表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹と駆け落ちしたあなたが他国で事業に失敗したからといって、私が援助する訳ありませんよね?  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/19

第8話 嵐の夜に(モブside)

 嵐の夜に、二人は船内にいた。

 激しく揺れる船の中では、各々がそれぞれの判断を下している。

 必死で救命ボートの元に向かおうとする者、もう助からないと諦めて最期の時間を過ごそうとする者、その中で二人も決断をしなければならない状況だった。


「ヘレーナ、僕は君のことを愛しているよ。こんな状況ではあるが……いや、こんな状況だからこそ、僕は君にそれを伝えたい」

「アドラス様……私もです」


 一人の男は、目の前にいる女に愛を囁き抱きしめた。

 それを女は、少し驚きながらも受け止めている。こんな状況ではあるが、彼女は男からの愛に喜んでいるのだ。


「しかし、こんな所で諦めてはいけません。一緒に助かる道を探しましょう。今からでもきっと、間に合うはずです。救命ボートがある場所まで行きましょう」

「……ああ、そうだね。そうしたい所だ」

「アドラス様? ……え? 何をっ!」


 次の瞬間、女は自らの体の異変に気付いた。

 男が、自分を押さえつけている。そう思った次の瞬間には、女は拘束されていた。

 男は、そのまま女を部屋の中にある柱にくくりつけていく。その手際は良く、とても素早い。


「アドラス様? 何をしているのですか? なんでこんなことを……」

「……君をここに置いて行くことを、許してもらいたい」

「え?」

「僕は君を愛しているんだ。でも、まだ死にたくない。生きていたんだ。だから、君をここに置いて行く。救命ボートには、きっと女子供が優先されるだろうから」

「な、何をっ……」


 抗議しようとした女に、男はすぐに背を向けた。

 彼はそのまま、部屋から出て行く。彼は決して女の方を振り返ることはなかった。


「……は、外して。誰か! 誰か!」


 置いて行かれた女は、必死に叫びもがいた。

 しかし、その叫びは船内に響く大きな音や声にかき消されて、誰の耳にも届かない。

 そしてきつく縛られた縄は、決して解けることはなかった。それに女は、ゆっくりと絶望していく。


「い、嫌っ……!」


 流れてくる水の音に、女は恐怖に怯えていた。

 最早叫び声をあげる気力もなく、彼女は息を詰まらせる。

 助からないということは、明白であった。それを理解した女の頭の中には、今までのことが過ってきた。


 一体、自分はいつ間違ったのだろうか。

 家族と上手くいかなかったこと、土壇場になって自分を見捨てるような男を選んでしまったこと、女は恐怖に震えながらそれを考えていた。

 ただどれだけ後悔したとしても、もう遅かった。女は部屋に流れ込んでくる水に、唇を噛んでまた叫びをあげ始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ