生きてるって素晴らしい?
一年ぶりになってしまいました。
不定期になりますが、良かったらお読みください。
「あー…暗い…暗いなぁ…」
ふっと意識が上昇したのは、真っ暗な空間だった。
おお、死んでも意識ってあるんだなぁと思いつつ。
そりゃこんだけ暗けりゃねと、誰かの呟きに突っ込みを入れる。
「そういうことじゃなくて!神様への最後のお願い!即死にしてくださいって…暗いでしょ!!」
…いやぁ40歳過ぎてからの目標はそもそもポックリ死にたいでしたので、さほど違和感は…。
「わー!!暗い…。やだなぁ…でも、君の他の家族に迷惑をかけたくないっていう献身には、神様、報いたいんだよねぇ…」
はぁ…でしたら、そのままポックリいかせてください、
「ダメなんですよ!!最近ね。多いのそういう人!!」
困っちゃうんだよねーと神様(?)らしき人がぶつぶつ言う。
「…そういう人ってさあ、転生もしたくないくらい生に執着がなくなるからさぁ、全然新しい生命が生まれなくなっちゃうんだよねー」
はぁ、まあ、そりゃそうでしょ。
「そりゃそうでしょ!じゃないんだよ!!大問題なの!!」
真っ暗闇のなか、神様が叫んでいる。
まあね。
確かに出生率も低かったしねー。
私も、あんな兄がいたから結婚とか20代後半で諦めましたけどね。
「ほんと困るんだよそういうのっっ!!」
うううっ…と泣いてるような気配がする。
た、大変ですね。
「…そうなんですよ。というわけでね。貴方にはじっけ…」
こほんと咳を挟む神様。
いや、実験て言おうとしなかったか?
「もとい!ご褒美として、異世界転生していただきます!!」
…ありがちですね。
「いいんです!貴方には子供の頃に感じていた、生きる喜びを思い出していただきます!そして、喜んでまた、この世界に転生していただきたいのです!」
それが成功したら、どんどんと他の人も送り出したいのです!と神様は裏事情を駄々漏らしてくれる。
「…くっ魂の世界ですと隠し事が難しいんですよ!」
神様はそう言いながら早速異世界に送り込みますねと張り切っている。
あ、これはあれですかね。
色々チートとかあったりとか…。
そんな事を思っていると、遠くに光が見え始める。
長い長いトンネルの先のような、光の点が、だんだんと近づいていくのがわかる。
「…いえ、それが…チートというか、持っていけるのはこの世界の記憶だけです」
はあ?
それで、赤ちゃんからやり直せと?
異世界で?
「あ、すいません。まっさらの土台もいただけなかったので…多少、その…難ありの身体…いや、環境……といいますか…」
はぁ??
ちょっとそれって、ほんとに大丈夫なの?
え?
私、別にこのままでいいんですけど!
「いやいや!そう言わず!君の根性とガッツなら大丈夫!神様は陰ながら見守っているよ!」
ふ、ふざけんなぁぁぁ!!
真っ白な光が目の前にぱぁっとひろがった瞬間。
私は、あり得ない位の気分の悪さで咳き込んだ。
「…ごふっ…うふっ…えふえふえふっ…」
「…え…生きてる」
目の前がまぶしい。
鼻をつくのは下水道みたいな匂い。
「リオン!コルが生きてた!!」
耳元で子供が怒鳴ってる。
…いや、生きてたくなかったんだけどね。
と、呟くのも無理なくらい、口の中がおかしな事になってる。
ざっざっと土を踏む音がして、近くに誰かがしゃがみこんだ。
よく見えない視界の中でなんとかそちらを見上げようとする。
「…コル、生きてたか」
可哀想に…と、その声は言った。
若い男の声だと認識は出来た。
どういう意味だと聞く前に、すぅっと目の前が暗転した。
…おい、誰か!責任者を呼べ!!
読んでいただきありがとうございます。