御伽噺のようなホントの話
獣人っていいですね!!←
小さい頃赤ずきんを読んで狩人が来なかったらどうなるんだろうと妄想しながらワクワクしたものですが、ある意味エロい展開しかなかった!!!!←
拙い文章ではありますがお目汚しのないよう精進して参ります。
「お婆さんの口はなぜそんなに大きいの?」
あれ?この台詞どっかで聞いたことないか?
自分で言った台詞にアンリはハッと気付いた。これってもしや…。
だが時既に遅し、目の前のベッドの中で今の今までお婆さんと思っていた人、もとい…。
「それはお前を喰う為だよ、アンリ。」
とろけるような声と共に、彼の被っていた毛布が滑り落ちた。
私、アンリ・ウェルナーは前世の記憶を持っている。
うん、言いたいことは分かるよ?うわぁ、大人なのに厨二病患ってんのかよコイツ。とか
えw何?今流行りの転生チートですか?w
とか思ってるんでしょ?うん、私も思ったよ。そう思ってた時期もありましたよ。
けど25歳OLの前世の記憶なんてくだらないことしか覚えてなかった、何よりこの世界に前世の記憶は全く通用しなかった。
この世界には魔法がある。ドラゴンもいる。そしてエルフ、ドワーフ、獣人、人魚、とにかく何でもいた。
それこそ前世の私ならファンタジー!と喜ぶべきかもしれないが当時4歳の私にとってはそれどころではなかった。
思い出したきっかけは幼馴染みと遊んでて転んで近くの石に頭をぶつけたから。
うん、テンプレ過ぎるくらいテンプレです。そして鈍臭すぎる私を殴りたい。
そのまま気絶して頭から血を流してる私を幼馴染みは泣き叫びながら家に運んでくれたらしい。申し訳なさすぎて頭をめり込ませながら土下座したい。
ウンウン唸りながら思い出した前世に幼い私は衝撃を受けた。前世で言うところのカルチャーショックというやつか?
前世の記憶が一気に押し寄せてきて自分は一体何者だと幼いながら大いに混乱した。その間幼馴染みがお見舞いに来てくれてたらしいが、泣き叫んだり物を投げつけたりしたらしい。全く覚えていないけど…。そのまま私は部屋に塞ぎ込んで、そして悩みに悩んだ結果、出た答えが、
過去は過去、今は今!今の私はアンリ・ウェルナー!
前世でも単純だった私は今世でも単純だった。
そのまま前世の記憶を持て余しながら私は18歳になった。
別に魔族やら魔王がいるわけでもなし、戦争はあるみたいだけど、私の生まれた国は至って平穏。ゲームやら漫画の世界でもないらしい。
しかも住んでるのは首都から馬車を走らせて2日かかる位の田舎の村。
何かが起こることの方が難しいくらいの場所だ。
首都には王様や貴族様やドラゴンなどもいるらしいが、未だに拝見したことはない。
まあうちは由緒正しき庶民だし??精々行くとしたら近くの町くらいですよ!
一応村にも獣人はいる。森に行けばエルフにも会える!…会ったことはないけど。
小さな頃は見るもの全てを怖がった時期もあったけど、今はそれなりに楽しい人生を送っているといえるだろう。
あの時の幼馴染みは私が塞ぎ込んでる間に引っ越してしまったのが少し残念だけど、出来れば助けてくれた感謝と謝罪をしたかった。2:8の割合で。
そして、魔法の才能も無かった私は大人しく家の手伝いをしながら自分で作ったジャムやハーブなどを町に卸しに行く生活をしている。
こちらの世界では思い付かないような物をジャムにしたりしてるので中々に好評だ。前世の記憶よ、ありがとう。
町に商品を卸して、ホクホク顔で帰ってきたアンリは家に続く道を歩いていた
今日は私の18の誕生日、つまり成人の日なのである。成人、大人の仲間入りである。町でも商品を置いてもらっている店のおばさんや贔屓にしてもらってるご婦人方に祝いの品などを頂いたのだ、行きより帰りの方が荷物が多いのは嬉しい限りだ。
夕食には大好物が並ぶに違いない。そう予想してウキウキしながら家の扉を開けた。
「ただいまー!」
「あぁ、アンリ丁度よかったわ。」
リビングで慌ただしくしていた母はそう言うと荷物を下ろしたばかりのアンリにカゴを渡してきた。
「?なにこれ。」
「あんたそのままお婆ちゃんのとこに行ってきて、何か腰痛めちゃったらしくてね。」
「え!?ほんとに!?」
アンリのお婆さんといえば森にたった一人で住む変わり者で、エルフと弓の勝負で勝ったとか、ドワーフとの酒盛りでドワーフを酔い潰したという噂を持つ人である。
孫であるアンリも数回しか会ってないが、兎に角パワフルだった。そんなお婆さんが腰を痛める…。
「…一体何したの?熊と相撲でも取ったの?」
「熊と相撲は取ってないみたいだけど、トロールとしたらしいわ。」
そっちかい、てか相撲はしたのか。
「これからお母さんあなたのお祝いの料理作らなくちゃいけないし、お父さんは組合で夜まで村を離れてるのよ。」
「う、ご飯の為ならしょうがない…。ささっとお見舞いに行けばいいんでしょ?」
町に行った帰りなので小綺麗な格好をしていて良かった。
アンリはその場でクルリと回って服を確認した。よし、目立つ汚れも特になし。
それを見ていた母はイスに掛けてあった一枚の赤い布を差し出した。
「丁度良いわ、アンリこれを羽織って行きなさい。」
「何これ?ショール?しかもこんな上等な布…。一体これどうしたの?」
サラリとした手触りにアンリは驚いた。
うちにこんな高そうなショールを買う余裕などあっただろうか?いや、ない。多分この布っきれで父の月収が吹っ飛ぶ。
「これはアンリへのプ・レ・ゼ・ン・ト♡」
ニヤニヤとした顔でウインクをしている母。成人したお祝いにしては高すぎる。多分、いや絶対何かある。
「…犯罪には手を染めてないよね?」
「あんた一体親を何だと思ってんのよ。それは成人した御祝いだってクラウドくんが贈ってきたのよ。」
「え!?クラウドが?」
クラウドとは何を隠そう私を助けてくれたあの幼馴染みだ。二歳年上であの事があるまでは私はクラウドにべったりだった。
「そうなんだ…。」
「随分前に引っ越したのにまだ覚えててくれたのねぇ、色々面倒かけてばっかりだったのに。」
「それについては本当に謝りたいわ。」
あの頃、ほんのりと淡い想いを抱いていたクラウドから贈られたショール。まだ覚えてくれていたことに嬉しくなって手の中にあるショールを大事に肩に羽織り、お見舞いのカゴを持ってそのまま玄関に向かった。
「あ、そうそうアンリ。」
「?なに母さん。」
「森では何が起こるか分からないんだから気をつけなさい。それと」
またパチンとウインクをして
「男は狼だから気をつけなさい♪」
そう言うと母はアンリの目の前で扉を閉めてしまった。
「……気にしないでいこう。」
そのフレーズに前世の記憶がピクリと反応したが、それに気付かない振りをしてあアンリは森に急いだ。
「あぁー、どうしよ…。」
森に入ったアンリだったがお婆さんの家に辿り着くどころか、今いる場所さえも分からなくなっていた。つまりは完璧に迷子である
元々数回しか行ったことがない上に迷いやすい森の中である。アンリが迷うのも仕方がない。
だが、このままではお見舞いどころがお祝いの料理も食べ損ねる。
焦って走り出したアンリの目の前が突然開けた。
どうやら森の中にある花畑に来てしまったらしい。
「あれ?ここって…。」
そうだ、ここはクラウドと初めてあった場所だ。
確か小さい頃、お婆さんの家に行く途中にここで遊んでいるときに会ったのだ。
村では見たことのない子供、しかも上等な服を着ているクラウドに最初は驚いたが、すぐに打ち解けて仲良くなった。
どうやら両親と旅行に来てたらしいのだが私と仲良くなったクラウドを見てクラウドの両親が短期間だけこの森の近くに住むことを了承したそうだ。
そうして仲良くなってアンリがクラウドに仄かな恋心を抱いた時に起こったのがあの事件だ。
クラウドと別れる原因となったともいえる額の傷痕を無意識のうちに撫でていた。今はもううっすらとして近づいて見ないと分からないくらいだが、これもクラウドとの思い出だと思えばこの胸の疼きも少しは弱まる。
思わず零れそうになった涙を慌てて拭いアンリは歩き出した。ここからならお婆さんの家の道のりも覚えている。
だが、歩き出したアンリは気付かなかった。その背中をジッと見つめる影があったことを。
「やっと着いた…。」
道行く先でまた少し迷い、太陽が隠れ始めた頃にようやく辿り着いたお婆さんの家は、昔と何も変わっていなかった。その事に少し懐かしくなりながら、アンリはお婆さんの家の扉をノックした。
コンコンコン
「お婆さん、アンリです!お見舞いにきました!」
暫くすると奥からしゃがれた声で
「あぁアンリかい、よく来たねぇお入り。」
といつもなら扉を蹴破り、アンリに体当たりする勢いで抱きしめにくるお婆さんが今日は出てこない。
そんなに腰の具合が悪いのかとアンリは慌てて家の中に入った。
中は薄暗く灯りもつけていないようだった。アンリは不思議に思いながらもそのまま奥の寝室に向かった。
「お婆さん?アンリよ、大丈夫?」
扉から顔を覗かせて中を確認する。どうやらベッドの中にいるらしい。
そのままベッドの近くに行き様子を確認する。すると、黒い毛に覆われた逞しい足が毛布から覗いていることに気がついた。
「あら?お婆さんの足はこんなに太かったかしら?」
「それはお前に追いつけるようにさ。」
未だに顔を見せないお婆さんに少し疑問を感じながらアンリはまた問いかけた。
「お婆さんの手はそんなに大きかったかしら?」
「それはお前を抱き締めるためだよ。」
「お婆さんの耳はそんなに大きかったかしら?」
「それはお前の声を聞き逃さないためだよ。」
ここでアンリは止めるべきだったのだ、気付くべきだったのだ。
だが、アンリは昔からどうしようもなく鈍臭かった。
「お婆さんの口はなぜそんなに大きいの?」
「それはお前を
食べるためだよ。」
それに気付いたアンリが声を上げる前にベッドの中の腕が素早くアンリの腕を掴み、そしてベッドの引きずり込んだ。
突然のことに驚き声が出ないアンリにベッドの中の人物は噛みつくようなキスをしてきた。
ポカンと開けていた口に問答無用で舌が入り込み、アンリの舌先を絡め、吸い、縦横無尽に暴れまわった。
空気を求めて大きく口を開こうとするともっと深くと云わんばかりに絡めてくる。
やっと唇が離されたときにはアンリの顔は赤く染まり目は潤み、唇もふるんと腫れぼったくなっていた。
それを見て彼はとろけるような美声で
「良い表情するようになったなアンリ。すげえそそられる。」
と言うとアンリの頬をベロリと舐めた。
それに気付いたハッとなり相手の顔を仰ぎ見た。
「ク、ラウド…?」
そこに居たのはアンリが想いを寄せながら諦めた幼馴染み。ここに居ないはずの狼の獣人、クラウドがいた。
アンリが呆然としながら名前を呼ぶと、嬉しそう金色の目を細め、クラウドの後ろにある艶やかな黒い尻尾がバサバサと大きく揺れた。
「あぁ、そうだ。もっと俺を呼んでくれ、やっとお前を呼べる、やっと抱き締められる。やっと俺だけの物にできる。俺の、俺だけのつがい…。」
「や、ちょっと待って!本当に?本当にクラウドなの?何時帰ってきたのよ?!それに、それに…。」
色々言いたいことがある。ありがとうって言いたいし、ごめんなさいって謝りたいしそして…。
言葉の代わりに出てきたのは溢れるほどの涙だった。頬を伝い零れ落ちる涙がアンリの想いの丈だと言わんばかりにアンリは泣きじゃくった。泣き止まないアンリをクラウドは愛おしそうに頭を撫で、舌で涙を掬い、優しく抱き締めた。
昔と少し手触りが変わった毛に顔を埋めながら、しっかりとクラウドの背中に手を伸ばした。
「初めて会ったときからつがいだと気付いてたんだ。」
私を前に抱き込みながらクラウドは呟いた。
素肌がクラウドの毛で包まれ普段の服より数段暖かい。
「始めてってあの花畑で?」
「あぁ、それから大変だった。両親を説得してアンリと離れるなら死んでやるとか言って無理矢理ここに住んだりな。」
どうやら私より先にクラウドの方が私に惚れてたらしい。
「だけどお前を怪我させちまって、あの時は本当に死ぬかと思った。俺の目の前で頭から血を流して倒れるアンリを見て、目の前が真っ暗になった。」
そう言うとクラウドま私の額にある傷痕を恐る恐る
撫でる。まるであの時を思い出すかのように。
「それからは生きてる心地がしなかった。お前を失ったら俺は多分そのまま狂って死んでいただろう。」
それくらい獣人の愛は深い。クラウドは話しながらも私を抱き締めた。毛皮に隠されながらもしっかりとついた筋肉、壊してしまわないように優しく抱き締めてくれている。私はクラウドの胸元に頭をくっつけた。ここに私がちゃんといることを証明するように。
「やっと部屋から出てきてくれたと思ったら、俺を見たアンリは『化け物!』って泣き叫ぶしな。」
あぁ、そうだ…。前世の記憶で混乱していた私は、心配してくれていたクラウドを見てとても酷い言葉をぶつけたんだ。
「ごめんなさい…。あの時は本当にごめんなさい。」
「大丈夫、確かにあの時はショックで死にそうになったけど、頭をぶつけて混乱していただけだと分かったんだ。もういいんだ。」
「それから俺の両親とアンリの両親に話した。アンリが俺のつがいだということ、アンリを嫁に貰いたいという事。」
「え!?あんな事があってすぐ言ったの!?」
「あぁ、俺のアンリへの愛を知ればおばさんとおじさんも分かってくれると思ってたからな。」
まあ、当然の如く両方に却下されたが。とさらりと言うクラウドを見てアンリは呆然となった。まさか自分を化け物発言をした相手をすぐに嫁にほしいとか、
「言っとくが、つがいを見つけた雄なんざ大抵そんなもんだ。何が何でもつがいを我が物にする、それが獣人の本能なんだよ。」
「じゃあなんで今まで私の前に現れなかったの?」
「…そうゆう掟なんだよ。」
「掟?」
クラウドは気まずそうに私から顔を背けポツリと呟いた。
「『つがい、または本人が成人していない場合は成人するまで会うことを禁ずる』だからそれを知った親父達が俺を引きずりながら実家に引き返したんだよ。
「じゃあ今までその掟を守ってたの?」
「こっそり見に来たことはあった。何度お前の前に出ることを我慢したか…、それに成人祝いはつがいに貢ぎ物をしてそれを相手が身に着けたらつがい成立なんだ、だからこの日をずっと夢に見てた…。」
そう言うとベッドの隅に落ちていたショールを拾い上げ私の頭にフワリとかけた。
「っ、綺麗だ。やっぱりアンリは赤が似合うな。」
愛おしくてたまらないとでも言うようにショール越しに頭にキスを繰り返すクラウド。
どうやら今回の事は母と祖母も一枚、いや全て仕組んでいるようだった。
つがい成立やら獣人の掟やら全く知らされてなかった私だが、未だにキスを繰り返す愛おしい狼をみてふと笑ってしまった。
まあ、いいか。
言いたいことは山ほどある。怒りたい気持ちもある。
けど、今はこの愛おしい狼の傍で
貴方に包まれていたい。
それから、私とクラウドはつがいになるんだけど。
クラウドの家が実は伯爵様だったり、お婆さんが実は魔女だったり、別の獣人が何故か私に求婚してきたりするのですが…。その話はまた今度。
ひとまず、このお話はここでおしまい。
前世で読んだ、御伽噺のように狩人に助けられたりしなかったけど、それなりに幸せだった私のホントの話。
完
書き上げれてよかった涙
目を血走らせながら書き殴ってほぼ一夜漬けでかき揚げました。たぶん日が開いたらムリデシタ。
もっと詳しく書きたかったなぁとも思うんですが何分眠気が今もうピークでして…!
寝たら多分ネタ忘れる、絶対忘れるとか思いつつ書きました。
こんな最後まで読んでいただいて本当にありがとうございます。
まだ見える機会があればどうぞよしなに。
かる