2話:会議と決定
本日2話目
今回は魔族側です。
ここは神龍王国より遠く離れたとある地。
そこは強力なモンスターが蔓延り、闇を好む種族が住む国、その中でも特に地位の高い者だけが入れる宵闇に包まれた黒い城がある。
そのお城の中の重要な話をする大会議室では円卓に7つの席があり、その中の6つには座っている者がいる。
「ベルフェゴールの野郎はまた遅刻か!」
空席の主が現れない事に髪を狼のたてがみのようにしたウルフカットで目が鋭くワイルドなイケメンの男が怒り円卓を叩きつける。
「落ち着けサタン。アヤツが来ない事は分かっていただろう」
怒りのサタンを肩まで髪を伸ばしていて肌が驚くほど白いこれまたイケメンの男が宥めている。
「そうだよサタン。ルシファーの言うとおりだよ。ベルフェゴールが間に合った事なんてないじゃないか」
「黙れこのくそ女」
ルシファーに乗った水色の髪に身長が130cmと小さいのに胸が服を押し上げる程大きい美少女にサタンは怒鳴る。
「おいおい、サタン。レヴィちゃんに当たるなよー」
「そうじゃ、レヴィアタンに当たってもしょうがないじゃろ。少しは落ち着けいサタン」
関係ない者にまで当たるサタンに髪をオールバックにした甘いマスクの男とスキンヘッドにアゴヒゲのごつい肉体を持つ男が叱る。
「んだと……殺るのかよ」
サタンが殺気を出してあわや大惨事かというときにのんびりとした声が響く。
「落ち着きなさい。サタン。マモンとベルゼブブはあなたを思って叱ったのよ~。それよりも会議をしましょう~」
紫色の髪を腰まで流しこれでもかとボンデージから胸を溢れさす妖艶な女がやることをやろうとまとめる。
「チッ、ビッチの言うことを何で聞かなきゃなんね――」
「そうだよなぁぁ、アスモデウスの言うとおりだぁぁ」
サタンが話す途中に新たな声が聞こえてくる。
その男はボサボサの髪に無精髭で眠そうなタレ目のだらしない見た目の男だが、その顔が整っているのは見れば分かる。
「てめーベルフェゴール! 何遅れてんだよ!」
やっときた空席の主にサタンは立ち上がり怒る。
「えぇぇ、まだ会議はじまってないじゃんよぉぉ」
現れたベルフェゴールは面倒くさそうにはなす。
「キサマの自業自得だ」
「僕もいつまでも話すサタンが悪いんだと思うよ」
「自分で怒りながら自滅とかサタっちらしいー」
「これもまた然り」
「アラアラ残念ね~」
「チッ」
さすがに全員では分が悪いのでサタンは音を立てながら座る。
「それでは、全員集まったようだし会議を始めるぞ」
ルシファーが話を進め始める。
「先ずは私から話そうと思うが異存がある者はいるか」
それから少し間をあけるが異存を挟む者はいない。
「フム、なら話すぞ。私の部下のビフロンが何者かに殺られた」
「誰だそれ?」
聞いたことのない名前にサタンが首を傾げて答える。
周りを見ても皆、サタンと同じ様な反応をしている。
「私の部下の中でも有能な方だった男だ。それが人間の村を襲わせた時に死んだんだ」
「だから、んな奴知らねーし。それに殺されるような雑魚なんてどーでもいいだろうが!」
サタンはそれがどうしたと怒るが他の皆は違った。
「本当にサタンはバカだよね」
「んだと、くそ女が!」
サタンがレヴィアタンに怒鳴るが他の皆もサタンに呆れた視線を送ってくる。
「いいかしら~サタン。ルシファーが中々有能な者と言ったのよ~。それを人間の村、つまり人間に殺された可能性が高いということなのよ~」
「……まっ、まぁわかってたけどな」
やっと理解したサタンは口笛を吹きながら席に座る。
「皆も理解したようだが、これは人間の仕業だ」
「アラアラ、本当にそうなのね~」
予想していたとはいえ人間の仕業だと知りアスモデウスは驚く。
だけどその後にルシファーが言ったことにこの場の全員が驚く。
「殺ったのは十歳の少年だ」
「おい! 嘘つくなよ人間の……それもガキが魔族を殺せる訳ねーだろ」
「さすがにそれは僕もないと思うよ」
「ルシルシー、嘘はだめたよー」
「ウム、それは真実なのだろうな」
「ハハ、本当だったらすごいけどねぇぇ」
ルシファーの言葉を誰も信じていない。
「あら~私は信じるわよ~。ルシファーがうそなんてつくはずないもの~」
「信じなくてもいいが、話は続けるぞ。少年の名はリュート。顔を仮面で隠し、その素顔を見たことのある者はいないようだ。分かっている見た目は真っ白の髪に金色の目だという事だけだ」
ルシファーの説明に顔を輝かせる者がいた。
「あら~、なんかその子に惹かれるわ~。んっ、火照ってきちゃっ……た」
アスモデウスは顔を赤くして体をくねらせる。
「チッ、このビッチが。……んでそのガキをどうすんだよルシファー……殺んのか?」
「いや、この少年は一週間で人間達の間で有名になった。私が監視をつけたので今はまだ様子見でいいだろう」
「あん? 相変わらず慎重だな」
サタンはルシファーを鼻で笑う。
「それもあるがもう一つ重要な用件ができたからな」
「えぇぇ、まだあるのぉぉ」
ベルフェゴールは面倒くさそうにいう。
「人間の王国の勇者の成長が思った以上に早いらしい」
ルシファーが言った事に面倒くさそうにしてたベルフェゴールを含めた全員が真面目な顔つきになって空気が張りつめる。
「ルシファー、早く続きを話せ」
「ウム、人間の王国に居る仲間によると、二週間で余裕でミノタウロスを倒せるようになったようだ。このまま成長させるとどうなるか分からないとの事だ」
「それはもちろんわかってるよねールシルシ」
マモンが真剣な声でルシファーに話す。
「ああ、もちろんだ。勇者達は2ヶ月後に一度訓練を終えるらしい……その時私の部下に王都を襲撃させる。異存がある者はいるか」
その問いに異存を挟む者はいない。
よって決まった。
「では、2ヶ月後に王都を襲撃する」
全ては魔王様のために……
円卓に座る者は声を揃えて唱える。
勇者が魔王を無視できないように、魔王も勇者を無視できない。
どんな事があろうとも。
2ヶ月後世界が動くだろう。
そしてそれには、今回見逃された一人の少年が関わっていく。
魔族のキャラがわかりにくいかもしれません。
次回はまた勇者側を書こうと思います。
二章の最後に時間軸が繋がります。
誤字脱字や感想等があったらどしどし送って下さい!!