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戻りし記憶

 環境や状態が変わると世界が一変するとはよく言ったものだが、ここまで変わるとは自分でも思っていなかった。

 家の台所でエプロン姿の桃華が料理をしている。

 そう、今まで何度も見た事があるのにドキドキしてしまうのは環境が変わったからだろう。

「お兄ちゃんどうしたの?」

 じっと桃華を見つめていると、その視線に気がついた桃華が不思議そうにこちらを見つめてきた。

「いや、かわいいなと」

 ただ、素直に思った事を伝えた。

「お兄ちゃんのエッチ」

 なぜこの家の妹はすぐにエロに繋がるのか。

「それに今までもこの姿で料理してたでしょ?」

「確かにしていたのだが、環境が変わるとな」

「もっと桃華にメロメロになっても良いんだよ」

 と言いながら、エプロンの裾を持ち上げてアピールをしてくる。

 何と言うか、マジで可愛いな。

「お兄ちゃん、メロメロになっても良いんだよ?」

「もう、メロメロになってるよ」

 そうでなければ、妹と恋しようとか思わないだろ。

「お兄ちゃんってば嬉しい♡」

 桃華の顔は、桃のようにピンクに染まっていた。

「そんな事言っても、良いことなんてないんだからね/////」

 良い事は無いと言っておきながら、今日の晩御飯はいつもより豪華になっていたのは黙っておこう。


「......ちゃん」

「お兄ちゃん」

 誰かが俺を呼んでいる。

 その声に呼ばれ、目を開くと真っ白の天井。

「純平くん、良かった目が覚めて」

 そこには、泣いて顔が腫れてしまっている葵の姿。

 そして泣きつかれて寝ているのか、俺の手を握ったまま眠っている桃華。

 周りには心配そうな顔で見つめる両親や、親戚などが。

 あれ、あと一人いた気がする。

 俺と、桃華と、葵と、もう一人は?

 思い出したいのに、何故か出てこない。

「何でだよ、何で出てこないんだよ!」

 俺がいきなり声を上げたからか、みんなが心配そうにこちらを見てきた。

「お兄ちゃんどうしたの、怖い夢でも見たの?」

 心配そうに桃華が聞いてくる。

「純平くん大丈夫?」

 優しい声で葵が言ってくれる。

 しかしそんなことよりだ、もう一人の名前が思い出せない。

 恐る恐る皆に聞いてみた。

「もう一人の友達の名前が思い出せないんだけど、知らないか?」

 俺がその音を発すると、場が凍りついたように固まった。

 凍りついた場を、妹の声が溶かしたのだが...

「お兄ちゃん、何言ってるの?」

 その言葉に今度は、俺が凍りついた。

「何って、俺たちと一緒にいたじゃん。名前が出てこないけど」

 皆の俺を見る目がかわいそうな者を見る目に変わっていた。

「純平くん、まだ頭の整理が出来てないんだよきっと。それにね、あの場には私と純平くんと桃華ちゃんしかいなかったよ。それで純平くんが私たちを助けて代わりに...」

 するとまた葵は泣き出してしまった。

「ごめんね...私が周りを見て無かったから...」

 そう言って泣いてしまう葵。

 実際俺も泣きそうだった。何でみんなが覚えていないのか、なぜ俺だけが微かに覚えているのかわからなくて怖くなってきた。

「お兄ちゃん、大丈夫だよ。みんな助かったんだから」

 優しく諭すように言ってくれる。

 しかし、俺は信じたくない。だって誰か一人を忘れて皆だなんて言いたくないら。

 純平くん、私を思い出そうとしてくれてありがとう...

 どこからか声が聞こえる。

 周りを見ても口を動かす人間は居なかった。

 その声は俺の心の中に語りかけている。

 でもね、もう良いんだよ...

 良いわけがない。だって名前すらも覚えられていないんだから。

 人間は二回死ぬと言われている。一つ目が肉体、二つ目が精神であると。名前を忘れられるのが真の死だと。

 だからお前を殺したくはない、もっと一緒にいたい。

 なぜだろう、名前も顔もわからないのに、ずっと一緒に居たような気がする。

 純平くんだけだよ、そんなにも私を忘れまいと頑張ってくれたのは。

 そんな悲しそうなことを言わないでくれ。俺はもっとお前といたいんだ。

 ありがとう。生きてる間にその言葉は聞きたかったかな。

 紅葉は、純平くんにそこまで大切に思われて幸せだよ。

 純平くんも幸せになってね。誰と一緒になっても、私はいつまでも純平くんの味方だからね。


 ガバッ!!

 目を覚ましたらそこは病室ではなく、自室のイスだった。

 どうやら知らない間に眠ってしまっていたらしい。

 そして完全に思い出してしまった俺の過去。

 【紅葉】の名前を思い出すと同時に、当時何が起こったのかもすべて思い出してしまった。

 場所も日時も、ほんとにすべてを思い出した。

 しかし、なんであんな夢を見てしまったのだろうか?そう思いふとカレンダーを見る。

「今日だったのか...」

 あの忌まわしき事故から数年、またこの日がやってきていたのだ。

 今までなら気にすることの無かった一年の中のたった一日、その一日が特別だと思ったことなんて無かった。

「今まで思い出せなくてごめん」

 いや、本当は覚えていたのかもしれない。

 ただ思い出したくなくて、勝手に忘れたことにしていたのかもしれない。

「今日こそちゃんと向き合わせて欲しい」

 そう言葉にすると、俺は葵にあるメッセージを送った。

「お兄ちゃん起きてる?休みだからってずっと寝てたらだめだよ」

「桃華か、ちょうどいいところに。今から出かける準備をしろ」

 桃華はいきなりのことに戸惑っている。

「準備って何?お兄ちゃんどうしたの?」

「何って、線香とか蝋燭だよ。今から墓参りに行くぞ」

 桃華に準備してもらって、俺も出る準備をはじめた。

 その時、葵からも返事が来ていた。

 純平くんが行きたいなら良いよ、私もついて行くね。

 これでやっと挨拶にいける。

 今まで思い出せずに辛い思いをさせていた人に謝りたいんだ。

 急いで準備を済ませると、桃華の手を握り家を出た。

皆様お元気でしょうか?まっさんです。

ほんとにお待たせいたしました。

やっとモブ俺の更新ができました。

皆様はお盆は何をしていましたか?

私はお墓参りに行ってきました。

お墓の掃除をしていると、ご苦労様ですと声をかけられてとても嬉しかったこのお盆です。

皆様お忙しいとは思いますが、お墓参りはしっかりと行っていただきたいと思います。

それでは、内容を少しだけ。

今回の内容はそんなお盆と合わせた感じになってます。

記憶を取り戻した純平や、お墓参りに行こうとするなど、割とシーズンに合ってるのではないでしょうか?

今回は楽しく書けたので、その楽しさが皆様にも伝われば良いなと思います。

それでは、今回もお楽しみください。

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