いきなりの質問
「それで、あの後桃華ちゃんとは上手くいってるの?」
学校に到着するなり、葵が質問してくる。
「もちろん。てか上手くいきすぎて怖いぐらいだよ」
あの後とは、誕生日の後のことだろう。
桃華は毎日指輪を付けてくれるし、仲良くやってる。
たまに布団に潜り込まれるのは、勘弁してほしいけど。
「にしても、あの時の純平くんかっこよかったな〜」
「恥ずかしいからやめてくれよ」
今思い出すだけでも、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「前にしゃがんじゃって、指輪を差し出すなんてプロポーズだよ。女の子なら憧れるシチュエーションだよね」
「やっぱり葵も憧れるのか?」
「あのね〜、私だって女の子なんだよ?」
これは失礼な質問をしてしまった。
「それでさ、キスとかしたの?」
ブフォ!
飲みかけていたジュースを盛大に吐き出してしまった。
「純平くん大丈夫?はやくティッシュを」
葵に言われて、教室に備え付けられているティッシュで机を拭く。
教科書は何とか汚さなくて済んだ。
慌ただしくしていると、始業のチャイムが鳴る。
それとほぼ同時に教師も入ってくる。
今から授業なのだが、どうも頭が働かない。
諦めて寝る事にした。
キスはしたの?
この言葉が頭から離れない。
「はぁ〜」
「どうしたの純平くん?悩み事?」
お前の一言で悩んでるんだよ。
などと言えるわけもなく。
「いや、悩みって程ではないかな」
好きならキスとかしたいよな。
でも、それで拒絶されたらと考えると、怖くて仕方なかった。
「葵お姉ちゃんから一つ助言をあげよう。悩んだら行動あるのみ!」
そう言ってドヤ顔している。
行動あるのみか、ここでクヨクヨ悩むのも嫌だし、ちょっと行動してみようかな。
失敗したら、失敗した時に考えればいいか。
「ちょっとは解決できたかな?」
「まあ、少しだけな」
「純平くん、君が選んだ道は生きている限り必ずどこかに繋がっているんだよ。たとえどんなに悪い道でも、必ず取り戻す道もあるんだよ」
「なんだよ、いきなり」
「いや、ちょっと良いこと言えたかなと思って」
相変わらずドヤ顔の葵である。
「最後のが無かったらもっと良かったかもな」
何だかんだ言いながらも助けてくれる。
そんな葵に言葉にはしないけど、感謝している。
言葉にしてしまうと恥ずかしい。
「葵に元気もらったし、ちょっと頑張ってみるか」
その日の帰り。
頑張ると宣言した以上、ある程度の努力はしようと思うが。
「何したら良いのか分からない」
桃華は家族だが、それ以上の関係になりたいな。
しかし、具体案が出てこない。
「キスってもな〜」
キスしたいが、やはり関係が壊れてしまうのが怖い。
「桃華〜、お兄ちゃんどうしたらいいんだ?」
「お兄ちゃん呼んだ?」
後ろから声がして振り向くと、何故か桃華が立っていた。
「どうしてここに?」
桃華は今頃家にいるはずだ。
「どうしてって、これだよ」
桃華は手に持ったビニール袋を指さす。
なるほど、買い物に行ってたのか。
「あれ?食材無かった?」
ちゃんと食材の買い出しはしているはずなのに、何か足りないのがあったのか?
「ちょっとした調味料だよ。一度使ってみたくて。」
なるほどな、買い出しが足りていないわけでは無かった。
「それで、お兄ちゃんいきなり私の名前を呼んでどうしたの?」
うっ、聞かれていた。
「い、いや、何でもないはず」
「えっ、何それ?絶対何かあるでしょ?」
俺のアホ!なんて煮えきらない答え方をしてしまうんだ。
「何でもないことは、ないんだけどさ...」
「どうしたの?」
「さすがに、言いにくいと言いますか...」
キスしたいなんて言いにくすぎる。
「何でも言ってよお兄ちゃん、私はお兄ちゃんな何言っても嫌いにならないよ」
天使だ。だったら言ってみようかな。
「...あのな」
「うん」
俺の真剣そうな顔に、桃華にも緊張が走る。
「桃華とキスしたい」
「ふぇ?」
桃華はキョトンとしていた。
「桃華とキスがしたいんだ」
聞こえてないのかと思い、もう一度言う。
桃華の顔がみるみる赤く染まっていく。
「お、お兄ちゃん...」
「どうした?」
「お、お兄ちゃんのエッチー!」
「あっ、桃華ちょっと待ってくれ」
桃華は家とは逆の方向に走った。
「あっ、コケた」
ビターンと音がなりそうなぐらいに、盛大にアスファルトにダイブした。
「戻ってきた」
泣きそうな顔をして、桃華は戻ってきた。
「お兄ちゃんのエッチ...」
その後、家に帰るまで二人とも無言だった。
皆様、大変お待たせ致しました。モブ俺の最新話です。
現在、テスト期間で投稿が大幅に遅れております。
お待ち頂いている皆様には大変ご迷惑をおかけします。
何とか今回も更新できましたよ。
今回は桃華の可愛い姿が見られる回です。
桃華押しの人に喜んでいただけると嬉しいです。
次回の更新はなるべく早くします。
にしても、桃華の誕生日は楽しかったな〜
やっぱり女性の方はあんなふうに指輪を渡されると嬉しいのかな?
男の私には分からない所なので、書くのが難しかった。
そんな訳で今回もお楽しみください。
そして、いつも読んで下さっている皆様、この回だけでも読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。
ぜひ、今回も楽しんでいってください。




