3話:神と神
今回は早くできました(*≧∀≦*)
レイドタウン――商業が盛んなこの街では至る所で商人が客を呼び込んでいる。
色んな店が連なるなか一つの宝飾店の前には行列ができている。
「いやー、悪いね。今日はもうお開きなんだ」
大繁盛故に品物切れになった店の男は人のいい笑みを浮かべながら客に謝っていく。
客がどんどん引いていくなか一人の少年は移動することなく佇ずんでいた。
「ねぇ、おじさん、ボクに一つ何かくれないかい」
その子供は俯いたままポツリと小さく呟く。
「いやー、悪いねボク、もう今日の分は終わったんだ」
店主の男は優しい声音で少年に伝える。
「いいじゃないか、君とボクの仲だろう――なぁ? ユクドラシル」
「ボク、それはこの国の神様の名前だ、軽々しく呼んではいけないよ……とくに」
神の名を呼んだ少年に優しい声音で話していた店主は、しかし、その声を相手を怯ます力強い声に変えていく。
「貴様みたいなガキみたいな奴は絶対に呼ぶんじゃない」
「んふ、それは君も人の事をいえないだろ? いや、神の事か」
少年はニヤリと子供のような純粋で残虐に嗤った。
「ちっ、場所を変えるぞ、こんなところで力を消費すんのも勿体無い」
「うん、別にいいよ」
「もうこの辺でいいでしょ?」
「そうだな」
レイドタウン上空三千メートル、そこに二人の神は立っていた。
「んで、悪戯狂いはワザワザ何しに来たんだ」
ユクドラシルはつんけんした言い方で話す。
「あははは、ひどい言い草だね戦闘バカ……何しに来たかだって、君が勝手にしてくれた事を聞きにきたんだよ」
笑みを絶やさなかった神が初めて怒りの雰囲気を放つ。
「勝手なこと? ああ、あの少年の事か」
「ああ、そうだよ! 龍聖くんを君が勝手にあんな場所に転移させたことだ」
少年の神は自分の玩具を取られた子供のように怒り叫ぶ。
「なに、あの少年はワシから見ても面白いからな、あの場所に行くことでさらに成長すると思ってな。きっと、貴様にとってもつまらない結果にはならないと思うぞ?」
「何だって……なら、いいか」
ケロリと一瞬で少年の神は怒りを消す。
それどころかどんな楽しいことになるのかと楽しそうにさえしている。
「ねぇ、楽しいことになるのはいいけどさ~、ユクドラシル他にもボクに説明することがあるよねぇ」
「はて、そんなものあったかな」
ユクドラシルはおどけるように首を傾ける。
「あははは、やめてくれよ。思わず壊してしまいそうだ。だから、話してくれよ、龍聖君と何を話したんだい」
少年はユクドラシルにリュートを転移させる刹那にした話の内容を問いかける。
「ふむ、大した事ではない……ただ、絆を大事にしろと、そう言っただけだ」
「あははははははは、流石神様、良いこと言うじゃないかい」
少年はバカにするようにユクドラシルを褒め称える。
「何、あの少年はこのままでは一人になってしまうだろう。ワシも神としてそんな人間につい助言くらいしたくなるのさ」
ユクドラシルは神らしく慈愛に満ちた微笑みを少年の神に向ける。
「では、何で彼の『楔』を外してしまったんだい」
「貴様の楔のせいであの少年が死んでは目もあてられない」
「確かにあれは龍聖君のポテンシャルを抑制するものだ。いきなり最強じゃあ成長物語を楽しめないからね……だからね、ボクはこれに関しては君を許せそうにないんだよ……」
少年の声は小さく押さえられている。だが、怒りの具合は先程とは比べ物にならない威圧感をもっている。
「これじゃあボクの楽しみがなくなってしまうじゃないか!!!」
その瞬間世界が崩壊する―――――――
「っと、何考えているんだこのくそガキ」
というのは、ユクドラシルによって防がれた。
「邪魔をするなユクドラシル、君はボクの楽しみを奪った。龍聖くんを楔によって死なないように抜いた? ……ちがうね! 君はただ、龍聖君との戦いを楽しみたいだけだ!」
少年の指摘を受けたユクドラシルは初めてまるで少年の神のように純粋で残虐な笑顔を見せた。
「君は自分だけ楽しもうとボクの物を奪った。なら、こんな星に干渉できなくなるくらい構わない!」
神には世界に干渉できる限界というものが存在する。干渉限界を越えるとその神は世界から隔離されてしまう。そうでもなければ世界は神によって滅ぼされてしまう。
「どうした悪戯の神よ、そんなに声を荒げて、らしくないぞ」
「ユクドラシル、君はわかってないな。先の見えない物語は彼でしか楽しめないんだ……それに、ボクはね物語だけでなく、彼自信にも興味があるんだよ」
「なに?」
ユクドラシルは眉をひそめる。少年の神はこれまで自身の楽しみのために何億人もの人の人生を狂わし楽しんできた。しかしそれは、物語を楽しむだけで登場人物に興味を抱く事なんてこれまで無かったことだ。
「ねぇ、ユクドラシル。ボクはね、ものすごくイケメンなんだよ」
「は?」
ユクドラシルは今度こそ本当にどうしたのかと怪訝そうにする。
「何を言っている?」
何故なら――――
「貴様は無貌の神、顔などないだろう?」
ユクドラシルはおうとつのない少年の真っ白の顔を見つめる。
「そうボクは無貌の神、なのに何で龍聖くんにはボクの顔が見えたのだろう。不思議だ、知ろうにも彼を見通すことは出来ない……くく、分かるかい? ボクは今、全知全能の身でありながら彼を知りたいと彼のみを欲しているんだよ」
無貌の神は無貌の中で確かに狂喜の笑みを浮かべる。
「一人で何を笑っているんだ?」
「いや、何でもないよ。それよりもユクドラシル、君はボクの物を奪っておいて何か釈明はあるかい」
無貌の神は底冷えした声で問いかける。
「ふむ、先程からふざけているようだが別に私は貴様から奪ってなどいない。むしろ、貴様にとっても都合がいいだろう?」
貴様の狙いなど気づいているぞとユクドラシルは少年を睨み付ける。
「……なーんだ、バレてたのか」
まるで先程までの感情の変化全てがちょっとした悪戯だというように無貌の神はペロッと舌をだしておどける。
「貴様が狙っている少年がどんなものかと視た時は驚いたぞ。少年の運命が見えなくて、それだけではなく、"その仲間全員の運命が見えないのだから" しかも、それだけではない……少年のあのスキルだ」
ユクドラシルの心底驚いたという発言に無貌の神は嬉しそうに何度も頷く。
「そう! そうなんだよ! 彼は面白いんだ。何せ転生そうそう僕が予想だにしていなかった事になっているんだしね。知っているかいユクドラシル、彼が最初に降り立ったのはベーマの森っていうんだけど、ボクは本来その森ではなくその森を抜けたファートス村の近くに彼を転移させるつもりだったんだよ。ね、彼は凄いだろう。その予定外の事でさらに面白い事にもなったし本当に龍聖君は最高だよ」
少年の神は自身の体を抱き締めて恍惚そうに悶える。
「けっ、何が面白い事だ。あのようなものをワシは好まない。だから少年に忠告をしたんだよ」
ユクドラシルは心底気の毒そうにする。
「しょうがないよ。止めることはできない。これもまた、彼が綴る物語なのだから――たとえ悲劇であろうともね」
「ふん、悲劇の原因を作り出し、なおかつそれを楽しむからワシは貴様が嫌いなんだよ。だが、これだけは言わせてもらうぞ。悲劇を喜劇に変えることはできる」
何故なら少年の物語を決める事が出きるのは少年自身なのだから――――ユクドラシルは自分と会話した時のリュートを思い出しながらそう話す。
「なら、それもまた楽しむだけさ」
無貌の神は広角を限界までつり上げてにこりと笑う。
「ふん、やはり貴様は嫌いだ」
「おや? 帰るのかい」
ユクドラシルが地上に戻ろうとしてると気づいた神が聞く。
「ああ、もう話はいいだろ」
「そうだね。どうやらユクドラシルは自分が楽しみつつもボクの邪魔をするわけでもないようだし、もう帰ってもいいよ」
少年がそう言ったと同時にユクドラシルの足元に魔方陣が浮かぶ。
「地上に戻る前に貴様にも忠告だ」
魔法を待機してユクドラシルは最後にと無貌の神に声をかける。
「うん? なにかな?」
「楔を抜いた少年がどうなるかは誰にも分からん。あまり悪戯がすぎると足を掬われるぞ」
その言葉を最後にユクドラシルが無貌の神の前から姿を消す。
「足を掬われるぞ、ね~」
一人残った神はユクドラシルの言葉に笑みを絶やす事がない。
「あはっ! それもまた面白い!!」
無貌の神はリュートによって起きる事全てが楽しいと笑う。子供のような純粋で残虐な哄笑を絶えることなくレイドタウンの上空に響かせていく。
次回は魔族です!




