青い夜に沈みましょう
雪の降りしきる旅館の一室。琥珀色の照明が、複雑な想いを抱えた女の、いや二人の影を布団に落とす。
超短編。束の間の、現実逃避にいかがですか。
最後まで読んでいただけると、嬉しいです。
垂れ下がる髪を疎ましく思いながら、目を細めました。
両脚を爬い上がる男の体温が、私には熱くてたまりませんでした。
わけもなく痛いのです。その疼きこそ幸せなのだと錯覚してしまうくらいに。
彼は何も知りません。ただ優しい眼差しで、私を見つめてきます。
私の顔は、困惑に満ちているように見えたに違いありません。
生涯浴びたことのない琥珀色の照明が、私の身体を切り裂くのです。
私は言いました。「寒くないか」と。
この際、私の半生などどうでも良かったのでした。
この無垢な男に触れていたかった、ただ愛していたかった、それだけのことです。
木製の桟はカタカタと音を立てていきました。
白い息を吐きながら、男は言うのです。
「寒くても、貴女がいい」と。
一体、彼はどこまで知っているのでしょう。
もしかしたら全て見透かされているのかもしれない、とそんな戯言が脳裏を過りました。
彼の宝石のように輝く瞳を潰してやりたいとさえ思いました。
決して私の心根の非道いわけではありません。
ただ忍びなかったのです。
これ以上私の姿を見ないでほしい、私の指から逃げてほしい。
そのよく焼けた手で私の首を絞めてほしいと。
金輪際、私のことなど忘れてほしかった。
しかし、私はどこまでも妖だったのです。
一つ息を吐くと言いました。
「青い夜に沈みましょう」
登場してくる女は、果たして雪女なのか、そうでないのか。
娼婦と学生の青年の愛と捉えてもよし。年の差でも、身分差でも、見ず知らずの他人でも。
あなたの好きな世界を重ねてください。
この女は、もうあなたの世界の住人です。
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