クソ野郎のひとりごと その1
俺の名前は鳩ヶ谷棗。最低最悪のクソ野郎だ。俺の初恋は幼馴染である兎茶丸凪子。そしてそれは今でも続いている。絶賛キャンペーン中である。しかし、恐ろしいことに俺は彼女に間違いなく彼女の周りの人間の中で一番嫌われているのだ。ああ泣きたい。
だが、本当に泣きたいのは彼女の方であると俺は知っている。
というか、周りの人間はみんな知ってる。
それはクソガキという言葉もおこがましいほどクソ野郎だった昔の俺(今もクソ野郎だが)の照れ隠しが原因だ。――俺は兎茶丸凪子が好きで好きで仕方がなかった(無論今もだが)。
そして、彼女に自分を見てもらいたくて様々なことをしでかした。――例えば、彼女を無意味に追い掛け回す、彼女のおやつを奪って目の前で食べる、髪を引っ張る、スカートを下ろす(しかもこの時パンツも一緒に落ろしてしまった)、自分のことを見てないからといって叩く、怒鳴る、水をかける、泥のついた手で触る――などなど。しかもこれは幼稚園のころの話ではない。小学校を卒業するまで、俺は延々と嫌がらせにしか見えない行いを彼女に続けた。まじぶん殴りたい、昔の俺。そしてとうとう我慢しきれなくなった彼女は、ごく親しい一部の友人だけに中学受験をすることを伝え、そのまま小学校を卒業した。当然、中学に入っても彼女に会えると思っていた馬鹿な俺は、愕然とした。そう、心のどこかで期待していたのだ。彼女は、俺を嫌っていない、と。
「ナギは鳩ヶ谷くんのこと、本当に嫌ってたんだよ。」
「鳩ヶ谷くんのせいで、ほかの男子からも嫌がらせされるって、泣いてたよ」
「違うんだ、俺はただ、ナギが・・・あいつが好きで」
「好きな子をあんな目に合わせておいて、何が違うのよ」
「ごめん」
「なんで、ナギにそうやって謝れなかったの?」
「・・・」
「あの子すごく辛かったのに、最低だよ、鳩ヶ谷くん」
「ごめん・・・ごめん、ナギ・・・」
あの時の俺は、後悔していた。昼も夜も、頭の中で謝るだけ。
そして、同時にどうかしていた。何をトチ狂ったか、女装をするようになったのだ。