木の上にあれを
あれから、結構な量の山団栗を見つけました。
オヌマが説明してくれた所によると、本当は、中の小さい実を潰して粉にして、パンみたいな物を作ったりするらしいです。
レンはなかなか戻ってこない水汲みの二人を心配して、川辺に向かってしまった。
で、その色々な作業がめんどくさいオヌマは、そのまんま火に、山団栗をくべやがりました。
そして案の定パーンと弾けまくってます。
パンパーンと弾ける度に、私がびくっとするのを、オヌマがとっても嬉しそうにゲラゲラ笑っているという、今、です。
「…あぁ、可愛いなぁ。コル、やっぱり可愛いわぁ」
オヌマは、笑いながら弾けて焼き上がった山団栗を半分に割って、小指の先っちょ程の実を私にくれる。
…いや、貰うけどね、とりあえず。
だが、私が普通の幼女だったらお前の事嫌いだからな!
という気持ちで睨んでみるものの、オヌマは可愛い可愛いと言いながら、私の頬をつつくばかりだ。
…うむ、もういい。
諦めた私は、美味しいと感じる程質感の微量な山団栗の実を5つくらい食べた。
満腹とまではいかないものの、食べたなぁという感じはなんとか得られた。
なんというか、ナッツ類を焼いて食べたみたいな感じなので、何となく栄養価は高い気がする。
うん、つまり何もないよりはマシ程度の食料は、ここでなら得られるという事だな。
私は、何気なく山団栗を落としたのであろう大きな気を見上げた。
かなり大きな木の幹は大人が8~10人位手を繋げないと一回りできないような幹の太さだ。
そして、地上からかなり上の方には立派な木の幹が四方に向かって広がっていた。
…地上よりも、空中の方がまだましかも知れないね。
昔、姪に買ってあげた児童文学書に、ツリーハウスが色々な世界を旅する的な話があったなぁと思い出しながら、そんなアイディアが頭に閃いた。
そうだよ、この場所に留まるならツリーハウスが良いのじゃなかろうか?!
私はこの思いつきを伝えるべく、オヌマの服を引っ張りながら木の上を指差した。
「ん?どした?」
全く理解してくれないオヌマに色々したので、この際口頭で言ってみようと思います。
「…木のぅえ。お家…つくろ」
「ええ…?コル、もっかい言ってみて?」
「木の…お…ウチつくろう」
一音ずつわかるようにそう伝えると、オヌマはぽかんとした。
でも、その後に私が指差した木をじっと見上げてからもう一度私に聞いてきた。
「…ごめん、コル、その話、詳しく教えて?」
お、どうやら興味は持ってくれたようだ。
「…さ、いしょ…はし…ご、欲し…ぃ」
「え?」
「は、しご…」
…くぅ、そして私は今、めちゃくちゃ喋る力が欲しい!
口が思う通りに動かないっ!!
そんな、イライラを感じていた時に、おーいとイム君の声が聞こえた。
「コルー!ヨグ婆の所で、色々借りてきたぞー」
ニコニコしながら、走って戻ってきたイム君は、背中の背負子からヨグ婆に借りてきた古い鍋や道具を自慢げに見せてくれた。
「…あれ、イム、イサクとレンは?」
「イサクは一人で水汲んで戻るっていってたけど、レンも一緒なのか?」
イム君がそう応えるのと同じくらいのタイミングで、おぉいとイサクの声がした。
「魚取って来たぞー!」
笑顔のイサクが近ずいてくると、全身がびしょ濡れであることがわかった。
…釣り?それとも手で取ったのか?
少し後ろをバケツを提げたレンが苦笑いで歩いてくるのも見えている。
…とりあえず、二人が無事でひと安心かなぁ??
読んでいただきありがとうございます。