駄菓子屋なんかにもあるけど、こういうものって当たり入ってないよね、なんて事を考えていると、わずかに手に触れた紙から何か熱のようなものを感じた。まるでこの紙がボクに引かれたがっているような。そんな運命的な何かを感じる。もうこの紙を引くこと以外考えられない。


「これだ!」


 そしてボクは一枚の紙を引いた。

 そこには神々しさを感じる龍が描かれいてた。手足がある西洋風ドラゴンではなく、長い胴が特徴的な東洋風の龍。絵だけでは大きさが解らないが、手のひらサイズではないだろう。鎧のように硬質そうな鱗は生半可な攻撃なんて通じないだろう。契約書からでもその圧倒的な強さが漏れだしている。ひょっとしてボクはすごい物を引いてしまったのでは?


「おめでとう。契約完了だ。魔力を与えてやればいつでも呼び出せるぞ。それともう2,3回引いてみたらどうだ?」


 ん、んん……? こんなにすごい召喚獣と契約したのに伊丹はあまり驚いてない様子。


「いや、ボクはこいつに何か運命的なものを感じたし、こいつだけでいいよ」


「お、おう。んじゃその辺の公園にでも行って呼び出してみるか」


「んー、着いて行きたいんだけど、ちょっと家から呼び出されちゃって、ごめんね?」


 卯月さんは両手を合わせて可愛らしく謝ると、ボク達と別れた。


「渋山さんと星さん達は?」


「ついていってあげてもいいわよ」


 上から目線の渋山さん。


「シヴさんが行くならご一緒します」


 星さん達も着いてきてくれるようだ。


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