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帝国ブタ野郎はバイキング先輩の夢を見ない

作者: もろこし

設定とかはタイトルから察して下さいw

■1933年(昭和8年)3月

 スイス ジュネーブ

 パレ・デ・ナシオン 国際連盟本部


 これまで日本は、満州国の承認をめぐり列強各国にその正当性を辛抱強く訴えてきた。だが遅れてきた帝国主義の新参者に列強各国は冷たく、日本の努力は全く報われなかった。


「日本政府は日支紛争に関し国際連盟と協力せんとする努力が限界に達したことを感ぜざるを得ない」


 列強の横暴とダブルスタンダードを非難する大演説を終えた松岡洋右全権大使は、日本代表団とともに総会会場を後にした。


「サヨナラ!」


 こうして日本は国際連盟を脱退した。


 その翌朝から、なぜか日本は世界から認識されなくなった。




 だが日本列島と日本人、そして日本に所属する物は消えてはいない。地球上に確かに存在している。しかしそれが見えて認識できるのは日本人だけだった。


 他国には日本列島の場所に太平洋が広がっているようにしか見えなかった。日本人や日本の所有物が目の前にあっても認識されなかった。


 このため日本の船舶や航空機の衝突事故や、喧嘩あるいは殺人までもが頻発した。だがたとえ死人が出ても相手にとっては謎の事故としか認識されなかった。




 この混乱した状況を解決すべく、日本政府は調査のために海外に人を送りだした。


 だがやはり彼らも現地で完全に無視されてしまった。そもそも入国すること自体が一苦労だった。


 なんとか密入国に等しい方法で入国したものの、いくら相手に話しかけても無視されてしまう。相手の身体に触ると相手は驚くが、やはり認識してもらえない。


 腹が立って相手を殴ってみたが、それでも相手は自分に気付かず突然の痛みに戸惑うばかり。相手の物をとり上げると相手は物が突然消えたと騒ぎ、返すと今度は突然現れたとまた驚く。


 一事が万事この調子のため調査はなかなか進まなかった。それでも1ヵ月におよぶ調査の結果、日本政府はなんとかこの異常な現象を把握することが出来た。




■1933年(昭和8年)4月

 現象発生から1ヵ月後


 調査の結果分かった事は、日本は嫌がらせ等で無視されているのではなく、完全に他者から認識されていないという事実だった。


 そもそも世界各国の地図に日本列島が描かれていなかった。かわりに日本列島の形をした『侵入禁止水域』が記載されている。認識できなくても陸地がそこに存在しているため、入った船舶は必ず難破してしまうからだった。


 歴史からも日本の存在は消え去っていた。


 領土もなくなっている。朝鮮、満州、樺太、南洋諸島などの海外領土はすべて他国の領土となってしまっていた。


 アジア方面では台湾は中華民国、満州と朝鮮はソ連領になっている。このため日露戦争は発生しておらず、日本に代わりソ連が大規模な太平洋艦隊を保有し海を隔てて米国と対峙している情勢だった。ロシア帝国は日露戦争がなくても革命で滅んでいた。


 欧州は概ね日本人の知る歴史通りだったが、日本の存在を知らないのでジャポニズム文化は発生していない。第一次世界大戦におけるドイツ領南洋諸島の攻略はイギリスと中華民国で行われていた。


 ちなみに国外に居た日本人は気が付いた時にはすべて国内に戻されていた。当然ながら在外公館もすべて消え去っている。ただし海外移民については日本に戻らず存在が消滅してしまっていた。


 通信に関しても同様だった。


 日本は他国の無線を受信できるが、日本がいくら電波を発しても他国には一切認識されなかった。日本に繋がる海底ケーブルも全て消滅してしまっている。


 つまり日本は他者とコミュニケーションを取る術を完全に失っていた。




■1933年(昭和8年)5月

 現象発生から2ヵ月後


 当然ながら日本の輸出入は大混乱となった。日本国内では経済やエネルギー、食料面で大きな問題が発生した。そして大混乱の果てに日本人全員がようやく現状を理解した。


 そして気付いた。


「もしかして、これって、ヤリ放題なんじゃね?」


 貿易や交渉ができなくても、相手がこっちを認識しないなら問答無用で強奪すればいいじゃないか。


「海賊王に我が国はなる!」


 こうして日本は生きるために国全体が海賊となった。現代に蘇ったバイキング国家の誕生である。そして日本は近海の輸送船を片っ端から襲い船と積み荷を奪いはじめた。


 さすがに海賊に身をやつしても船員の命まで奪うのは忍びない。どうせ認識されていないので船を襲った日本人は船員らを救命ボートに乗せて陸地の近くに放してやった。奪った輸送船はそのまま再利用するか屑鉄として利用された。




「我が国の商船を襲ったのはお前らだろう!」


「盗人猛々しい!お前らのほうが我々の商船を襲っているくせに!」


 太平洋沿岸や東南アジアで謎の商船消失事件が相次いだ結果、ソ連・米国、そして英仏蘭中は互いに相手の仕業に違いないと主張しはじめた。


 各国は商船に海軍艦艇の護衛をつけるようになった。それでも日本はおかいまいなしに商船を襲い続ける。


 軍艦が睨みあうピリピリとした一触即発の状況下で商船が消失すれば冷静さが失われるのも当然である。台湾沖で発生した偶発的な発砲事件を機に、列強各国は互いに戦争が始めてしまった。


 だが日本はこれを単なる好機としか見なかった。大量の軍艦=鉄屑&最新技術が向こうからやってきてくれたのである。


「鴨がネギしょってやってきたぜ!」


 日本は認識されない事を良い事に、白昼堂々と商船だけでなく海軍艦艇にまで乗り込み強奪していった。


 このころには日本海軍もすでに完全に海賊仕事が板についていた。海賊行為がやり易いという理由で日本海軍の主力艦は戦艦でなく陸軍の神州丸に類似した艦艇が主流になっていた。


 こうして米ソ、ついでに英仏蘭中の海軍艦艇は明確な戦闘もないのに次々と行方不明となっていった。そしてついにまともな軍事行動を取れないレベルになり果てる。


 こうなっては戦争など続けられない。自然と停戦が成立した頃にはどの国も太平洋と東南アジアにおける艦艇のほとんどを喪失していた。




■1934年(昭和9年)

 現象発生から1年後


 いつのまにか『侵入禁止水域』は日本列島近海から大陸沿岸、東南アジアにまで広がっていた。


 だがこれは日本にとって死活問題だった。獲物の船舶が日本に近寄らなくなったからである。このままでは日本が必要とする資源を得ることができない。


「海に獲物がいないなら、陸上から奪えばよいじゃないか」


 こうして日本は生きるために陸上の資源や食料を直接襲い始めた。


 日本は最初のうちは資源倉庫や資源を積んだ列車やトラックを襲っていた。だがそれでは効率が悪いので鉱山や製油所や農地を直接制圧し、そこの住民や従業員を締め出して敷地を囲いで覆ってしまった。


 するとなんとその土地は日本のものになった。つまりその場所は日本列島と同じ様に他国から認識されなくなったのである。


 これは他国から見ると、その土地がある日突然、荒野や山野に変ったようにしか見えなかった。しかも無理に侵入しようとしても見えない壁に阻まれ入れない。当然ながら、そこに出入りする日本人や日本の列車やトラックも認識されない。


 世界各国は突然、農地や鉱山が荒れ地に変わり出入りが出来なくなったことに戸惑った。そういった土地は『不可侵領域』と呼ばれる様になった。


 日本は生きるために、どんどん地上の土地を奪っていった。地球上に日本人の行動を遮れるものは誰も居ない。自制も理性も失った日本人は欲望の赴くまま、際限なく他者の領域を奪っていった。


 それに伴い『不可侵領域』『侵入禁止水域』がどんどん広がっていく。それはつまり日本以外の国が資源や食料を得るべき土地と海が減っていくことになる。


『不可侵領域』や『侵入禁止水域』が広がるにつれて、各国は資源と食料を奪い合って戦争をはじめた。それにより更に日本人以外の人口が減っていった。




■現象発生から1000年後


 そして1000年後には、地球の表面は全て『不可侵領域』と『侵入禁止水域』に覆われていた。日本以外の国家は全て滅び、地球に住まう人間は日本人だけになってしまった。


 そんな地球に、たまたま外宇宙から1隻の宇宙船が訪れた。


「大気成分、温度、重力は我々の居住に理想的な環境です。嬉しいことに知的生命の活動は認められません。移住・開発に適した惑星です」


 彼ら異星人にとって、地球は自然に覆われた無人の未開惑星にしか見えていない。だが実は地表には都市が広がり、多彩な通信が交わされ、空には航空機が飛び、宇宙には人工衛星も飛び交っている。


 それに気付かぬまま、異星人は数百隻の移民船団を地球に送り込んできた。


「ヒャッハー!久々の獲物だぜー!」


 異星人=新たな獲物の出現に日本人たちは歓喜した。


 日本人は、まずやってきた移民船団から資源と技術を奪い取った。そしてその技術をもとに恒星間宇宙船を作り上げ、異星人の星に襲い掛かった。


 長い海賊人生で日本人は他勢力と友好的に付き合うという感覚を忘れ去ってしまっていた。ましてや異星人と友好的に接触するなど考えの埒外である。


 そもそも認識されないのでコミュニケーションの取りようもないのだが。


 こうして日本人は、地球に訪れた異星人の星間国家を皮切りに、次々と他の星間国家を侵略していった。




■ 41千年紀 遠い未来の銀河系


 上位存在が日本というイレギュラーな存在にようやく気付き、元のように他者から認識できるように情報を操作した頃には、日本帝国はすでに多くの星間国家を滅ぼし銀河の過半を制してしまっていた。


 その存在がバレてしまった日本帝国は、技術はあっても戦闘経験が失われていたため、当初は他勢力は攻め込まれ、長い暗黒時代と呼ばれる苦難の歴史を歩むことになる。


 その後、なんとか衰退に歯止めをかけた日本帝国インペリアルは、自らの領域を守るため銀河各地に装甲服に身を包んだ宇宙海兵隊を送り込み、異星人、モンスター、混沌勢力、反逆者など、様々な勢力と激しい闘争を繰り広げる時代に突入する。


 その全宇宙を巻き込んだ戦争は、41千年紀の今も続いている。

思い付きで書いちゃいました。すいません……

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― 新着の感想 ―
なんて言うか、「透明人間になってやり放題!」みたいな話ですよね、これ(笑)。 ただそれを上回っているという。 覗きなんて、相手に認識されないから、迷惑も掛からない!。 (お下劣ですいません) 日本人…
その翌朝から、なぜか日本は世界から認識されなくなった。←この部分で大爆笑しちゃいましたw 仕事のストレスが解消しましたwありがとうございます。 まあ確かに、認識されなかったら奪うしかないですよねw 面…
面白かったです! このパラレルワールドだと現在はまだ地球全部を掌握はしていないようですが、見えざる海賊として一方的に搾取して塗り替えていくの楽しそうだなあ。ちょっと一緒に暴れたい。故意に殺人等しなくて…
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