忠霊塔
8月の昼下がり、忠霊塔の近くでリフティングをする少年がいた。彼は一人で友達が来るのを待っていた。この忠霊塔にはすぐ横に大きな広場があって学校帰りの子供が元気よく遊んでいた。だが今日は夏の暑さに耐えかねたのか彼一人しかおらず先客もいなかった。(あいつもどうせ暑くて来れないんだろう。)
彼は遊ぶ約束をした友達に裏切られたと思った。実に彼はもう一時間ほど待っている、何もしなくても汗が出る今日に外で遊ぼうなどと誘ってきた友達に少しの憤りを感じた。誘った方が来ないとは何て奴だ、そう思って馬鹿馬鹿しくなった少年は家に帰ることにした。だが忠霊塔の門を出ようとしたその瞬間、
「おい、そこの君。」
誰かが呼び止める声が聞こえた。少年は振り返ってみると、薄茶色い何とか服としての形を保ったボロボロの布切れを着た男が立っていた。脚には包帯のようなものを巻いており、服は所々黒ずんで汚かった。少年は不信に思っていると、男は少し笑って、
「驚かせてすまない、そういうつもりでは無かった。」
と言った。この男の言う通り少年はかなり驚いていた、何故なら今の今まで自分以外の人の気配を感じなかったからだ。