宝石
「じゃあお兄ちゃん、二人の勉強を見てあげてね」
そう言って、桃華は料理を作りに部屋から出て行った。
「桃華ちゃんのお兄さんに勉強を見てもらうのはとても緊張しますね」
「ユキも緊張してしまうの〜」
そりゃ、年上の人に勉強を見てもらうのは緊張するよね。
「二人とも、いつも桃華と仲良くしてくれてありがとう」
日頃の感謝を込めて、二人にお礼を言っておいた。
二人とも桃華と居ると楽しいから、感謝される事では無いと言ってくれる。
「まったく、桃華は良い友達を持ったようだ。それで、君たちに相談なんだけどさ...」
桃華のサプライズ誕生日を計画してる事を伝えた。
「桃華ちゃんの欲しい物は、あまり聞いたことが無いですね」
「ユキもあんまり聞いたことないの〜」
これは困ったな、何が欲しいのか分からない。
「そう言えば、この前ショッピングモールに言った時に、水着を見てたの〜」
「えっ、水着を?でも、桃華は水着あるはずだけど」
桃華の水着のサイズが合わないと聞いたこともない。
「それで、聞いてみたの。お兄ちゃんを悩殺するために買いたいなって言ってたの〜」
ごめん、俺には買えそうにない。
「お兄さんの気持ちが込められているものが一番だと思いますよ」
確かにそうなのだが、やっぱり桃華には一番喜んで欲しいからな。
「でも、お兄さんの気持ちも分かりますよ。喜んで欲しいですもんね」
この子は凄く人の事を理解してくれるな。
「なので、手作りのネックレスなんていかがでしょう?」
ネックレスを手作り?
「それ、ユキも作ってみたいニャー」
ユキちゃんも、乗り気である。
「実は、お友達のアルバイト先にアクセサリーを手作り出来る体験がありまして、そこで作ってはいかがでしょう?」
「それ、詳しく教えてくれない?」
ユキちゃん以上に乗り気の俺である。
「手作りのイヤリング、ピアス、ネックレスを作れるんですよ。それに、小さい宝石も入れられるので、プレゼントにピッタリかと」
「それはどこにあるの?」
「駅の西側のビルの隣の小さな宝石店です。金額もそこまで高くないので、高校生や大学生にも人気で大変と言ってましたよ」
よし、それを作りに葵と訪れるか。
「おまたせー、晩ご飯出来たよ」
料理が出来て桃華が戻ってきたので、それ以上の話は出来なかったが、良い事を教えて貰った。
「手作りネックレス?」
その日の夜に、電話で葵に今日の事を伝える。
「桃華の友達の話によると、金額も高くなくて学生に人気らしいんだ」
これなら、桃華も喜んでくれるだろう。
「すっごく良いんだけどね、どれぐらいかかるのかな?」
葵は完成までの期間を気にしていた。
誕生日に間に合わなければ意味が無いから、気にするのは当然か。
「その日のうちに出来るらしいよ」
こっそりと、桃華の友達二人とアドレス交換しておいたので、二人が帰ってから確認しておいた。
「じゃあ純平くん、学校帰りに一度行ってみようよ」
「そうだな、学校帰りに予約とか必要なのかも聞いておかないとな。夜遅くにごめんな」
夜遅くまで通話に付き合わせて、申し訳ないと思っていた。
「気にしなくても良いのに。それじゃあ、学校でね純平くん。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
よし、サプライズの準備は出来たぞ。
待ってろよ桃華、絶対に泣いて喜ばせてやる。
とある日の放課後。
「純平くん、早くしないと」
葵に急かされて、約束していた宝石店に向かっている。
「待ってくれよ、葵気合い入りすぎだって」
そこまで焦らなくても、閉店まではまだまだ時間がある。
「急がないとプレゼント用意出来なかったらどうするの」
確かに、ここが無理なら他の候補はよういしてないので、厳しくなってくる。
「かと言っておっちゃんにこのダッシュは辛いですって」
「純平くん同級生でしょ、ちょっとは頑張ってよ」そこから更に全力ダッシュをさせられた。
「少し休ませて」
宝石店の前でヘロヘロになっている俺は、葵に頼むように言った。
「純平くんはもう少し体力付けた方が良いと思うよ」
ヘロヘロの俺に対して、まだまだ余裕といわんばかりに言ってきた。
「ほらほら、中に入るよ」
葵に手を引かれ、店の中に入る。
店の中に入ると、涼しくて天国に来たような気分だった。
「やっぱり宝石って、けっこうな値段するね」
「どうしようかな、俺の手持ちじゃそこまで高いのは買えないぞ」
さすがに学生なので大きな金額は持ち合わせていない。
「純平くん、これなんて良いんじゃない?」
葵が指さしたのは、とても小さな、しかし美しく輝きを放つエメラルドだった。
「確かに値段的にも大丈夫だな」
とても小さいので値段的には求めやすくなっている。
「ここで、葵ちゃんの宝石知識。エメラルドは愛の象徴と言われていて、恋愛成就や無条件の愛とかの意味があるんだよ。愛する人へのプレゼントとしても人気なのです」
葵って物知りなんだな。
「だったらこれこそ今買い時だな」
愛する妹への誕生日プレゼント。それが愛を象徴する宝石。
「すいません、店員さん」
「今月ついに俺は餓死するかも」
「大丈夫だよ、何かあったらご飯あげるから」
宝石を買うまでは良かった。
買うまでの話だが。
.........
「これでネックレスを作りたいのですが」
店員さんは申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんなさいね。ネックレス作りの予約は埋まっちゃってて、指輪作りなら大丈夫なんだけど」
そう言われて、パンフレットの指輪作りの値段を見る。
「うぉ!」
値段が倍だった。
「純平くんどうする?」
しかし、ここで諦めると桃華の笑顔が...
「じゃあ、指輪でお願いします」
こうして俺は今月、餓死の危機に瀕することになった。
皆様お待たせ致しました。まっさんです。
モブ俺更新なのですが、ペース早くね?
自分でも驚きなのですが、ライターズハイ?
まあ、くだらないことは無しにして、本当に次々に投稿できて、話が浮かんできてと現在ノリノリです。
かと言って手は抜いていないですよ。
そして、次回はついに桃華の誕生日!
私もプレゼントを用意しておかないと(笑)
そんな訳で内容を少し。
作中に出てくるエメラルドの宝石言葉ですが、あれは本当に愛の象徴なのです。
調べていると、浮気防止とかの意味もあったりで少し怖かったですが、恋愛成就などの恋愛に関する言葉が多かったです。
私も結婚する時は、ダイヤよりもエメラルドにしようかな...相手いないですけど。
興味深い事が色々と書いてますので、良ければ皆さんも宝石言葉調べてみてください。
それでは、いつも読んで下さっている皆様、この回だけでも読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。
これからも読んでいただけるように、より良い作品を目指しますのでよろしくお願い致します。
ご意見、ご感想も頂けると改善に繋げられるのでよろしければ、お願い致します。