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青い夜に沈みましょう

作者: 雨田紫蓮
掲載日:2026/10/24

雪の降りしきる旅館の一室。琥珀色の照明が、複雑な想いを抱えた女の、いや二人の影を布団に落とす。

超短編。束の間の、現実逃避にいかがですか。

最後まで読んでいただけると、嬉しいです。

  垂れ下がる髪を疎ましく思いながら、目を細めました。

  両脚を爬い上がる男の体温が、私には熱くてたまりませんでした。

 

  わけもなく痛いのです。その疼きこそ幸せなのだと錯覚してしまうくらいに。

  彼は何も知りません。ただ優しい眼差しで、私を見つめてきます。

 

  私の顔は、困惑に満ちているように見えたに違いありません。

  生涯浴びたことのない琥珀色の照明が、私の身体を切り裂くのです。

 

  私は言いました。「寒くないか」と。

  この際、私の半生などどうでも良かったのでした。

  この無垢な男に触れていたかった、ただ愛していたかった、それだけのことです。

 

  木製の桟はカタカタと音を立てていきました。

  白い息を吐きながら、男は言うのです。

  

  「寒くても、貴女がいい」と。


  一体、彼はどこまで知っているのでしょう。

  もしかしたら全て見透かされているのかもしれない、とそんな戯言が脳裏を過りました。


  彼の宝石のように輝く瞳(め)を潰してやりたいとさえ思いました。

  決して私の心根の非道いわけではありません。

 

  ただ忍びなかったのです。

  これ以上私の姿を見ないでほしい、私の指から逃げてほしい。

  そのよく焼けた手で私の首を絞めてほしいと。

 

  金輪際、私のことなど忘れてほしかった。


  しかし、私はどこまでも妖だったのです。

  一つ息を吐くと言いました。 


 「青い夜に沈みましょう」




登場してくる女は、果たして雪女なのか、そうでないのか。

娼婦と学生の青年の愛と捉えてもよし。年の差でも、身分差でも、見ず知らずの他人でも。

あなたの好きな世界を重ねてください。

この女は、もうあなたの世界の住人です。

もし、お気に召した方がいれば、感想を聞かせていただけると、とても励みになり嬉しいです。

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