生きていくために必要なこと
…前世の私もそこそこ底辺だなとは思っていたが…。
今生の酷さは、それを凌駕していて、私はしばしぼーぜんとなった。
『女の子なら、元気になれば、また売れる』
…この言葉のそら恐ろしさに、まったくもって愕然とする。
『また』だと…。
つまり、私は一回売られて瀕死の状態になり、もとの身体の持ち主さんは、眠りについた。
しかし、私は神様のせいでそんな身体に転生して、ここにこうして、ぶっこまれているというそういう状況って事なのか…。
「…コル?どうした?また具合悪くなってきたのか?」
まったく食べなくなってしまった私の様子に、ご飯を食べさせてくれてた少年が焦り始めたようだった。
他の子供と同じく、顔も体も真っ黒でガリガリで見分けはつきずらいけど、結構な頻度で私の面倒を見てくれてる緑の目の彼は、ちょっとまってろと、私を地面に横たえる。
いや、正確には地面と同じくらいボロボロの布切れの上にである。
…もう、これ、気持ちの問題な気もするけれど。
転がったまま、晴れ晴れとした青空を見上げる。
腹が立つという気持ちも勿論あるのだけど、
どちらかというと、どうしたもんかなぁ…
という思いが先行する。
前世だって、派遣社員で時給はそこそこ上がっても、
年収ともなると世の中で言うところのワーキングプア状態であったことは全然否めなかった。
それでも、仕事はとりあえずしてたし、明日のご飯がないってことはなかった。
…残金が1000円で給料日まで一週間とかも、たまにはあった。
でも、今はどうだろうか…。
うーん。
そもそも、食料を得る手段が無さげ?
というか、仕事っえあるのか?
…やっぱり、身売りとかそういうやつ??
全然先の見通しは立てられなさそうだ。
「…コル、具合が悪いのか?」
これから先の事をうんうんと考えていたら、いつの間にかレンと呼ばれていたリーダーっぽい少年が目の前にいた。
彼は多分、私たちのグループのリーダーのようだ。
心配そうに私を地面から抱き起こす彼の顔をじーっと見つめる。
他の子よりも、少しだけ小綺麗にしていて、金髪に深い青の瞳をしているその顔は、ちょっと見惚れるくらいに整っている。
「…わ、たし。また…られるの?」
目が覚めて、初めて声を出してみた。
声がひょろひょろしてかすれてしまい、上手く喋ることは出来なかった。
それでも、意味はレンに通じたのだろう。
驚いた顔で私をじっと見つめた後に、レンはゆっくりと頷いた。
「…相応の金で買いたいと言われたら、考える」
……さよか。
私は、諦めた気持ちで瞼を閉じた。
まぁね、こんだけの生活レベルなら、そうなりますよね!
読んでいただき、ありがとうございます。