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言の葉の家へようこそ ~異世界の言葉がわかる転生令嬢、各国を巡る~  作者: 菖蒲月
幕間

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【幕間2】幸せを祈る祝福を、貴方に 【Side マリーナの前世の兄】

『2.どーしてこうなった!????』のマリーナに生まれ変わる前の主人公の人生。

残された家族のその後のお話です。


前半、少し暗めのお話になりますので、苦手な方は飛ばしてください。

本編には影響しません。



 ___家族のみんな、本当にごめんね。私の分も幸せに生きてね。



 私を赤ちゃんに生まれ変わらせてくれた神様のような存在がもしいるのなら…


 

 どうかお願いです。


 

 元の家族が長く悲しまずに前向きに生きていけるように、ほんの少しだけ…


 

 助けていただけると嬉しいです。






 __________『承知した』




◇◇◇



 妹が事故で死亡したとの連絡があったのは、梅雨の合間のとても良く晴れた日だった。



 16時半を回った所で、職場の空気も17時の終業時間に向けて、少し緩んでいた頃。


 俺自身も、手を付けていた報告書が何とか終業までに仕上がりそうで、『今日は久しぶりにいい天気だし、早く帰ってビールが飲みたいな~』何て暢気なことを考えていた。


 だが、そんな穏やかな状況を切り裂くように、デスクの上の電話が鳴った。


 俺は反射的に時計を見て、『取引先からの訂正や変更の連絡だと厄介だな』という考えがよぎったが、諦めて電話を取った。



「はい、営業部、東雲(しののめ)です。」


「受付の藤堂です。東雲 (しののめ)春臣(はるおみ)様と名乗る方から代表電話にご連絡がありました。家族に緊急の事態が起こったため、東雲さんから連絡を貰いたいとの言伝を承りました。東雲さんの携帯電話にもご連絡している様ですので、確認の上でご対応をお願い致します。」


 親父から代表電話に連絡?

 家族に緊急の事態??



「…承知致しました。すぐに家族に連絡してみます。有り難うございます。」


 そう言って電話を切ったものの、俺は混乱していた。


 親父から電話が来たって事は、母さんに何かあったのか?

 とりあえず、携帯を確認してすぐに連絡してみよう。


 スーツの内ポケットから携帯を取り出してみると、確かに親父から何度か着信がある。

 通知をオフにしていたので、気付かなかったようだ。


 それを確認した後、離席を報告するために直属の上司のデスクに向かった。



「課長、申し訳ありません。家族に緊急の事態が起こったとの連絡が代表電話に入りました。携帯への連絡に気付かなかったせいだと思いますが、余程の案件のようですので、確認のために離席させて下さい。」


「終業を待たずに代表電話に連絡が入るくらいだ。余程、急ぎの内容だろう。すぐに確認してきなさい。」


「はい、そうさせて頂きます。失礼致します。」




 急いで休憩室まで向かった。

 もう終業間近の中途半端な時間のため、休憩室には誰も居なかった。


 休憩室の椅子に座り、親父に電話を掛ける。



 プルルルル…


柊也(とうや)、やっと繋がったか…。」


 電話に出た親父の声は、酷く疲れているように思えた。

 やはり母さんに何かあったんだろうか。


「親父、会社に電話を掛けてくるなんてどうしたんだ。」







「……彩夏が死んだ……。」


「…は?彩夏が何だって?」


「車に撥ねられたんだそうだ。いま、母さんと病院に来ているが、すでに死亡の診断が出た。」


「彩夏が死んだ…???なんでそんなことに!!?」


 最近は会社で大変な思いをしていることは、彩夏から愚痴を聞かされていたから知っていた。

 でも、そろそろ解決出来そうだと、明るい声で話して居たのはつい先日のことだったのだ。



「公園からボールを追いかけて飛び出した小学生を避けた車が、近くを歩いていた彩夏にぶつかったらしい。運転手はすぐに救急車を呼んで救護してくれたが、倒れたときに頭を強打していて助からなかった。」


「何てことだ……。」


「お前も一度病院に来なさい。彩夏とお別れをしなければならない…。」



 病院の場所を聞いて、親父との電話を切った俺は、すぐには動けなかった。


 親父に言われたことを頭が、身体が、理解することを拒否しているのだろう。


 それでも、このままではいられない。

 とにかく病院に向かわなくては!と、何とか崩れ落ちそうになる膝に力を入れて立ち上がる。



 課長のもとに向かい、簡単に事情を説明すると


「すぐに病院に行きなさい!明日からの業務についても調整するから、状況が分かったら連絡してくれ。君自身も動揺しているとは思うが、気をつけて向かいなさい。」


 と気遣って貰えたので、簡単にデスクを片付けて、急いで病院に向かった。



◇◇◇



「親父!!!」


「ああ…柊也。来てくれたか。」


「彩夏は!?」


「安置室だ。自宅に連れていく準備が整うまで寝かせて貰っている。母さんがずっとついているから、お前も顔を見てきなさい。私は彩夏を連れて帰る手続きがあるから、母さんのことを頼む。」


「分かった。」


 親父が『寝かせて貰っている』『連れて帰る』という、まるで入院している娘に言うような言い回しをすることに、何とも言えない気持ちになった…。


 もちろん、親父だってもう彩夏がいないことは分かっているのだろう。


 でも、さっきまで普通に生活をしていて、また休みになれば「ただいま~」と実家に帰ってくることが当たり前だと思っていた人間が、急に「もう居ない」と言われたって、信じられない、信じたくないに決まっている。


 そういう気持ちが言葉選びにも出ているんだろうと思うと胸が詰まって、返事をするのが精一杯だった。


 手続きをしに行くと背を向けた親父の背中が、いつもより小さく見えてしばらく見つめていたが、ずっとそうしている訳にもいかないので、安置室に向かうことにした。



◇◇◇



 安置室の扉を静かに開けると、部屋の中央に簡易的なベッドが一台。


 部屋の隅には大きめのソファとテーブルがあり、遺族が待機することが想定されているようだ。


 母さんがソファに座っているのに気づいて近付いたが、眠っているようだ。


 目元が赤いので泣き疲れて眠ったのだろう。


 安置室は少し室温が低めになっているようだから、上着を脱いで母さんに掛けた。



 部屋の中央の簡易ベッドに視線を向ける。


 白い大きな布に覆われているので、様子は分からない。


 静かにベッドに近づいて、顔の部分に掛かっている布を少しだけ捲った。



「彩夏…。」


 そこには目を閉じて眠っているような表情の彩夏が居た。


 眠っているだけのようなその様子に、確かめるように頬に触れてみるが、返ってきたのは冷たく固い感触だけだった。



 「なんで…。もうすぐ問題が片付くから、落ち着いたら祝杯だって言ってたじゃないか。お前は要らないって言ってたけど、再就職先だっていくつか当たりをつけてたんだぞ。兄らしい事してやれるって思ってたのに…。」


 こうして彩夏を目の当たりにしても、まだ信じられないせいか不思議と涙は出ない。


 事故と聞いていたからもっと酷い状況も考えていた。


 でも、彩夏は本当に眠っているかのように綺麗な顔をしているし、体温が無いこと以外はただ寝ているようにしか見えないせいもあるかもしれない。



 会社で面倒が起きていることは聞いていて、愚痴を聞いたりアドバイスをしてやるくらいしか出来なかった。


 それがやっと解決出来そうだと聞いて、せめて再就職先くらいは兄として何とかしてやりたいと思っていた…。


 彩夏は外国語を学ぶことが大好きで、四ヵ国語は専門用語も含めてマスターしていたので、再就職先には困ることは無いとは思ったのだが、単純に妹のために何かしてやりたかったのだ。


 今日の昼には、無事に『有給消化しての退職ゲット☆しかも退職金という名の口止め料もゲット~♪』というメールが来ていて、ちゃっかりしているなと苦笑いしたのが遠い昔の事のように感じる。


 結局、何もしてやれないまま彩夏は旅立ってしまった。


 

 俺は、どうしたら良いのか分からなくなってしまい、親父が戻ってくるまで唯々、彩夏を見つめ続けたのだった。


 

◇◇◇



 葬儀から告別式まではあっという間の出来事だった。


 当初は、事故の内容があまり公にする類いのものではなかったので、家族と近親者のみの家族葬で静かに送り出そうと考えていた。


 しかし、彩夏の元職場や友人達から参列したいとの要望が多数あったため、それなりの規模の葬儀を行うことになった。



(俺の妹はみんなに随分と慕われていたようだな。葬儀は様々な人間性が見える場所だと聞いた事がある。普段は目に見えない繋がりが、ちゃんと繋がっていたんだと、実感出来る機会でもあるのかもしれないな。)


 彩夏の友人達がたくさん手伝いに来てくれて、彩夏との別れを惜しみつつも、学生時代のバカ話や、言語オタク全開の話などを楽しく聞かせてくれた。


 お陰で、気落ちしていた母さんも気が紛れたのか、控えめながらも笑顔を見せるようになったことに心底ホッとした。



(本当に有り難いことだ…。俺はどうしたら良いか分からなくて、彩夏に関する手続きや片付けに動き回ることで考えないようにしていたから。それはきっと親父も同じだろう。気落ちする母さんを分かっていても気遣ってやれなかった…これでは彩夏に叱られてしまうな。彩夏の最期の言葉を聞いたあの日から、少しずつ前に進めている気はするが…。)



 彩夏を病院から自宅に連れ帰った夜。


 事故の加害者である車の運転手と、原因となった飛び出しの男の子とその両親が訪ねてきた。



 彩夏を救急車に乗せた後、現場検証や取り調べを受けていたとのこと。


 全員が泣きながら土下座し、謝罪と説明が遅くなった事を何度も何度も詫びた。


 男の子までが両親と一緒に涙ながらに土下座する様子に、これまで静かに話を聞いていた母さんが動いた。



「ひとまず落ち着いて下さい。私たちも娘が亡くなった事を警察からの連絡で知って、詳しいことはあまり分かっていません。宜しければ、貴方たちが知っている娘の事を教えて下さい。」


 これまでの様子から、母さんが取り乱すのでは無いかと心配したのだが…。

 驚くほど静かにそう言って、男の子の背中をさすりながらソファに座るように促したのだった。


 その様子に一番驚いたのは、いつも控えめな母の様子を知る親父だったのかもしれない。



 そうして、警察から聞いた説明の補足をするように、当事者の目線で語られた事故の様子は、彩夏の最期の瞬間を我々に伝えてくれた。


 

 事故の状況はこうだ。


 丁度、小学生が学校から帰宅し、公園で遊び始める時間帯。

 歩行者が多かったので車は公園の側を法定速度で慎重に走っていた。


 そこへ、公園からボールを追いかけて小学生男児が飛び出し、それを避けようとした車が避けた方向をたまたま歩行していた彩夏に衝突した。


 すぐに救護を行い、救急車を呼んだが、運悪く近くにあった消火栓に頭部を激しく打ち付けており、出血量も多かったため動かす事も出来ずに、救急車が来るのを待ち続けるしかなかった。


 意識を保とうと声を掛け続けたが、次第に反応が弱くなり、本人も時間が無いことを悟ったのか、家族への言葉を残して意識を失った。


 その後は、到着した救急車で彩夏が病院へ運ばれて、運転手と男の子は現場検証のためにその場に残り今に至る。

 

 

 今回、運転手の男性は車載カメラの映像と、たまたま現場近くを通りがかった大学生が撮影していた動画のコピーを見せてくれた。


(どちらも警察が証拠品として押収していたものだが、遺族に見せたいとお願いしたら映像のコピーを取った後に原本の返却と、撮影者[大学生]の同意を得て動画のコピーを取らせてくれたのだそうだ)

 

 そこには、事故が起こる前後の映像と、最期の言葉を残す彩夏の姿が写っていた。


 

******


「ヒューヒュー・・・あなたも・・・ボールの子も・・・もう泣かないで。ゼィゼィ・・・私の家族に・・・幸せだった・・・ヒュー・・・ありがとうと・・・伝えて。・・・ゲホッッッ」


「必ず!必ず!あなたのご家族に伝えます!!」

「ごめんなさい!お姉ちゃん、ごめんなさい!」


******


 この動画を見ながら、親父と母さんは泣いていた。

 俺も気がついたら頬を涙が伝っていて、「ああ…やっと彩夏がもう居ないことを飲み込めたんだ」と、ちゃんと悲しむことが出来た自分を理解した。


 これまでは、彩夏が居ないという事実は理解していても、本当の意味では納得出来ていなかったんだと思う。


 彩夏が居ないという事実だけが、自分の中で宙ぶらりんに浮いていた感じだろうか。


 それが、ちゃんと彩夏の言葉で最期の言葉を聞くことが出来て、初めてストンと心に彩夏が居ない事実が落ちてきたんだ。



 これまで悲しいはずなのに泣けなかった自分に、どこか壊れてしまったのかもしれないと思っていたが…。

 

 そうか、おれは彩夏が居ない事実に納得出来ていなかったんだな。



『ああ…俺は彩夏が居なくて悲しいよ。


 彩夏、お前は俺の妹で良かったと思ってくれていたか?


 お前はちょっと変わった妹だったが、お前の兄で居られた事が最高に誇らしかったよ。


 親父と母さんのことは任せておけ。

 

 またそっちで会おうな、彩夏。』


 

 彩夏が死んだと聞かされてから、初めて彩夏にちゃんとお別れの言葉を贈ることが出来た。


 みんなそれぞれが彩夏に言葉を贈っていたのだろう。

 静かな時間が流れていた。


 そんな中、母さんが静かに口を開いた。


「あの子…病院の安置室で初めて顔を見たとき、何だか満足そうな顔をしていたのよ。」


「満足そうな顔?」


 事故で死んだ人間がする表情なのか?


「そう、どや顔って言うのかしら?ちょっと得意そうな顔よ。ふふっ」


 母さんが、その時の表情を思い出しているのかすこし笑いながら話す。

 親父や俺だけじゃなく、運転手の男性や男の子家族もその様子に驚いていた。


「私も動揺してたから、その時は何で?って思ったんだけど、悲しさに押しつぶされてさっきまでその事を忘れていたの。だけど、彩夏の最期の言葉を聞いて分かったわ。あの子ったらきっと、最期にちゃんと家族に言葉を残せて満足したのよ。何なら『最期に言葉を残せた自分やったわ!』くらい思ってたかもしれないと思うと少し可笑しくなっちゃって。ふふっ」


 母さんは、そう言うともう一度動画を再生した。


「ほら、この言い切った後の表情よ。この満足そうな顔。あの子ったら本当に…。」


 そう言って、満足そうな表情の彩夏を一時停止で見つめたまま、泣きながら笑った。



◇◇◇



 その後、死亡事故ではあったものの、運転手の男性の反省が深い事や、運転自体に違反行為(速度超過や一時不停止など)が無かったこと、事故後はすぐに彩夏の救護をしてくれたことを考慮して、寛大な処分となるよう被害者遺族として陳情した。


 男の子の家族に対しても、男の子本人が深く反省し、両親ともにすぐに謝罪に訪れている点を考慮して、運転手の過失を一部負担することで示談となった。


 結果、運転手の男性は禁固2年、執行猶予4年、慰謝料1600万円。

 男の子の両親は、低学年児監督義務違反で慰謝料400万円。



 動画を撮ってくれていた大学生には、警察に確認してお礼のために連絡を取った。


 ただ、動画については彩夏の最期の言葉として大事にしたいので、失礼かもしれないとは思ったが、弁護士を通じて『不用意な動画の拡散をしないこと』を文書で約束して貰い、最期の言葉を記録してくれた謝礼をお支払いすることにした。



 また、運転手の男性や男の子が、社会的に不適切な扱いを受けることがないように、それぞれの職場や学校に直接、被害者遺族からの要望を伝えた。


 きっと、彩夏なら日々を真面目に生きている人が、自分のせいで不幸になることを許さないだろうと思うから…。


 

 ここまで三ヶ月ほど。

 家族で忙しく動き回っていたが、色々な事が一段落したいま、静かな日常が戻ってきたが、ぽっかりと胸に穴が空いたような空虚感を感じていた。


 親父や母さんも同じように感じているのか、週末に様子を見に行くと疲れた様子を見せている。


 

 その日は、疲れた様子の両親を心配して実家に泊まりに来ていた、いつもの週末だった。


 夜、元々自分の部屋だった場所で寝ていた俺は夢を見ていた。


 一面真っ白な世界で、自分が地面に立っているのか、浮いているのかも分からないような状態。


 そんな状態にも関わらず俺は恐怖を感じていなかった。

 

 どのくらいその場にボーッと居続けたのだろう。

 数秒かもしれないし、数時間だったのかもしれない。


 何も無かった白い空間に声が響いた。




 ――『あの子は元気にしている。それを見せよう。』



 

 男性とも女性とも、老人とも若者とも、判断がつかない声がそう言うと


 白一面の世界が一変した。


 中世ヨーロッパの様な世界観の何処か。

 

 ある貴族の女の子を中心に、次々と映像が切り替わっていく。


 見たことも無い世界の、合ったこともない女の子。


 でも、その子が彩夏なのだと分かった。


 『異世界転生』というヤツなのだろうか。


 あまり詳しくは無いが、そんな話が流行っているというのは彩夏から聞いた事がある。



 しばらく女の子の様子を見ていると、何とも彩夏らしいと苦笑が溢れた。


 言語に関するチートを得て、嬉々として異世界の言語を学んでいく様子が、どこに居ても変わらないのだと嬉しくなった。


 それに、新しい家族とも仲良く出来ているようでホッとした。


 そうやってある程度、女の子を見守ったところで、また周囲が白一面の空間に戻った。



 ――『元の家族が長く悲しまずに前向きに生きていけるように、ほんの少しだけ助けて欲しいというのがあの子の願いだった。』


 

 ――『あの子は前世の記憶を持ちながら、新しい人生を楽しんでいる。あの子に負けずに残りの人生を楽しみなさい。』




 その言葉を最後に、白い世界は徐々に閉ざされて行った。



 夢から覚めた俺は、しばらくベッドの上でボンヤリと夢の中での事を考えて居た。


(不思議な夢を見たな…。でも、本当に彩夏が別の世界で、新しい人生を楽しんでいるのならいいな)


 そう思いながら、リビングに行くとすでに両親が起きていた。



「俺、変な夢を見たんだよ。彩夏が別な世界に生まれ変わって元気に過ごしてるって夢なんだけど…。」


「え?母さんもその夢見たわ!マリーナちゃんって可愛い子でしょ?」


 まさか母さんも同じ夢を見ていたとは思わず驚いていると、親父からも声が上がった。



「は!?母さんと柊也もか!実は俺も見たんだよ。異世界の言語を楽しそうに学んでいたな~。」


 それからは、お互いが同じ夢を見ていたことに驚きつつも、夢で見た彩夏の様子を相変わらずだと笑いながら話した。


 久しぶりに家族で彩夏の話を思いっきり出来たことで、胸にぽっかりと空いていた穴が少しだけ埋まった気がした。


 

『彩夏、元気そうで安心したよ。


 神様みたいな人がお前の様子を教えてくれたんだ。


 こっちはお前が居なくて、悲しいし寂しいけど


 お前の望みだからな。


 みんなで前を向いて生きていくよ。


 俺たちはいつまでもお前の家族だ。


 忘れないでくれよ。』


 

 どこかの世界の女の子として生きている妹が、いつも幸せでありますように。



――そんな優しい祈りが、ルクスの元に届いた。

――互いを思うその優しい気持ちが、互いに良いことを招くようにと、ほんの少しの祝福をのせて双方の世界に送り出し、滅多に感情を表さないルクスがほんの僅かに微笑んだのだった。

 

刑罰や証拠品の扱いについては、なるべく調べて記載していますが、事実とは異なる部分に関してはあくまでも創作の上の設定としてご理解頂けると幸いです。


最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)

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