選択その二
俺は…
葵が好きだ
→ 桃華が好きだ
兄妹だってわかっている。
血がつながっていて、好きになってはいけないこともわかっている。それでも、俺は桃華が好きなんだ。
「お兄ちゃん、私お兄ちゃんが好き…」
桃華も理解しているのか、少し切なそうに呟く。
「俺も桃華が好きだ」
「ほんとに?」
「もちろんだ」
しかし、親には言えないよな。
今は桃華と二人で暮らしているけど、いつかは親が帰ってくる。それに結婚もできない。
どうしようかと悩んでいると。
「お兄ちゃん、難しそうな顔してどうしたの?私も付き合うの嫌なの?」
「そんな事ないぞ、むしろ嬉しすぎるぐらいだ。だから、そんな悲しそうな顔しないでくれ。桃華は笑ってる時が一番可愛いんだからさ」
悲しそうな顔から一気に嬉しそうな顔に変わった。
「えへへ〜。お兄ちゃん大好き」
そんな顔を見ていると、いろいろと考えてた事がどうでも良くなってきた。
先の事なんて、直面した時に考えればいい。
人生なんてせいぜい百年ぐらいなんだから、今を楽しまないと。
「これからはお兄ちゃんじゃなくて、純平さんって呼んだ方が良いのかな?」
正直すごく悩む。
お兄ちゃんと呼ばれたいが、純平さんも捨て難いな。
「とりあえず今のところはお兄ちゃんが良いかな」
悩んだが、やっぱりお兄ちゃんが勝ってしまった。
「わかった。大好きだよお兄ちゃん」
「俺も大好きだ桃華」
二人でただ見つめ合うだけ、それだけでとても幸せな気持ちになった。
何も変わらない日々、そんな日々の中で変わった事がある。
「お兄ちゃん、今日の夜ご飯は何が良い?」
学校も終わり、二人で手を繋ぎながら夜ご飯の買出しに向かう。
知らない人が見れば普通のカップルだろうが、知っている人が見れば何と思うだろう。
兄妹の許されない愛。
あってはならない事。
頭がおかしくなった。
恐らくそのような考えをする人が大半ではないだろうか?
もし、反対されたらどうしようか。
「お兄ちゃん?」
でも許されるわけがないよな。
それでも、俺は桃華が好きだし、諦めろと言われて諦めれるほどでも無いしな。
「お兄ちゃんってば、聞いてる?」
「えっ?」
「もう、ずっと呼んでたのにどうしたの?」
桃華がずっと呼んでることに気が付かなかった。
「ごめん、何でもないよ」
「ほんとに?お兄ちゃんの事だから変な事でも考えてたんでしょ」
「そ、そ、そ、そんな事ないぞ〜」
付き合って早々に桃華がこの事を気にしたら、必ず別れると言い出すからな。
とりあえず悟られないようにしないと。
「お兄ちゃんのエッチ!」
「なんでそうなるんだよ。まだ考えてないぞ」
「まだ?」
「あっ、いや何でもない」
「やっぱり考えようとしてたんだ」
桃華が恥ずかしそうに頬を染めて、体を隠そうとする。
逆にその反応に萌えるのだが。
「そんな事よりだ」
無駄に元気に話題を変える。
「お兄ちゃん逃げた」
「そんな事ない、はず。それで夜ご飯どうするんだ?」
「それを聞いてたのに、お兄ちゃんがエッチな事考えてたり聞いてなかったんでしょ」
失礼な、エッチな事なんてこれっぽっちしか考えてなかったのに。
「何だかお兄ちゃんが考えてることがある程度理解できちゃった」
超能力か!
「夜ご飯どうするのお兄ちゃん?」
「桃華におまかせするよ」
「それが一番困るんだけどね。じゃあトンカツでもしようか」
「それは楽しみだな」
二人手を繋ぐ。その小さな手からは桃華の温もりが伝わってくる。
その温もりは愛に満ちて、とても安心するものだった。
今から終わりのことを考えても仕方ないよな。
絶対に桃華を幸せにしてやる。
その温もりは純平にそう決意させてくれるには十分な温もりであった。
「お兄ちゃん」
満面の笑みでこちらを見つめてくる。
「お兄ちゃん大好きだよ」
その言葉は一切の偽りなく、俺の事を信じきった眼で伝わってきた。
俺もそれに対して答える。
「俺も桃華の事が大好きだ」
お互いに偽りなく心の底から思っている事を伝えた。
「今日はお兄ちゃん荷物持ちね」
柔らかな笑顔でそう言ってきた。
「そんなところだと思ってたさ」
「私の隣はお兄ちゃんしかダメなんだから」
「そっか、じゃあいつまでも隣に居れるようにしないとな」
私の隣はお兄ちゃんだけか、嬉しすぎて走り出しそう。
「お兄ちゃん早くしないとタイムセール終わっちゃうよ」
桃華に手を引かれ、二人で買い物に急ぐ。
「絶対に幸せにするから」
「お兄ちゃん何か言った?」
「何でもないよ」
「変なお兄ちゃん」
自分にしか聞こえなかった決意を胸に、隣の女性の笑顔を守らなければと思った。
皆様大変お待たせいたしました。まっさんです。
やっとモブ俺の更新ができました。
ほんとに時間がかかってしまって、申し訳なさでいっぱいです。
前回、葵ルートが終了して次からは桃華ルートと決めていたのですが、いざ書き始めるとどうしよう?の連続でした。
まずは、告白の後でどうしよう即悩みましたね。
兄妹の愛なんて書いたことないし、どうやったら伝わるだろうとか、納得できるだろうと考えて停滞。
次にどうやって話を広げていこうか、ここでもまた停滞。
そして夏風邪(三回目)で停滞。
一夏に三回も夏風邪とか、ある意味才能ですよ。
そして困った時の山登り。これで少し気が楽になりそこそこスムーズに進めることが出来ました。
全国の妹を愛している紳士の皆様、可愛い妹にご期待下さい。
そして、いつも読んで下さってる皆様、初めて読んで下さった皆様、この回だけでも読んで下さった皆様、ほんとにありがとうございます。
これからも、良い作品になるように全力を尽くしますのでよろしくお願いします。
それでは、今回もお楽しみください。