1話:初めての町と冒険者ギルド
二章がはじまりました。
主人公のチートが無双しまくりです。(予定)
緑の香りがそこら中に満ちわたる森の中、それとは別に鼻につく鉄の香りが森の一部で満ちている。
その発生源は幾つにも積まれた、モンスターの死骸が放つ血の香りだ。
「しつこいな、何匹出てくるんだ」
モンスターの死骸の山の近くでそうしゃべる者がいる、この言い方から、この山を築いたのはこの者なのだろう。
モンスターの山を築いたのは、銀の仮面をつけ、白い髪を持つ、十歳位の子供だ。
「……もう少しの、辛抱。もうこの森を抜けられる」
そう話すのは、鮮やかで金髪の長髪を持ち、目が赤く、そして普通の人間よりも長い耳を持つ、可憐なハーフエルフの少女だ。
『そうですよ、リュートさん、もう少しですから』
そう少年に念話を送るのは、粘液状の塊である、モンスターのスライムだ。
スライムに念話を送られた少年――リュートはワルドの館から出てから既に数時間森をさ迷っていた。
「いや、でもこれ、まじで平気か、もう三時間くらい歩いてるけど、上から見たときはそんなに遠くなさそうだったぞ」
「……大丈夫、今度こそ、もう森を抜けられる」
まぁ、それならいいんだけど。
「でも、ニーナもライムも、この近くの村には行ったことないんだろ」
『確かに、私もニーナさんも、行ったことはありませんけど……ほら見えて来ました』
ライムの言葉と同時に薄暗い森から、光が刺さる道がみえる。
「……太陽か」
森から抜けると久し振りにハッキリと太陽をみる事ができた。
どうやら本当に森を抜け出したようだ。
そのまま真っ直ぐ進み、30分くらいたった時だろうか、人が住んでいる証である、木で、できた建物が見えてくる。
「着いたか」
リュート達は先に見えてくる村の入り口の柵を通り、村に入る。
通りには何人もの、人が歩いており、何人かがこちらを見ている。
「おい、お前さんら、子供二人がこんなへんぴな村にきて何の用だ」
村の門番だろうか、防具をつけた男がリュートとニーナに声をかけてくる。
子供二人がといっているが、ライムを置いて来たわけではない。ライムは俺のショルダーバッグの中にちゃんと隠れている。
「僕たちは両親が死んでしまったので、働ける所を探しにきました」
「まぁ、そうだろうな、キツいことが沢山あると思うが、頑張りな」
さすが異世界だ。親が死んで子供が働きに来ることは日常的に起こることなのだろう。
「それで、オススメの所はあるでしょうか、これでも実力には自信があるのですが」
俺は一度、地球でファンタジー物のライトノベルというものを読んだことがあるが、
モンスター等がでる物語では冒険者ギルドというものがあったので、遠回しに聞く。
「冒険者ギルドに入りたいのか? なら、一応言っとくが命は大切にしな、……冒険者ギルドは、このまま進めばある」
「ありがとうございます」
お礼を言ってから、門番と別れ冒険者ギルドに向かう。
道を歩いていると、近くの出店から香ばしい食べ物の臭いがしてくる。
「……ねぇ、リュート、……お腹すかない?」
香りに触発されて、食べたくなったのだろうがここは合わせてあげるのが常識だろう。
「そうだな、少し何か食べてから、ギルドに行こう」
「……んっ、たべる」
ニーナの表情は変わらないが目を輝かせて嬉しそうな空気を発する。
「ねぇ、おじさん、その美味しそうな香りのお肉いくら」
出店に寄ったリュートが、串に刺さった肉の値段を店主に聞く。
「おっ、ボウズ、見ねぇ顔だな」
「僕は仮面をつけてるからもともと顔が見えないけどね」
「ハハハ、ちげぇねぇ、ボウズおもしれぇな、よし! 一本、銅貨3枚の所を2本5枚にしてやる。あそこにいるエルフの嬢ちゃん、ボウズの連れだろ」
一人じゃ、買いに行けないからとリュートが来たが、あそこまでジロジロと見るならこればいいものを。
「そうです。どうやら一人買うのは、恥ずかしいみたいで、あっ、2本買います」
店主に礼をいって出店を離れたリュートは肉をニーナに渡す。
「……! うまい」
ニーナはそれから無言になり、肉にかぶり付く。そんなに美味しいのだろうか。
リュートは肉を見つめ、ゆっくりと口を近づけていく。
……! なんだこれは、
肉が舌に乗った瞬間に“ジュワッ”と、とけて、香ばしい肉に甘辛いソースが絶妙の味を生む。
「何の肉なんだこれ」
出店の看板をちゃんと見ると、『一角兎の串焼き』と書いてある。
これは、初日に見たあの一角兎なのか、
兎の肉なんて食べたことないが、ここまで美味しいのか。いや、この味は地球では、なかなか食べれないだろう。
「なぁ、ニーナ、これライムも食べてないしあと3本ほど、買わないか」
これは、もう一本は食べたいと思ったのでニーナに聞いてみたが、ニーナも嬉しそうな空気をだして。
「……んっ、さんせい」
串焼きを、さらに3本買ってから、今度こそ、ギルドに向かって歩いていく。
門番が言っていた通り、真っ直ぐに歩いてたら、直ぐに冒険者ギルドに着いた。
建物は木で出来ていて、高さが三階分くらいある。建物に大きい看板がついており、
でかでかと『冒険者ギルド、ファートスの町支部』と書かれてある。
両開きの扉を開き中に入ると視線がいくつもリュート達を貫く。
「なんだよ、お前案外、臆病だよな」
人の視線に怯えたニーナが後ろから服につかまってくる。
視線にさらされても、冷静なリュートは周りを見回し、どんな者達がいるのか観察する。
見た感じ二階まであるようで、一階にはテーブルがいくつもあり、そこにはお酒を飲んでいる、武装をしている男が沢山いる。
(うーん、むさ苦しい男ばっかだな、これじゃあ、ニーナが怯えてもしょうがないか、ギルドについて知るには、まずは受付か)
ギルドについて聞くにはやはり、受付だろう。長い机があり、受付嬢であろう女性が
三人程、座っている。
とりあえず真っ直ぐにある、受付に向かう。
「あの、すいません、冒険者になりたいんですけど、どうすればなれるんですか?」
「はい、冒険者になるにはギルドにて申請をすれば、平気ですよ。……ギルドについての説明はお聞きになりますか」
ちょうどいい、説明を聞こう。
「よろしくお願いします」
「はい、では少し長くなります――」
受付嬢の説明によると、冒険者ギルドの仕事は、主に依頼を受けてモンスターの討伐をしてお金を稼ぐ事だが、それ以外にも雑用に素材の採取、護衛など多伎にわたる。
それから冒険者にはランクがあり、Gランクから始まりSランクまであるらしく、又ランクが低くとも実力があれば個別依頼という、指名されて自分のランクよりもお金が多く貰える依頼を受ける場合もあるらしい。
「……というわけですが、わかりましたか」
「はい、ありがとうございます」
一度受付嬢との話を終えたリュートはニーナと話す。
「ニーナ、俺は冒険者になるべきなんだと思うが、どうする?」
「……んっ、私も強くなるべきだと思う」
ニーナの賛成も得れたし、これで決まりだ。
「あの、僕たち、冒険者になろうと思います」
「はい、ではまずステータスを計らせてもらいます」
「ステータスですか?」
「はい、最初はGランクから始まりますが、ステータスを知っておく事はランクアップの時期を見極める一つの要素になるので」
確かにステータスを知らないとGランクから、才能がある者がチャンスをもらいにくいしな。
(どうする、俺のステータスは年齢に合わない程高いし、注目されても面倒だ)
そこで受付嬢が、ステータスプレートをだす。
ステータスプレートとはステータス水晶の簡易版で触れた者のステータスをプレートの上に写す効果がある。
もちろん、ニーナが触れても本来のステータスは写らないだろうし、このプレートはあくまでもステータスの数値しか写せない。
(なら!)
リュートは咄嗟にライムを服の内側から通し、相手から見えないように触れさせる。
ステータスプレートにはこう写った。
Lv:22、HP450、MP500
力200、耐久220、敏捷350、器用300
スキルが書いて無いのは、スキルは誰かに漏れないようになっていて、ステータスプレートでは写さないようになっている。
「はい、確認しました。では次は名前と年齢書類に書いてください」
書類に名前と年齢を書いて、渡す。
「はい、リュートさんとニーナさんですね。冒険者は辛いこともあると思いますがどうか頑張ってください」
登録が終了して、さっそく依頼を受けようかとニーナと話ながら、受付から離れようとした時、一人の男がお酒が入った、ジョッキを持ちながら、話しかけてくる。
「お前らみたいなガキが冒険者だと~、いるんだよな、たいした覚悟もなく冒険者になるやつが」
どうやらリュート達が冒険者になるのが気に入らないらしい。
「酔っているんですか、モーブさん、彼らはまだ子供で新人です、Dランクの貴方が絡まないでください」
「いいんだよ、メイリーちゃん、新人には教育をしてあげないとな~この町のトップの俺がな~」
この男はDランクでしかもこの町のトップだというので、どのくらいのステータスなのか、【神眼】を使った俺は驚いた。
モーブ(人間)
Lv:45、HP2000、MP1200
力1500、耐久1800、敏捷1500、器用400
スキル:頑強、剣術
Dランクとは……この町のトップとは、こんなにも弱かったのか。
どうやらリュートは、この町の中でも最強だったようだ。
二章がはじまりました。
作中で書きましたが、実際兎の肉はどんな味なんでしょうね。
誤字脱字や感想があったらどしどし送ってください。