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妹と駆け落ちしたあなたが他国で事業に失敗したからといって、私が援助する訳ありませんよね?  作者: 木山楽斗


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20/24

第20話 今の彼は

 私はアドールとともに、三年前の船の事故に対する追悼会を開いていた。

 今回判明したことによって、この事故での犠牲者は二人となった。それは公的には、アドラス様とヘレーナということになっている。

 ただ、前者は違う人物だ。その人物が一体誰なのか、今回少しでも手がかりが掴めたら良いのだが。


「……今回来て下さった方々の名前をリストから消しました」

「あら、大分減ったみたいね」

「事件が解決したということを理由に呼びかけたのは、やはり功を奏したようですね。結構来て下さったようです」


 今回、ヴェレスタ侯爵家は事故の当事者達に来てもらいたいと呼びかけた。

 それはあの事故について後世に伝えるために、話をしてもらいたいなどという理由をつけた上での呼びかけだ。

 それに応えてくれた人は、結構多い。ここに来られなかったが手紙を出してくれた人もおり、私達はそれらをリストから消していった。


「残りは……三人かしら?」

「ええ、これなら充分に調べられそうです。時間も労力も、格段に減らすことができました」

「エメラナ姫のおかげね……本当に、良い婚約者を持ったものだわ」

「僕もエメラナ姫には感謝しています」


 ここまで絞れたら、後はもう普通に調査していけば良いだけだ。三人くらいなら、ヴェレスタ侯爵家の権力を使えば見つけ出せるはずだ。

 といっても、ある程度の当たりをつけておきたいというのが、正直な所である。時間も労力も、かからなければかからない方がいい。一人の人間を探し出すのでも、結構大変なのだから。

 ただ、当たりをつけるためには手がかりが必要である。そのためにも、会場に来ている事故の当事者から、現在話を聞いてもらっている所だ。


「他にも手がかりが得られるのかしら……例えば、知り合いがいたりしたら、このリストから外すことはできるわよね?」

「それはそうですね。そう考えると、案外一人くらいに絞れるのかもしれません」

「フェレティナ様、アドール」

「リヴェルト様」


 そこで私達の元に、リヴェルト様がやって来た。

 彼には、当事者達から聞いた話を取りまとめてもらっていた。ここに来たということは、それが終わったということなのだろう。


「何かわかったのですか?」

「ええ、アドールから渡されたリストに載っている内二名は、乗船する前からの知り合いが見つかりました」

「ということは……」

「ええ、現在のアドラスはボガートという名前で活動しているはずです」


 リヴェルト様の言葉に、私とアドールは顔を見合わせた。

 これで後は、そのボガートという人物について調べるだけだ。これで今のアドラス様のことがわかるだろう。


「ボガードは、アルトリア王国にて商人としてある程度の成功している……なるほど、確かにこの商会の名前は、私も聞いたことがあるわね。新進気鋭の商会だとか」

「ええ、まさか父上がそのトップなんて、思ってもいませんでしたが……」


 ボガートという人物については、すぐに調べがついた。割と有名人であったからだ。

 どうやらアドラス様は、海を渡った外国にて商人として成功していたらしい。彼には、商才があったということだろうか。


「ヴァレーン商会……少し待ってください」

「リヴェルト様? どうかしたんですか?」

「いえ、最近その名前を聞いた気がするんです。確か、こちらの新聞に」


 ボガートという人物に関する報告書を読んでいたリヴェルト様は、新聞を机の上に広げた。

 私とアドールは、その新聞に目を通していく。するとすぐに、ヴァレーン商会の名前を見つけた。そこには、事業に失敗したと書いてある。


「これは昨日の朝刊ですか?」

「ええ、そうですね……調査が終わったのは、その前になる訳ですから、これについては報告書に記されていなかったのでしょうね」

「なるほど、しかしこれはなんというか、とても手痛い失敗なのではありませんか? 私はあまりその辺りのことに詳しいという訳ではありませんが……」


 新聞の記事には、ヴァレーン商会の失敗が大々的に記されている。

 そういったものは誇張されるものだということは、私も理解しているつもりだ。

 ただ、ここに書いてある失敗はそれでもまずいものであるような気がする。商会が傾いてもおかしくない程の損害が出ているように思えてしまう。


「……ええ、これは恐らく立ち直れない程の大打撃でしょうね。もちろん、この新聞に書いてあることが全て信じられるという訳ではありませんから、わかりませんが」

「つまり、アドラス様は今追い詰められているということ……」

「……それはいい気味ですね」


 私の言葉に、アドールは短く言葉を発した。

 その声色は、とても鋭い。そこには確かな怒りがあった。


「二人の人間を実質的に殺めておいて、父上が成功していたなんてあんまりですからね。正直、少しすっとしています」

「アドール……」

「もちろん、良いことではないことはわかっています。しかしそれでも……」


 アドールが言っていることは、私も理解できない訳ではなかった。

 アドラス様がやったことは、許されないことだからだ。


 ヴェレスタ侯爵の利益のために、その罪は葬り去った。そんな私達がそのようなことを思うのは馬鹿げているかもしれない。

 ただそれでも、こう思ってしまう。アドラス様に天罰が下ったと。

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